2018年9月25日(火) 7:00pm 小ホール、武蔵野市民文化会館
ドビュッシー ベルガマスク組曲 第3曲 月の光 5
ドビュッシー 映像第2巻 4-5-4
シューマン 幻想曲ハ長調op.17 13-7-10
Int
ドビュッシー 前奏曲第2巻 第7曲 月の光が降り注ぐテラス 4
ドビュッシー 映像第1巻 5-6-3
ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第23番ヘ短調op.57 熱情 10-5+8
(encore)
山田耕筰(スティーヴン・ハフ編曲) 赤とんぼ 2
エリック・コーツ バイ・ザ・スリーピー・ラグーン 3
ピアノ、スティーヴン・ハフ
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映像を前半後半に置きそれぞれシューマン、熱情にカップリング。映像の前に洒落たピースを置く。
音楽を越えたオーソリティ、権威という雰囲気が漂う中、月の光から始まったリサイタル。ドビュッシーをこのようなタッチで因数分解するから、自然に積分されていく。時間の経過推移でそう感じるのではなくて、そういった出来事が響きの中に同時にあるように聴こえてくる。徐々にとか段々という言葉では表しにくい。
映像はいろんな音がパラパラとまじりあった時、美味な煮凝り風な束となり格別な味わい。水際立ったドビュッシーに続き、ガラリと曲趣を変えてまずはシューマン。
フォルムを感じさせたかと思う間もなくしだれ柳風に崩れていく。そういったものが交錯する毎に全体像が見えてくる。大人の演奏という趣きがあって、言いたいことはこのピアノから、といった雰囲気を醸し出す。圧巻のプレイでした。
思いの外、強靭なタッチで強烈なシューマンはその前の映像とコントラストが強い。濃淡込めた音楽に大きな幅を聴いた思い。
後半の映像第1巻はみずみずしいタッチ、鮮やかな色彩、情景が浮かぶようだ。とりわけ3曲目のムーヴメントはメカニカルな中にウェットなデリカシーを感じさせる余裕のプレイでした。スバラシイ。
次の熱情はシューマンに増して激しさに拍車がかかる。抜き差しならぬ激しい熱情。ハフの透徹した冷静な目がメラメラと燃え上がる激烈なプレイ。どでかいダイナミクス、振幅、太細、自在のタッチ。
初楽章の幾何学模様が極めて美しい。アンダンテのシンプルな連続和音は行書体から草書体へという際どさがスリリング。ハーモニーの運びと水際立ったリズム、そして、先に延ばして思考の森をかき分けるような独特な音価レングス、相手に考えさせる音楽は、聴衆というものを意識したものだろう。自然のカタルシスといったあたりのことを感じますね。言葉にならない終楽章は蛇腹のようなうねりが次から次へと、目がまわりそうだ。
表現の広がりも見事な熱情、濃い内容でした。
確立されたマイワールドは登場とともに感じるもので、集中力といった話というよりもむしろ、再創造の思索に入っていく趣きで、ステージは再創造の場、ピアノのプレイは思索、ハフの脳内の庭の広がりを見ることが出来ました。
おわり