駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

『ミー&マイガール』

2010年01月15日 | 観劇記/タイトルま行
 帝国劇場、2006年6月24日マチネ。

 1930年代後半の英国。由緒正しいヘアフォード伯爵家の遺言では、伯爵が昔「許されない結婚」をしていたときに生まれ、行方不明になっているひとり息子に全財産を譲ることになっている。その跡取りがやっと見つかった。財産を狙っていた伯爵の姪ジャッキー(純名りさ)と甥ジェラルド(本間憲一)は心穏やかでないが、ジャッキーはジェラルドとの婚約を解消し、新しい当主を誘惑しようともくろんでいる。そして現れたのはロンドンの下町ランベス育ちの若者ビル(井上芳雄)、そしてそのガールフレンドのサリー(笹本玲奈)だった…作詞・脚本/L・アーサー・ローズ&ダグラス・ファーバー、作曲/ノエル・ゲイ、翻訳/丹野郁弓、訳詞/高橋亜子、演出/山田和也。全2幕。1937年ロンドン初演。日本での初演は宝塚歌劇団月組で1985年。東宝版初演は2003年。

 主演キャストがどうもなあ…と思ってチケットを取らなかったのですが、知人が誘ってくれたので行ってきました。
 私がかつて観た演目は1995年の宝塚再演版と名古屋公演版で、キャストへの愛の差か、二階席だったからか…やっぱり主演ふたりがぴんと来なかったなあぁ。やはりニンじゃなかったんじゃないでしょうか。
 演出はまったくそのまんまで、訳詞も多少ちがっていましたが大筋は同じで懐かしいばかり、思い出が美化されているせいもあるのかもしれませんが宝塚版の方が良かったなあと思い出されるばかり…くうう。今実況CDを聞き直すと、麻乃佳世は喉を潰していて痛々しいばかりなんですけれどね。

 宝塚初演時にはジャッキーに扮し、役替わり公演ではビルを演じ、東宝初演でまたジャッキーをやって今回はマリア侯爵夫人役という驚きの涼風真世がまた絶品。
 私はこの人が卒業してからの宝塚歌劇しか観ていないのですが、在団時は歌が上手いだけのフェアリーというイメージがあったのが、『あずみ』といいこのコメディエンヌっぷりといい、芸達者さがすばらしすぎます。
 元ジェンヌということでは純名りさのジャッキーもチャーミングで素敵でした。だから対するジェラルドも素敵にハンサムなお坊ちゃまであってほしいんですけれどねえ…むうう。
 客席を盛り上げるオーケストラは秀逸でした。
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宝塚歌劇宙組『Never Say Goodbye』

2010年01月15日 | 観劇記/タイトルな行
 東京宝塚劇場、2006年6月6日マチネ。

 1936年、ハリウッド。セレブが集まるクラブ「ココナッツ・グルーヴ」で、新作映画『スペインの嵐』の制作発表会が開かれていた。だがパーティーに乱入した原作者のキャサリン・マクレガー(花総まり)は映画化の中止を叫ぶ。大騒ぎとなった会場に突然フラッシュが焚かれる。パリの風俗を撮影した写真集で一世を風靡したカメラマン、ジョルジュ・マルロー(和央ようか)だった…作・演出/小池修一郎、作曲/フランク・ワイルドボーン、全2幕。

 せっかくのタカコ&ハナちゃん退団公演なのに…抽選で5列目センターやや下手よりという席が当たったというのに…宝塚初見の知人を連れていったというのに…芝居一本立てで、ロバート・キャパだのリリアン・ヘルマンだのスペイン内戦だのがモチーフ、と聞いただけで感じた悪感が当たってしまいました。つ、つまらん…
 しかも外国人作曲家なのでいつもより難しい歌が多く、健闘して歌詞は聴き取れた方だったんだけど耳なじみが悪く、どうにも乗りきれなかった気がしました…

 敵役のアギラール(遼河はるひ。すばらしかったのだがしかし、本来は二番手である大和悠河にやらせるべき役ではないのか? というかタニはいつまで今回のヴィンセントみたいな、主人公の親友と言えば聞こえはいいがどうでもいい役をやり続けるつもりなのか? てかこの組の次のトップは誰なんだ???)がキャサリンに執着し出してからちょっと萌えたように、要するに宝塚歌劇に求められているものってロマンス、それもズバリ三角関係のメロドラマだと思うんですよね。
 反戦を主張したいならそれをクリアしてからやってくれ。
 さらに言えば宝塚歌劇の観客であるような女性にとっては反戦というか戦争反対というのは自明のことなので、今さら中学生が書いたような生硬な反戦論をわざわざ展開してくれんでいいぞー。
 ホント、最近の宝塚歌劇団の座付き作者はアタマが悪すぎです。

 戦争の悲劇を描いているつもりでも、実はそういう境遇に立つ自分を想像して酔っているのが見え見えなんですよね。そういうのって女にとって最も愚かな男の部分です。そんなものを男役にやらせんでくれ。ああ、辟易した。

