2018年1月13日(土) 6:00pm サントリー
ブリテン ピーター・グライムズより、4つの海の間奏曲 4-4-4-5
ヴィトマン クラリネット協奏曲 エコー=フラグメンテ (jp) 19
クラリネット、イェルク・ヴィトマン
Int
ブルックナー:交響曲 第6番 イ長調 op.106 15-15-8-15
シルヴァン・カンブルラン 指揮 読売日本交響楽団
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音楽のスタイルが自然に厳格さを感じさせるものとなっていて、換言すると、それはカンブルランのスタイルは必ずしも厳格さを求めるものではないのに、出てきた音は厳格な作りの様相を呈した演奏に聴こえてくる。はまり過ぎているともいえるが、その微妙なすれ違いみたいなものが、風の入り込む隙間となっている。
開始楽章と終楽章それにアダージョ楽章もソナタで、その演奏は平均台が3個、3列平行に並びその台も延長線上の線もまじわることの無いもの、ブルックナーの演奏スタイルとしては動かぬ型、それを表現してくれたカンブルラン。彼が意図したものかわからぬがこの型は動かない。ブルックナーの方針としては一つの方向性を示してくれている。
ソナタ楽章三つとも第1,2主題は中庸な流れ、第3主題でアクセルをいれるやり方で、展開部でのブレンドは第1,2主題の絡みが多いから、3主題というよりも1と2に対比する3といった趣き。このバランス感覚はこの指揮者独特のものだと思う。第1主題の蹴るようなこの曲独特のカタルシス的推進力はあまり出て来ない。第3主題は遠いですね。それにアダージョ楽章にクライマックスは見えずの作品、そういったこともあって、主題陳列のバランスがツボ。ソナタ三つともタイミングは15分。おそろしいと言えばおそろしい。
蹴り上げるようなチリチリしたヒート感が欲しい。動かぬものとして表現したわけではないと思うが、それであれば静の推進力みたいな時間の推移によって音層が心理的に積み重なっていくようなブルックナー独特の力学にカタルシスを求めても良かった気がする。まぁ、彼の方針ではないと思うが。
読響はブルックナーの響きを手に入れていると思うので、そういった意味での説得力は絶大。ブルックナー演奏に慣れていて、その分、指揮者の意図するところを深く理解表現できるオケ。自然にさまになる。
カンブルランは7番の終楽章が現音風な大胆な響きを作るのに向いている気がする。この楽章は短すぎて作品全体から見ると構成がアンバランスな楽章ではあるのだが、そこにうまみ成分を盛り込むと、たぶん面白い。
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前半の1曲目がPG4インタールード。4ピースともにダイナミックなもので、4曲目の嵐より前に既に激しさがある。オペラで観たらカンブルランの棒はきっと面白いものになるだろうね。
2曲目は日本初演の作品。
モダンピッチとバロックピッチのグループが左右対するフォーメーション。音高の位相の差異が過去から今へのエコーのフラグメントなのだろうか。出てくる楽器も色々と多彩。殊更なぶつかり合いは無くてむしろ融和プレイ。きしんでいく音は無い。唯一、ナチュラルホルンがしなるように咆える個所が散見。ソロクラの主張はそれほど濃くない。総じて、個別の線がそれぞれ繊細に主張。今風な細いアンサンブル音楽。
何にどうインスパイアされた作品なのだろう。それともそんなこととは全く関係ない世界なのか。カラフルな音色は近くにあるように思えるが音楽は遠のいていくように見える。
クラつながりで、ブーレーズのドメイン(ドメーヌ)は昔見たことがります。
動き回るドラッカー ホライゾン-11- 1984.6.6
おわり