駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

吉田秋生 『櫻の園』

2010年01月14日 | 愛蔵コミック・コラム/著者名や・ら・わ行
 白泉社ジェッツコミックス

 春の創立祭に演劇部がチェーホフの『櫻の園』を上演する伝統がある女子校を舞台にした、少女たちのオムニバスストーリー。

 映画にもなって話題になりましたが、やはりちょっと視点が違っていましたね。
 私はどのエピソードも好きだし、並べ方もすばらしいと思います。装丁もおしゃれな美しい一冊。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

小泉真理『ジンクホワイト』

2010年01月14日 | 愛蔵コミック・コラム/著者名か行
 祥伝社コミック文庫

 美大を目指し、画塾に通う女子高生・マキ。ひとつ年下の和田くんとは、友達以上恋人未満の関係。まったく先が見えない、不安だらけの恋と受験の行方は…!?

 こいずみまりという漫画家は、主に4コマ作家だし絵はどちらかと言えば下手ウマ系だし女流だしで、青年誌形にありがちなややエロティックなイメージを持たれがちだと思うのですが(てか私が勝手にそう思っているだけ!?)、読むと意外とまっとうというか王道少女漫画の青春ラブストーリーみたいなものを描いていることが多い気がします。
 これもそんな一作。
 終盤けっこう急ぎ足な感じもしますが、そしてテレもあるのかラストシーンももう少し大仰に感動的にやってくれても私はいいなという感じなんですが、でもけっこうジンときましたしほろりとさせられました。
 このまま和田くんと会えないまま、という終わり方も、物語としてはあったと思うけれど、そうしないでいてくれてうれしかったし、私はそれを支持します。
 可愛いなあ、好きだなあ。
 そんな、いい、一冊です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

こいずみまり『健全恋愛ライフ』

2010年01月14日 | 愛蔵コミック・コラム/著者名か行
 祥伝社コミック文庫

 広告代理店勤務のマキのもとに転がり込んできた後輩・和田くん。なし崩しに始まった同棲ライフに、マキの不倫、昔の片想いが複雑に絡み合い、「健全な恋愛」を目指したいマキが選んだ結末とは…

 ヒロインの名前がマキで(しかもこれが名字で)、相手役の男性は年下で後輩の「和田」くん、というのは、『ジンクホワイト』と同じ。
 著者にとって、こだわりがあるというよりは扱いやすいモチーフなのでしょう。
 キャラクターには多少の相違があって、描かれた時期はこちらの方が先。『ジンクホワイト』の終盤で、美大に入学したマキが学生の中に「和田」と呼ばれる男性を見つけて「ちがう」と思うシーンがあるのですが、この和田くんが『健全~』の和田くんになっていましたね。

 『ジンク~』は美大受験をひとつのモチーフにしたある種の青春ものでしたが、『健全~』ではヒロインはすでに会社員であり、同棲がひとつのモチーフになっていて、その分「アダルト版」になっている、とも言えます。作品的にはむしろさかのぼって若い時期を描くようになったのだ、というのはわかる気がします。でも好みでいえば私は『健全~』の方が好きな作品です。

 マキの心は神崎さんに捨てられた時点で凍ってしまっていて、その直後に夏木さんとの不倫にハマっても、それはそれで楽しかったんでしょうが決して癒されきれていず、なし崩しに和田くんとの同棲が始まって夏木さんとは縁遠くなってセックスはほぼ和田くんとしかしなくなってしかもそれは下手すると毎日しちゃっていたりするのに、マキの心はあいかわらず神崎さんのところにあるわけです。というか、本人がそう思い込んじゃっているのです。
 実際には、夏木さんはともかく和田くんが癒し新たに耕してくれた部分が心身ともに大きくあるはずなのに、マキはそれに気づかないフリをしていたのです。それが、神崎さんとの再会でやっとわかったのです。
 神崎さんの「幸せ」な姿を見てやっと
「この人……/ヘンタイだ……」
 と客観視できたマキは、神崎さんが和田くんに
「さそったのは/こいつだから」
 と言うのも和田くんが神崎さんに殴りかかるのも
「なんだかなあ」
 という感じでぼおっと見守ってしまうのですが、結局は和田くんを引っつかんで家に戻ります。そのとき神崎さんにかける言葉はもうない。それがすべてを表しているように思います。

 とはいえ収拾のしようがなくて、とりあえず先手必勝と先にキレて和田くんを追い出そうとしますが、彼の入れるコーヒーのおいしさに心は緩んで、
「好きにすれば」
 と答えてしまう。
「じゃっ しようかっ」
 という和田くんのむやみな明るさに救われるのです。

 最終盤は、私はもう少しだけゆっくりじっくりやってくれてもよかったのに~、とは思ってしまいますが、まあ紙幅の問題もあったのだろうし仕方がない。同じ会社の同僚として、公認の仲として、まあ下の名前を呼び合う日々は遠いかもしれないんだけれど、でも幸せに、やっていけそう…というラストは、素敵だと思います。

 心と身体が一致しないというか、愛と性が一致しないというか、そんな宙ぶらりんな感じに長く悩まされてきたヒロインが、王子様の一途な愛で立ち直るお話、のひとつであると言ってしまえば身も蓋もないかもしれませんが、でもそういうことなんだと思います。だからこそ私はこの作品を愛さずにはいられないのだと思います。

 しかし装丁はせっかく『ジンク~』と似せているのであれば色味まで似せるべきだと私は思うがいかがか。あと、おしゃれのつもりでつけているんであろう英語の「WHAT A HEALTY LOVE LIFE」に私は激しく文句を言いたい。「HEALTHY」という英語には確かに「心身ともに健康な、健やかな」という意味があるのですが、カタカナで「ヘルシー」と言った場合そのニュアンスはないので、こういう英題を振られるとどうにも引っ掛かってしまうのです。疑問文なんだか感嘆文なんだかもヘンだしさ…ぶつぶつ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

波津彬子『うるわしの英国シリーズ』

2010年01月14日 | 愛蔵コミック・コラム/著者名は行
 小学館フラワーズコミックススペシャル全5巻

 伯爵家の跡取りで独身のコーネリアス・エヴァディーンは、英国社交界きっての注目の美青年。そんな彼の今度のお相手は、花嫁衣裳をまとった幽霊…!? 古き良きイギリスを舞台にした、お洒落でミステリアスな人気連作集。『月の出をまって』『中国の鳥』『空中楼閣の住人』『花々のゆううつ』『扉をあける風』計5巻。

 フラレ?続ける「フーテンの寅さん」みたいなメイン・キャラクターのコーネリアスがめでたくも結婚してしまったので、一応まとめることにしたようですが、基本的には「舞台が近代英国であること」だけが縛りというゆるやかなシリーズものだっただけに、もっと続けることもできそうで、惜しむファンも多いのではないかと思われます。
 個人的には、霊感ゼロのくせして心霊科学にいそしむ朴念仁の父親と、霊が常に見えてしまうクールな息子とのコンビのエピソードはまだ読みたかったです。
 しかしコーネリアスといいこの父子といい、いいキャラクターは何人かいるんですが、萌え萌え!とならないのは、絵柄が端正すぎるからか描き方が淡白すぎるからなのか…なんかちょっと、もったいないです。
 でももうそういう作風として出来上がっちゃっている作家さんなんだろうからなあ…
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする