2018年9月1日(土) 6:00-8:15pm サントリー
ラヴェル(ブーレーズ編曲) 口絵(1918/1987/2007) 日本初演 2
フィリップ・ユレル トゥール・ア・トゥールⅢ レ・レナマンス(名残り)
オーケストラのための (2012) 日本初演 22
Int
ブーレーズ プリ・スロン・プリ (1957-62/82/89) 15-6-12-22-17
ソプラノ、浜田理恵
ピエール・アンドレ=ヴァラド 指揮 東京交響楽団
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今年2018年のサマフェス千秋楽はブーレーズの大作。1993年に日本初演されて、今日は2度目の公演となる。まあ、有名な割には、上演はレア。
生演奏とCDで聴く音との違いは一言で言うと、奥行き感。
指揮者を中央に、左右に配置された2群のオーケストラ。指揮者の前には3台2台と計5台のハープ、3人で持ち替えながら。ハープが中央陣取って、それ以外のスペースにはたくさんのパーカッション類が立錐の余地なくばらまかれている。
指揮者、ソプラノは、この種のスペシャリスト、ヴァラドさんと浜田理恵さん。オーケストラは機能的で音色が魅力的なオーケストラ、と、申し分ない布陣。
1.贈り物 15
2.即興Ⅰ 6
3.即興Ⅱ 12
4.即興Ⅲ 22
5.墓 17
70分越えの演奏、最後の2曲が大幅に濃厚な噛み砕き。即興に相応しいのかもしれないし、終曲は複雑な迫力が迫ってくる。
プログラム冊子が満を持したような詳細な内容で、これ一つだけで資料的価値と内容理解に申し分ないものだ。事前勉強必須ですね。
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ホールはP席クローズで、見渡すと、がらがら。聴く意気込みのある人たちだけが来ている感じ。あとは始まる前から居眠りしている常態系が若干。
ブーレーズ独特のポロポロとぶちぎりされた音の連続体とソネットに乗せる引き伸ばされた音、それらが絡み合い、細かいニュアンスがちりばめられ、背骨の神経をそのまま垣間見るようなデリカシーな音。
強烈な一撃で始まった、ひと襞ひと襞は、パーカッションのサウンド綾模様とオーケストラルセクションの絡み合い。覚えれるような作品ではないけれども、指揮者の正確で割とシンプルそうに見える振りは、聴きやすさを思わせてくれる。
器楽サウンドとしては1と5は響きを理解しやすい。挟まれた三つの即興は、詩の歌メインで、オーケストラの短い音の集合体の真逆をいくもので、ソネットがなにやら一筆書きのように撫でられていく。
こうやって生演奏で聴くと、ヴァラドの棒だからというのもあるのかもしれないが、即興Ⅲが非常に引き伸ばされていて、1と5にサンドウィッチされた即興Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの各束というよりも、時間が倍ずつかかっていき、即興Ⅲは終曲の墓にブリッジのように大きく流れが動いていく。その最後の、墓では、短く切られた音群とそれまで歌で語られていた即興の詩が、双方とも器楽で語られてミックスしていくように見受けられる。混沌ではなくて、いわば、まとめの音楽になっていると強く感じた。
最後は死の一節が歌われ、1の一番はじめの打撃音が再度打ち鳴らされ終わる。強烈。
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即興Ⅲでは、ソロトロンボーンが位置を中央よりに変えて、立ち尽くしたままの22分。吹くところはあまり多くない。全部ミュート付き、2種類のようでした。全身または腕でリズムを取りながら吹奏に入っていくもので、容易な曲ではないだろうなあと素人目には見えるし、あのようなリズム取りを、メンバー全員が身体の芯で感じながら全曲をプレイしているんだろうなと、妙にエキサイティングな気持ちとなる。
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プログラム前半の2曲。
ラヴェルのピアノ曲をブーレーズが編曲した口絵は音が伸びていって絡まり、カップルミニッツであっという間に終わる。似た音形に色彩感を持たせたような色模様。
次のユレルのレ・レマナンス(名残)は三部作トゥール・ア・トゥールの三つ目。すーっと伸びていく響きと、短く切る音型が持続していく。切れ気味の音型が主要なものとなり、最後は静かに終わる。鏡の角度が順を追って変化していくようだ。音は浅いと感じる。
3曲ともに同じようなキーワードに落ち着いた。
おわり
サントリーサマーフェスティバル2018