河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

PC版に一覧等リンクあり。
OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

2090- ウェルテル、E.プラッソン、新国立、2016.4.6

2016-04-06 23:24:27 | オペラ

2016年4月6日(水) 2:00-5:25pm オペラパレス、新国立劇場、初台

新国立劇場 プレゼンツ
マスネ 作曲
二コラ・ジョエル プロダクション (ニュー・プロダクション)

ウェルテル

キャスト(in order of appearance)
1. 大法官、久保田真澄 (Bs)
1.6人の子供
2.シュミット、村上公太 (T)
2.ジョアン、森口賢二 (Br)
3.ソフィー、砂川涼子 (S)
4.シャルロット、エレーナ・マクシモア (Ms)
5.ウェルテル、ディミトリー・コルチャック (T)
6.ブリューマン、寺田宗永 (T)
6.ケッチェン、肥沼諒子 (S)
7.アルベール、アドリアン・エレート(Br)
合唱、新国立劇場合唱団
児童合唱、TOKYO FM少年合唱団
エマニュエル・プラッソン 指揮 東京フィルハーモニー交響楽団

(duration)

第1幕  4′+40′
Int
第2幕  2′+31′
Int
第3幕  4′+35′+
第4幕  5′+17′


全くお恥ずかしい話ですけれどオリジナルのゲーテは読んだことが無く、この千円プログラムをじっくり読んでいるとなんだかその原作を読んだような気になるから不思議である。
マスネのウェルテル、CDは持ち合わせているもののオペラとしてはたぶん初めて見ると思う。新国立では2002年に既に上演しており、その時はサヴァティーニが歌っているようですので、相応な人気演目ではあるのですね。
今回の公演はジョエルの演出、ニュー・プロダクションとのこと。指揮者とか出演者が色々変更になってむかえた公演のようです。

綿々と盛り上がる音楽、センチメントが至る所にあるが、芯の強さや無調気味な不安定感も顔を出す。
4幕物で色々と濃淡がある。ゲーテのオリジナルはどうなのかわかりませんが、マスネのオペラには嫉妬がない、嫉妬劇でないゲーテのオペラ、これがひとつ気品のあるものにしていると思います。本質的な、と言いますか根源的なもの、心の動きや、あや、そのようなものがテーマで、それに、日本語で字幕に現れる言葉の中身の詩的なこと。締めつけられるようなストーリーに中に言葉が光る。
オペラとしては第2幕が比して弱い印象があるが、まぁ、それも含めて綿々と続くオペラ劇、味わいの深いものです。頂点は第3幕の二重唱でしょうか。

舞台はシックで劇を邪魔しないもの。それぞれのシンガーたちが、歌うところで出てきて、歌い終わったらひっこむ。なんだか、アリアのリサイタル風ですね。舞台のプロダクションとしては弱い気がします。
あと、オーケストラの方ですが、これは指揮者含めて腕がもう一段高ければ、というか、本来ならぶつかり合う音と音がキラキラと輝きながら飛び散っているような響きなんだろうなぁ、といった想像の部分まではイメージ出来る。香りが無いといったモヤモヤ表現ではなくて、もっとスキルレベルがハイならば、キラキラ、しなやかしなやか、いいものだったろうという思いだけです。
おわり




2089- 東京春祭マラソン・コンサート 変奏曲の変容、2016.4.3

2016-04-03 23:02:36 | リサイタル

2016年4月3日(日) 7:00-8:10pm 小ホール、東京文化会館

ワーグナー(ラインハルト編)
     ハルモニウムとピアノのための二重奏曲「聖杯城への行進」(パルジファルより) 9′
              ポジティヴ・オルガン、大木麻理
              ピアノ、高田匡隆

サティ ヴェクサシオン(部分)  2′
サティ パッサカリア  3′
        ピアノ、加藤昌則

ブラームス(ケラー編) 交響曲第4番ホ短調より第4楽章   9′
              ピアノ(2台8手連弾)、
               岡田将、加藤昌則、高田匡隆、山田武彦

JS.バッハ(ブゾーニ編)
               無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番ニ短調より、シャコンヌ 16′
             ピアノ、高田匡隆

