駒子の備忘録

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『デカローグ』プログラムD、E

2024年07月12日 | 観劇記/タイトルた行
 新国立劇場小劇場、2024年7月5日19時(D)、11日19時(E)。

 プログラムA、Bの感想はこちら、Cはこちら
 7は、両親と同居している22歳のマイカ(吉田美月喜)が、6歳の妹のアニャ(この日は三井絢月)を連れてカナダに逃げたいと考えていて…という「ある告白に関する物語」。8は女性大学教授ソフィア(高田聖子)が著書の英訳者である女性大学教員エルジュビェタ(岡本玲)と出会って…という「ある過去に関する物語」。
 9は40歳の外科医ロマン(伊達暁)が性的不能になったと診断されて…という「ある孤独に関する物語」。10はパンクロックグループのリーダー・アルトゥル(竪山隼太)が、コンサート会場にやってきた兄イェジ(石母田志朗)から父の死を知らされて…という「ある希望に関する物語」。

 ラストは9→10の順に観てゴール、のつもりでしたが、犬(ロキス/ローザ。ジャーマンシェパードに見えました。プログラムによればアンダースタディのセシルはドーベルマンに見えます)の出演があって夜公演は時間制限があるとのことで(子役と同等なのでしょうか?)、10→9の上演順となっていました。10の方がラスト感があったらヤダなー、など考えつつ観ましたが、そんなこともなくて、まあよかったです。というか、わりと「で? だから??」となりがちな地味で渋くどちらかと言うと暗いエピソードも多い中で、プログラムEの2本はわりと派手だったと思います。思えばそもそも1は子供の死から始まるという重さだったわけですが、だんだん明るくなっていく…ということでもなかったとも思うので、この落差はなんなんだろう、とも感じました。演出のふたりの差も私にはそれほど明確には感じられなかったので…
 結局ほとんどの人が10作ちゃんと全部観たのかなあ? でないとワケわかりませんわね、でもじゃあ通して観たから何かわかったかと言われると…??
 殺すなかれ、盗むなかれ…といった十戒は、まあ知らないわけではないし、特に難しいことを言っているものでもないと思うけれど、やはり欧米人のようにはピンと来るものでもなく、まあその戒めそのものよりもそれを犯してしまう人間の悲喜劇を描いた連作だったのでしょうが、そして深読みすればサブキャラが重なっていたり似たモチーフが何度も出てきたりそもそもひとつの団地の話だったりするんだけれど、でもその連作性にそれほどの意味があったかも私にはよくわかりませんでした。全編に出てくる亀田佳明、というのも贅沢すぎたし、それでいてなんの意味があったんだと言われると…? ずーっとしゃべらないでいたのに8でだけ急にわーっと台詞があるんだけれど(「男」としての台詞ではなかったとも思うけれど)、その意味もやや不明でしたしね…
 昼夜一日がかりの公演にするのは厳しいでしょうが、せめて4、3、3に分けてやる、とかなら、まだつながりが感じられたかもしれません。でもどうかな、そういう問題でもないのかな…
 好みとしては圧倒的に10かな。単純におもしろかったです。8でも出てきた切手コレクター(大滝寛)が兄弟の父親だったのかな? 8ではそんな偏屈な感じもしなかったので、その界隈の別人なのかな? ともあれ趣味の切手収集に明け暮れていて家庭を顧みず家族には貧乏をさせたらしい父親が死に、だいぶ以前から疎遠だったので兄弟も嘆き悲しむようなこともなく、残された切手に莫大な価値があるとなって舞い上がるものの…といったお話なのですが、株式みたいな財産と違ってこういうものは換金が難しく、素人には扱いかねるものなのです。全然タイプの違う兄弟が、それでもなんとなく息が合っている様子や、濡れ手で粟の大金って人を狂わせるものだと思うのだけれど、彼らにとっては所詮まだただの小さな切手で現実感がないのか、そこまで人が変わらずにただわたわたしているのが微笑ましくて、結果的にはコレクションは暴力的に奪われてしまうんだけれど、かえってそれでよかったような気もするし…という、不思議な味わいがあるエピソードで、観ていて楽しかったのです。ま、リアルわんこを出す意味は特に感じませんでしたが…(いい子でした。ちゃんと演技をしていました。ただカテコでハンドラーさんが出てきたら明らかに態度が違っていたので、それもおもしろかったです)
 あとは、男女のゴタゴタしたエピソードはやはりおもしろく観ました。総じて男性が情けなかった気もしますけどね…
 始まったときには、というかチケットを取ったときには先すぎる…!など思っていましたが、意外にもあっという間で、まあまあ忘れないうちに完走できてよかったです。おもしろい企画ではありました。





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