河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

2605- オーケストラ・プロジェクト2018、大井剛史、東響、2018.9.5

2018-09-05 23:46:32 | コンサート

2018年9月5日(金) 7:00-9:10pm コンサート・ホール、オペラシティ

阿部亮太郎 漆黒の網目(初演)  10

小山和彦 ピアノ協奏曲第3番(初演)  16
  ピアノ、西村翔太郎

Int

山内雅弘 SPANDA ヴィブラフォンとオーケストラのための(初演)  24
  ヴィブラフォン、會田瑞樹

森垣桂一 交響曲(2018) (初演)  5+6+9


大井剛史 指揮 東京交響楽団


オーケストラ・プロジェクト2018、4人の初演もの4作品。

4作曲家が自身の言葉でプログラムノートを書いている。最初の作品は阿部さんの漆黒の網目、まず思うのは、なぜここまでわかりづらい文章を書くのか。読み手を拒否する姿しか見えてこない。平易な言葉でわかりやすく、聴衆という聴き手読み手が容易に理解できる文をなぜ書かないのか。一体全体、これが拒否でなければなんなのか、是非とも一度説明して欲しいものだ。客にわからせる姿勢と努力を望む。
現代音楽の演奏会におけるプログラム解説には同種のものが多く有る。まるで、私の文章を理解出来なければ、私の作品も理解できないのだよ、と言っているかのようだ。
曲の印象としては、音がもがき漂っているようだ。音で音楽以外の事を表現しているように聴こえてくる。なぜここまで硬直したものを書かなければならないのか。見映え聴こえ具合が露骨なのは恥なのかと思えるような、ある種の創意拒否を感じる。で、生きてる音楽は霧散か?

次の小山さんのピアノ協奏曲第3番。かなり、楽に読める文でホッとする。
上昇音型が印象的、明るい曲風、なにか不安定な音の運びが落ち着きどころを探しているように聴こえてくる。陰影があまり無くて浅瀬の光。そういったものが作品全体を照らす。もう一度聴いてみたい。

後半の2作品はオーケストラサウンドの醍醐味を満喫できる。オーケストラの響きワールド。
山内さんのSPANDA、脈動、鼓動。実験的なところも盛り込みつつ全体に派手な鳴りで、ショーピースとしても楽しめる。大技、小技、引き出しの数も多いですね。
オーケストラルな響き→ヴィブラフォン・ソロ、カデンツァ中心に→オーケストラル復活→弱音に収束。
といった流れ。ヴィブラフォンはオーケストラに負けないもので終始よく聴こえてくる。多彩な技、ダイナミックな叩き、華麗な技巧連発で聴きごたえあり。時にデカサウンドのオーケストラ越えの音、目が回るような動きに、ビックリ。見た目の動きと音楽がピッタリと重なっている。
カデンツァが聴衆をひきつけるのは、その前の部分、オーケストラとの競演が対等であまりに見事であるためですね。ソリストの腕もポイントになる。凄いもんでした。初演もののカデンツァで空気をピリピリと鎮まらせるあたり、うーん、すごい、とうなるばかり。
ヴィブラフォンの微分音作成過程と、そのヴィブラフォンと正常ピッチのヴィブラフォンを並べての演奏、それに、見ていると、鍵盤を手で叩いたり、オケのほうはラッパの歌口をはずして叩いたり、等々、出てくる音と見えてくるもの、観るほう聴くほう、一時の休みもない面白さでした。
即時再演希望。

最後の作品は森垣さんのシンフォニー。
プロローグ、ミステリオーソ、コンチェルト・グロッソとエピローグ、これらによる3部構成。
重い快活さとでも言おうか、シンフォニーの形式が理知的な質感をもって表現される手応え十分の作品で聴き足りないぐらいです。
オーケストラの騒ぎがよく出ていて、カツ、音楽の流れが理にかなっていると感じられる。唐突さも落としどころとしては、こうあるべき、納得の曲ですね。合理性と正規化が音楽を必要以上に縮めることが多々ある現音作品にあって、広がりを感じさせてくれるものでした。素晴らしい、これも、即時再演希望。

大井、東響の演奏は渾身のもので実に素晴らしくて初演作品の意義を高めていた、もちろん、ソリストたちも。

おわり