2018年2月16日(金) 7:00pm サントリー
チャイコフスキー フランチェスカ・ダ・リミニ 24
ラフマニノフ パガニーニの主題による狂詩曲 24
ピアノ、ニコライ・ルガンスキー
(encore)
ラフマニノフ 前奏曲 Op.32-5 3
Int
ラヴェル クープランの墓 2-5-4-2
レスピーギ ローマの松 3-7-7-5
ユーリ・テミルカーノフ 指揮 読売日本交響楽団
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この御年になって自分の好きなものだけ振るというのはそれはそれでいいと思う。コクや味わいが聴き手と共有できてその思いは遂げられる。それは聴衆からの寄り添いの努力が一層求められるものかもしれない。年寄りの勝手の許容は若い時の実績次第と言ってしまえば身もふたもない話ではあるが、相手の心への作用、モーメントは不思議なものと思わずにはいられない。思わずもニューヨーク・フィルへデビュー(下記リンク参照)して以来、幾度となく聴いてきたテミルカーノフの芸風は定まっているようにみえて、その先に出来そうなことをいまだ保留しているようなところも感じる。可能性の未来を何か抑制しているような感がある。まあ、人それぞれ、聴くほうもそれぞれ、インディヴィデュアルなイマジネーション、妄想かもしれないけれども。
この日は読響との一発公演プロ。好きな作品を4つ並べたものと思う。2曲目にはルガンスキー、この前のチャイコン1に続いての登場。
フランチェスカ・ダ・リミニ、ひたすら下降する音形、地獄に向かうベクトルを表すには最良のものかもしれない。下降させながら音楽は相応な高みに昇りつかなければならない。指揮者の力量無くしてこの曲を聴かせることは出来ない見本のような作品。下降音形波状攻撃地獄メラメラ節。昔、メトでツァンドナイの同名オペラを観たことがあってあれは本物の火を使いまくってリアル感を出していた、あの演奏を思い出すようなテミルカーノフの振り、火がついたオーケストラはこのオケの重心の重さを生かしながらも表情に幅があり色あいの鮮やかさも魅せつけてくれました。ダイナミックレンジも申し分ない。一分の隙もない演奏はこの指揮者のコントロールによるところが大きい。巨大な作品を聴いたという実感。最後はわりと快走でしたね。
ルガンスキーの弾くパガ狂はとっても素敵でした。表現が多彩、変化に富んだピアノが面白くきまっていく。どんどん先に行く。気分もウェットからドライまで色々と変わる。透明なピアノ、オーケストラと張り合う力、どれもこれも素晴らしい。
第18変奏ピアノ入りまでの停滞感はテミルカーノフの技なのだろうか。ピアノは冴え渡ることになりはしたものの。
ルガンスキーのアンコールはサラリとした粋なプレイ、これも素敵でしたね。
ここまでロシア物2曲。後半はうって変わったもので、本当に好きなものを選んでやっているなあと、これあらためて実感する。
小編成になった読響のラヴェルは空中浮遊、色彩感もよく出ていて味なもの。愛すべき佳作ですよとテミルカーノフの両腕。
最後のローマの松、シックな色あい、アッピア街道に出る前までがビューティフルな演奏、ラヴェルの余韻を感じさせてくれたのは指揮者の趣味が表に出てきたのかもしれない。
おわり
0127 昔、テミルカーノフはニューヨーク・フィルにデビューした -1-
0128 昔、テミルカーノフはニューヨーク・フィルにデビューした -2-
0129 昔、テミルカーノフはニューヨーク・フィルにデビューした -3-
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