お話し・企画構成、小宮正安


東京・春・音楽祭の一環、恒例マラソン・コンサート1日5回公演の最後の回を聴きに行きました。
全体タイトルは、変奏―変容する音楽、この5回目の公演副題は、≪変奏曲≫の変容。
判然としないタイトルですけれど、要は他楽器による編曲もので、変奏曲という副題はなんか違う気がする。サティはさらにちょっと違う気がする。編曲と変奏曲が混乱気味ではないですか。
パンフ読み始めるとモヤモヤが増すので、ワーグナーと生誕150年のブゾーニを聴きにきたんだっけという最初のことを思い出しながら聴くことにした。

最初のワーグナーは第1幕の聖杯のところですが、テンポが速い。今読んでいるショーンバーグの「ピアノ音楽の巨匠たち」という本にも出てきますが、昔はテンポが速かった。というよりも今が遅すぎる。といった内容のところがあり、それを思い出してしまった。が、その思い出し以上にさらに速い感じ。やつして演奏してる雰囲気は無いですが、もうちょっとコクが欲しい。この2種の楽器による響きは殊の外、溶け込んだもので原曲のアトモスフィアは出ている。合唱のイメージも湧きますね。まぁ、口ずさめます。

サティは短すぎて選曲に難あり。

ブラームスは迫力ありました。男衆4人で2台のピアノを弾くというのは相当な圧力ですね、見た目も。
オリジナルのオーケストラサウンドを彷彿とさせてくれる編曲で、8手あるとオールモースト・オールを表現できるものだなぁと納得。
演奏はジャバジャバした感じが無くて締まってました。どなたかが明確に引っ張っていくようなあたりが見えればさらに良かったと思います。

最後のブゾーニは言わずと知れた作品で、ヴァイオリンを忘れさせてくれるぐらい切れ味鋭いピアノ演奏で見事な編曲と多彩な表現。音のしずく、ウェットにつながっていく感じというのは、ヴァイオリン演奏だけではなく、ブゾーニ編曲のピアノでも感じるし、それを推し進めているのはこのピアニストのピアノによるところも大きいのだろうなぁと。


ことしのマラソン・コンサートはいまひとつすっきりしない。テーマがモヤモヤしていて選曲も無理無理感ある。来年はもっとクリアで明瞭、明確(全部同じか)、シンプルなものを望みます。
おわり


2088- リスト、ワーグナー、シュトラウス、マーラー、クヌート・ショホ、2016.4.2

2016-04-02 23:35:24 | リサイタル

2016年4月2日(土) 7:15‐8:20pm ドームホール、北とぴあ

リスト
はじめは殆ど打ちひしがれて 2′
君はまるで花のよう 2′
ライン川、美しい流れの 2′
愛しなさい 4′

ワーグナー
ヴェーゼンドンク歌曲集より、天使、温室にて、痛み、夢  3′5′2′4′

シュトラウス
明日、ひそやかな誘い、万霊節、バラのリボン  3′3′2′2′

マーラー
リュッケルト歌曲より、
僕の歌をのぞかないでよ  1′
ほのかな香りを吸い込んだ 2′
sb(水飲みブレーク)
真夜中に 6′
私はこの世から失われて 4′

(encore)
リスト 全ての山々に  3′

テノール、クヌート・ショホ
ピアノ&通訳、江口真紀子


4人の作品を4曲ずつ計16曲、それにアンコール1曲、マーラーの途中で水飲みブレークで引っ込んだがそれ以外はぶっ通しで約1時間ロングのリサイタルでした。

ご本人は6時15分頃着で7時前5分ぐらいでもまだジーパン姿で小ロビーあたりに顔をだしていて、ホールのドアが開いたのが7時10分過ぎで、それまで待ちぼうけで、ざっくり開始。
システムに乗らない、タイムチャート無しのフランクなリサイタルで、これはこれでいいのではないかと、だんだん思えてくる。オーケストラやオペラ公演はきっちりとしたチャートがあると思われますが、必ず5分遅れスタートのタイムチャートを持っていそうな団体もあるし、まぁ、この日だけああだこうだという話でも無い。

ドームホールという妙なネイミング、150人規模のホールに聴衆は40人ぐらい。いわゆるセンターのところには席がないというこれまた妙な具合で、音響はまるで吸い取り紙で吸い取られてしまったのではないかと思われるぐらいデッド、というより響かない。まぁ、音楽用のホールではないと思うので、これは段取りの問題でしょう。声にはかわいそうなものでした。