 「ザッツ・ミュージカル」の呼び声も高い和音美桜のラ・パッショナリアの歌声が聴けたことだけが収穫。

 しかしここのトップコンビは本当に久々に「ゴールデンコンビ」の名がふさわしい美男美女でした…幸多かれ。
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地球ゴージャス『HUMANITY』

2010年01月15日 | 観劇記/タイトルは行
 新宿コマ劇場、2006年5月19日ソワレ。

 サラリーマンの順平(唐沢寿明)は夢の中で桃太郎ならぬ種太郎として鬼退治の旅に出される。夢に犬やキジや猿として出てくるのは現実世界での同僚たち。ただひとり変わらないのはいつもそばにいる最愛の人。桃太郎は鬼を退治して宝物を持ち帰るが、さて種太郎は…作/岸谷五朗、演出/岸谷五朗・寺脇康文、衣装/山本寛斎。

 地球ゴージャスの舞台を初めて観たのですが、メジャーでエンタテインメントなミュージカルという宣伝文句どおりの出来で、セリと盆回しのあるコマ劇場の円形舞台を上手く使っていて、楽しかったです。台詞も聴き取りやすく、殺陣もすばらしかった。
 歌はなんといっても高橋由美子。マイクであれだけ音量を上げられ効果がかけられていても、あくまで元の歌が上手いんだということが十分にわかるものすごさ。逆に唐沢さんは歌は今イチでしたでしょうか。でもこういうしょうもない主人公に説得力を持たせられるのはこの人が持つキャラクターゆえかと思います。
 ナンバーで一番良かったのは鬼レンジャーかな(笑)。

 構成はベタです。解雇におびえる会社生活、妻は「がんばれ」とがみがみ言い、愛人は「がんばらなくていいよ」と甘い。
 猛烈社員は夢の中で明るい犬になり、気の弱い女性社員はセクシーなキジになり、主体性のない新入社員は元気な猿になる。
 桃太郎は鬼を退治したけれど、そもそも日本民話は鬼にも優しくて、『泣いた赤鬼』なんかもあるし、平和に鬼が島に住んでいる鬼をただ襲うのは確かに「侵略」だ。無理に仲間にする必要もない。ちがうんだし、わかりあえないかもしれないけれど、ただ並存すればいいだけのことじゃない…明確な反戦メッセージ。
 愛人は鬼の王・邪鬼となり、「がんばらなくていいよ、だってあなたにはできないんだから」と言う。現実でも鬼のような妻は夢の中でも変わらず鬼のひとりとして種太郎に付き従い、夢の中でも変わらずに「がんばって、やればあなたはできるんだから」と言う。順平は会社を去り、愛人は順平の下を去り、夢の中で良い鬼のヨシキと名乗っていた男と現実で結ばれる。順平のかたわらには妻がいる…

 わかりやすいですね。でも大切なことです。そして真実です。楽しかったです。
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劇団四季『クレイジー フォー ユー』

2010年01月15日 | 観劇記/タイトルか行
 四季劇場・秋、2006年5月18日ソワレ。

 1930年代のニューヨーク。銀行家を母に持つボビー(この日は荒川務)は周囲の心配をよそに踊ることに夢中でブロードウェイに入り浸り。今夜も興行主ザングラー(栗原秀雄)にタップダンスを売り込もうとするが、軽くあしらわれてしまう。ショービジネスから大事な跡取り息子を遠ざけようとした母親は、ボビーをネバダ州の田舎町デッドロックに物件の差し押さえに行かせる。ボビーはそこでその町唯一の女性ポリー(樋口麻美)と出会い…作曲/ジョージ・ガーシュウィン、作詞/アイラ・ガーシュウィン、台本/ケン・ルドウィッグ、振付/スーザン・ストローマン、演出/マイク・オクレント、日本語歌詞/和田誠・高橋由美子、日本語台詞/高橋由美子。1992年初演、1993年に劇団四季創立40周年記念演目として上演。

 調べてみたら再演時の1994年3月日生劇場公演を観劇していました。
 私は社会人になってから観劇生活を始めたので、その最初の頃に観た非常に思い出深い作品で大好きであり、だからこそ逆にその後ずっと観ないで封印しておいたのですが、今回久々に観てみて、もっと通えばよかった、これからは何度でも行こう、そしてかならず誰かを連れていって布教したい(笑)と思ってしまいました。
 個人的な好みだけで言えばもっとちがう作品を挙げられるかもしれませんが、これはどこに出しても恥ずかしくない、万人にお勧めできるスタンダードであり、ザ・ベスト・ミュージカルです。初心者にはもちろん、見巧者にも楽しい舞台だと思います。幕間の休憩で私の背後の席に座っていたいかにもビギナーらしい若い女性二人組が、
「おもしろい! 『オペラ座の怪人』なんかよりずっと!!」
 ともりあがっていたのにはちょっと笑ってしまいました。
 ホントにそうだと思ったからです。話題だけで観劇初心者があの舞台を初めて観に行くのにはけっこうつらいものがあると思います。
 でもこの作品はちがう。キャラクターもストーリーも設定も誰にでもすぐわかって絶対に筋を見失うことはなく、あっという間に引き込まれて、笑って楽しんで一直線、幸せな気持ちで観終わって、帰り道には「アイガットリズム」の鼻歌が歌えるくらいになっているからです。

 幕開きの台詞はどんな舞台でも役者緊張のためか台詞が早口になることが多く、観客は聴き取るのが精一杯で話が捉えられなくて往生したりするものですが、今回はそこもクリアされていて、むしろゆっくりすぎるだろうと思えるくらいにていねいに発声されていました。すばらしい。

 四季の舞台はいつもそうですが今回も修学旅行生が多く入っていて、ロビーがこむので私は嫌いなんですが、でもこれはこれくらいの若者が観劇するにはやはりいい作品だと思う。

 まず、この作品はこれでもかこれでもかというくらいにキスシーンが出てくるのですが、これが性衝動に突き動かされている思春期の青少年の心をつかむかと(笑)。生で観ることなんか普通ないでしょ? それが目の前で生で、だけどフィクションとして、でも「恋」を表現するために演じられる。これは子供には衝撃だと思いますよ。

 そしてフォーリー・ガールズのお色気。ダルマの格好に男子生徒はどっきりかもしれないけれど、これはセクシャルなものではない、と言うか彼らが知っているものとはちがうセクシャルというものがこの世にはあるのだ、ということが学習できるいいチャンスだと思うのです。
 彼らにとって女体は隠れて鑑賞するものであり、それはいやらしくて悪いことで薄汚れているとされているからこそそうして隠そうとするわけです。でも本来人間の体とはただそれだけで美しいものであり、その美しさを鑑賞する中に、真の美としての色気、セクシーさ、妖艶というものもまたあるのだ…ということに気づけるのではないかしらん。「ノーティ・ベイビー」のセクシャルさが笑えるようになるということは大人になった証拠でもあるのです。がんばれ若者!

 ポリーはマイ・ベスト・ミュージカル・ヒロインと言ってもいいのかもしれません。
 田舎の下町娘で気風がよいという性格設定、「エンブレイサブル・ユー」や「バット・ナット・フォー。ミー」のナンバーのすばらしさ…
 それにしてもラストの白いドレス、サイズが合っていないのか乳房がこぼれそうだったぞ!(爆)

 そしてボビーも、いつか「ベスト・アクト・オブ・ボビー」というものをこの目で見てみたいものだと思ってしまいました。
 作品がよくできているせいもあってほとんど型だけでやってしまえる主人公ですが、最初のうちの金持ちのボンボンの自信過剰っぷりや鼻持ちならない感じ、恋に舞い上がり一生懸命がんばっちゃう愛らしさ、夢と愛に敗れて一度は都会に戻って母親の仕事を手伝ったりしちゃう落ち込みぶりや自暴自棄のせつなさ、再度発ち上がる勇気…というものが、ホントに繊細に芝居心もふんだんに演じられる瞬間を、目撃したい…と思いました。

 もしかしたら私はもう一回くらいは観劇しているのでしょうか…ブロードウェイ・オリジナルキャストのCDは愛聴しているのですが(それから比べると今回の演奏はホントに下手だった! こんなに下手な楽団は久々な気がしました。精進してほしい!!)、ずいぶんと日本語歌詞も覚えていました。
「今はダメ」「この恋、他にはいらない」「抱いて、私のいい人」etc…フシギだ。原曲に耳が馴染んでいるとどうだろう、という響きもないことはないのですが、オリジナル番演出家が「美しい」と許可を出したんだからOKの範疇なのでしょう。

 私がとりわけ愛しているキャラクターはもちろんテス(今回は有永美奈子)です。

 一点だけ残念だったのは、例によって周りの観劇マナーです。今回は隣の隣の席の人が足踏みをするのが床に響いて気に障りました。隣の席だったら絶対に一言言ってやったのになあ。
 ノッてしまって自然と体が動く、というのは仕方がない。でもこの人は、わりと歳のいったカップルの女性だったのですが、明らかに「私はノッています」ということを周りにアピールするためにやっていた。
「私ノリノリなの、センスいいでしょ」ってことですね。
 ときどきこういう、自分の感覚を周囲に追認してもらわないと自分に自信が持てない人っていますよね。ウザい。
 それにあなたはプロではないしあなたのリズムは人に見せるレベルのものではない。やめてくれ。

 そうだ、これはどこかで別の演目でだったかもしれないけれど書いたと思いますが、カーテンコールの手拍子はいいんだけれど、最後のフレーズは絶対裏打ちでやるべきだと思うんだけど!
 あれじゃ踊っている方も演奏している方も絶対気持ち悪いと思う…それからすると日本人のリズム感なんてホントまだまだなんだと思いますよ、自分を棚上げして言いますが。ふう…
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