といった周辺コンディションは横において。
身体の線と同じように細身の声ながら安定したものでした。ただ喉先から出ている音という感じで腹の底から一本芯が通ってのびてくる雰囲気は無い。時間をかけてからのスタートだとまた違っていたのかもしれません。そのような中で4人の作曲家の歌を相応に楽しむことはできました。気持ちを落ち着ける技のようなものを持っているのか、すぅーと作品の中に入っていっているようで、聴くほうとしてもコンセントレーションを高めて。
リュッケルトの真夜中に、曲想の変化や色模様がなかなか良かった。伴奏のピアノのこめたフレージングも素晴らしく良いものでした。
このお二方のプレイ、音楽はこのようなところから生まれるものかもしれません。
巷にあふれかえる、あっちよりこっちがよかった、これが今まで聴いたベスト、こういった陳腐な英雄崇拝とは別世界の時空、これはこれで味わいのあるもの。

ショホさんが歌う前にちょこっとお話をして、それを見事に通訳してくれましたピアノの江口さんはコレペティトゥア専門家という雰囲気で、なんだか鬼に金棒みたいな素晴らしさでした。このホールで、あれだけ香りを立たたせるのは至難の業のような気もしますが、なんだか、どっからでもおいで、そんな感じです。

ショホさんはCDを何枚か出していて、入り口前に並んでいました。それからプログラムパンフにフライヤーが挟まっておりまして、4月17日に原・マタイ受難曲の福音史家のところに名前があります。IMA HALLでの演奏会ですね。

おわり


2087- ヘンデル、パーセル、リチャード・エガー、紀尾井シンフォニエッタ東京、2016.4.1

2016-04-01 23:01:02 | コンサート

2016年4月1日(金) 7:00pm  石橋メモリアルホール、上野学園

ヘンデル  ソロモン第3幕序曲シンフォニア、シバの女王の入城  3′

パーセル(R.エガー選曲)  妖精の女王、ソプラノと管弦楽のための大組曲  36′
  ソプラノ、阿部早希子

Int

ヘンデル(R.エガー選曲)  水上の音楽   18′

ヘンデルの歌劇より
リナルド第2幕第4場、私を泣かせてください4′        ソプラノ、阿部早希子
ジュリアス・シーザー第3幕第7場、海の嵐で難破した小船は6′ ソプラノ、阿部早希子
セルセ第1幕第1場 オンブラ・マイ・フ3′      カウンターテナー、藤木大地
リナルド第1幕第8場 風よ、旋風よ4′        カウンターテナー、藤木大地
リナルド第1幕第6場、私の面差し優美に溢れ3′    ソプラノ、阿部早希子、
                         カウンターテナー、藤木大地

リチャード・エガー、指揮&チェンバロ
紀尾井シンフォニエッタ東京

*プログラム詳細は最下部に記載。

「東京・春・音楽祭」というあまり座り心地の良くないネイミングのお祭り公演の一環。
ホグウッドのサクセッサーとして活躍しているエガーのチェンバロ弾き&指揮。ざっくりとした雰囲気で、イギリスのテレビ連続ドラマ物のなくてはならない脇役風貌みたいなところがありますが、弾き振りは完全な主役で、エネルギッシュでダイナミック、濃淡こめた表現は聴きごたえありました。
この日のプロはヘンデルとパーセル。ヘンデルはメロディーラインが機能美のようなところがあってそこらへん好みです。パーセルの妖精の女王は昨年(2015.12.13)、全幕物を観て興味を持ちました。いい組み合わせのプログラムです。
ヘンデルではカウンターテナーも聴けるとあって、興味津々ですね。

古楽のオーソリティのエガー、全く板についた指揮ぶりと説得力はホールを圧するものがありますけれど、それよりも感じる説得力というのは、例えば妖精の女王と水上の音楽でのピックアップされたピースと並べた順番、豊富な知識と経験がベースにあって、どのような思考回路でピックアップし並べたのか、そういうところにも興味がいきます。というよりももはやこうやって自信に裏付けされた形で演奏されるあたり、それだけでなんだか実力のほどを、有無を言わせずに納得させられてしまう、屈服。お初で聴く指揮者ですけれども、このようなところだけとっても実力のほどが割と瞬間的にわかるところがありますね。なんだか安心してこれら選曲に入っていけると言いますか、そんな感じです。

最初のシバの女王からメリハリの効いた彫りの深い音楽が展開。
パーセルはさらにぐっと引き締まりパースペクティヴの効き具合もいい。濃淡の表情が濃いです。昨年聴いた妖精の全幕物を思い出します。今晩の演奏では3曲ソプラノが入ります。ちょうどよいホールサイズで極上の歌唱を楽しみました。比較的ドライで固めのオケサウンドとの分離、融合具合も良いもの。1階席で聴きましたがちょっとブローラ・ウィスキーのバシャッとした雰囲気の響きで、もしかして2階席の方がより楽しめそうな気もしました。最後のシャコンヌ、大きな音楽の表情が締めに相応しい。

後半は水上の音楽から。このアンサンブルは名手たちが多くいるようで、音場が全体になにかひとつグイッと持ち上げられたようなレベルを感じます、リールテープをオープンデッキで聴いたときのようなやや上方に持ち上げられてグイッと引き締まった音場、そんな雰囲気をほうふつとさせてくれます。日本のアンサンブルはいつでも素晴らしい、そんな実感。
水上の音楽を楽しめました。

そして同じくヘンデルより歌劇から5曲、ソプラノ、カウンターテナーのピースが2曲ずつと最後に二重唱。カウンターテナーの音色は個人的にはめったに聴く機会がありません。人間の技の奥深さを感じないわけにはいきません。特に高音での歌いまわしなど、滑らかで自然で美しい、そしてこの歌い手特有だと思いますがかなり劇的なところも。そのしぐさから、オペラのシーンをイメージして歌っているようで入れ込みがすごい。歌詞は今一つよくわかりませんでしたけれど、対訳リブレットを見ながら色々と楽しめました。

指揮のエガーはうまく合わせているというより、彼の柔軟で説得力ある棒、ときにはユーモラスであったりするが、今晩の全てが、彼の中にあるように思えました。
良質でいい演奏会でした。
ありがとうございました。
おわり


(プログラム詳細)

ヘンデル:オラトリオ《ソロモン》HWV67 より、
第3幕序曲シンフォニア「シバの女王の入城」

パーセル(R.エガー選曲):歌劇《妖精の女王》 より「ソプラノと管弦楽のための大組曲」
 第2音楽:エアとロンドー
 第1幕 序曲
 第3幕 愛が優しい情熱なら
 第3幕 妖精の踊り
 第3幕 千草を作る人たちの踊り
 第5幕 ほら、風がこだまを返しながら  ソプラノ、阿部早希子
   第3幕 終曲:ホーンパイプ
   第4幕 シンフォニー
   第5幕 嘆き:私を泣かせて  ソプラノ、阿部早希子
   第5幕 猿の踊り
   第5幕 前奏曲
   第2幕 ごらん、夜の闇が自らここで   ソプラノ、阿部早希子
   第2幕 おいで、すべての空の歌い手たち
   第2幕 前奏曲
   第5幕 シャコンヌ

ヘンデル(R.エガー選曲):組曲 《水上の音楽》
 2-1 (序曲)
 2-2 アラ・ホーンパイプ
 3-2 リゴードン
 3-3 (アレグロ)
 (3-2 リゴードン)
 1-10 (アレグロ)
 1-6 エア
 2-3 メヌエット
 2-4 ラントマン
 2-5 ブーレ

ヘンデル:歌劇《リナルド》HWV7 より、
第2幕第4場「私を泣かせてください」
              ソプラノ、阿部早希子

ヘンデル:歌劇《ジュリアス・シーザー》HWV17 より、
第3幕第7場「海の嵐で難破した小舟は」
     ソプラノ、阿部早希子

ヘンデル:歌劇《セルセ》HWV40 より、
第1幕第1場 「オンブラ・マイ・フ」(なつかしい木陰よ)
               カウンターテナー、藤木大地

ヘンデル:歌劇《リナルド》HWV7 より、
第1幕第8場「風よ、旋風よ」
                カウンターテナー、藤木大地

ヘンデル:歌劇《リナルド》HWV7 より、
第1幕第6場「あなたの面差しは優美に溢れ」
                ソプラノ、阿部早希子
                カウンターテナー、藤木大地

以上