河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

2487- シベリウスVC、アレクサンドラ・スム、ブルックナー7番、小林研一郎、日フィル、2018.1.26

2018-01-26 23:46:57 | コンサート

2018年1月26日(金) 7:00-9:25pm サントリー

シベリウス ヴァイオリン協奏曲ニ短調  17-9+8
ヴァイオリン、アレクサンドラ・スム
(encore)
バッハ 無伴奏ソナタ第2番より アンダンテ  3

Int

ブルックナー 交響曲第7番ホ長調  21-23-9-14

小林研一郎 指揮 日本フィルハーモニー交響楽団

AB7
Ⅰ 2-3-2 6 2-2-1 3
Ⅱ 5-3-5-2-8 ABABA
Ⅲ 3-3-3
Ⅳ 2-2-1 2 1-2-2(3→2→1) 2

スタティックで動かずぶれずブルックナーの3主題ソナタが見事にバランスした最高峰の演奏。巨大な建築物が微動だにせず屹立しているその全体像は強固、美しい全体像に惚れ惚れする、圧倒的な内容で摩天楼のような演奏。ドローンで上からこの作品を一気に見たような気持ちとなる。
小林の作る造形は悠揚迫らず作品の最高の姿を魅せてくれる。確信が核心に向かう自身を見つめる冷静な眼がもうひとつ別のところにある。極みの棒だ。最高建築を極めた棒技に身動きもできぬほどに感動した。素晴らしい。快演。

アゴーギクを徹底的に排した演奏、アチェルランドは皆無、リタルダンドは一か所のみ。第1楽章提示部第3主題に突入する前のところ、あすこはグッと引いたがあとは動かず。
アジタートするのは聴いているこちらのみ、といった様相で、足場を固く固定して決して揺らぐことの無い造形物件、絶対に壊れないスカイスクレイパー、それを仰ぎ見る。パーフェクトな演奏。これでダイナミクスのレンジ幅がさらに拡張していたならば途方もない演奏になっていたこどだろう。想像するのはいいことですね、夢があって。
それから両端楽章のコーダ、極度に抑えスローモーションと化したインテンポの、なんというか、不沈モード、声にならない圧倒的な重厚感。巨大なねじがゆっくりと回っているようでもあり、霧の中で走るユニコーンを見ているような錯覚に陥っていくようでもある。夢ですね。


スコアを閉じて置いたまま、棒を持った右腕が雄弁に動く。右手だけで全ての指示が出来るのだよと言っているようだ。オーケストラとの一体感が素晴らしい。指揮者の意を汲み最後までついていったプレイヤーたちの緊張感がひしひしと迫ってくる。

第1楽章、原始霧から始まった演奏。濃い。味わい深か過ぎてゆっくりと食べ尽す。第2主題もタップリ、第3主題の律動に至る今日の演奏唯一のリタルダンドはまさに、突入への準備みたいなものを感じる。ふと、2016年はたくさん7番ありまして分けてもメータ、ウィーンフィルの方針とここは何故か同じ。思い出し。
終楽章と異なりこの楽章の展開部は提示部、再現部と同等な長さであって内容も深い。存分に食べ尽すブルックナー模様、ここもいいですなあ。
再現部まであっという間、もう一度味わい、その後のコーダが、湯気が出るような演奏でじっくりじっくりスチーム、蒸せば蒸すほど味が出るのかこの極遅インテンポ、小林の術中にはまってしまいました。素晴らしいエンディング。それに抜けた後の残響が美しい。もう、充実の日フィルサウンドに驚嘆。それに快感。音を聴く喜び、しびれた。

第2楽章はABABAで、主題Bが殊の外サラリとしている。速めのインテンポでぶ厚い弦が美しく響く。暗くて重いA主題との対比が見事にきまる。この主題で築くクライマックスではあるのだが、Bの滑らかで優しくたっぷりとしたフレージングの妙。これあってのクライマックス。これまでのモードを保ったまま咆哮するブラスセクションはまことに音楽的で弦との一体感に溢れ、オーケストラアンサンブルの極意を見ているようだ。素晴らしい。
そして退けてワーグナー葬送、ここまでの推移は全く自然なもので彫琢の美を感じる。いい演奏が続きますな。

スケルツォはラッパの充実した響きが心地よい。弦がやや硬めの日フィルといった感じでかなりの強弾きで、みなさんパンパントゥッティ。小林の右腕振りと決めの両腕開きの具合もいい。1,2楽章モードの流れが続いているスケルツォ、トリオ、音楽の余裕を感じさせてくれる。

フィナーレ楽章は展開部が2分足らずで第1楽章のような練り具合が無いので、ソナタシンフォニーとしてはバランスがあまり良くない楽章なれど、それを補って余りある巨大なスローモーションコーダが見事な造形感をバランスさせた全体像は不動の構築物件。1,2楽章に比する大きさを見せてくれた小林の解釈はもの凄いの一語。
それにブラスを主体にした圧巻の音響美。第1楽章からよく歌うクラはじめとするウィンドの流れがここでも寄り添う。弦を含めやや明るめに転じた終楽章。スローモーションの中、第1楽章コーダと同じような美しい音を残してフィニッシュ。
ブルックナー7番最高峰の演奏。心ゆくまで堪能しました。

喜寿掛けの7番だったようですけれども、関係ない。8番も9番もいつでもやって欲しいわ。

前半はこれまた好物のシベコン。
小林の振りは譜面を見つつもややぎこちない。この曲を振り慣れていない感じ。真っ赤なドレスでちょっとシースルー風なところも魅せつつロングヘア美人のスムさんが柔らかい音で弾くシベリウス。時折畳みかけるようなところもあり十八番のようですね。
シベリウスの咆哮するオーケストラのうねりがもっとあれば、スムさんのノリも良くなっていたと思うところも散見。
シベリウスのヴァイオリンは満喫しました。大きな表現でした。


この日は横浜定期を振り替えたもので、明日が定期席。楽しみが続きます。
おわり




2486- ハイドン、軍隊、ロッシーニ、スターバト・マーテル、ジェイムズ・ジャッド、新日フィル、2018.1.26

2018-01-26 22:25:52 | コンサート

2018年1月26日(金) 2:00pm トリフォニー

ハイドン 交響曲第100番ト長調 軍隊  8-7-5-4

Int

ロッシーニ スターバト・マーテル  10-7-6-5-5-8-5-4-4-6
 ソプラノⅠ、高橋絵理
 ソプラノⅡ、谷口睦美
 テノール、宮里直樹
 バス、ジョン・ハオ
 合唱、栗友会合唱団

ジェイムズ・ジャッド 指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団


滔々と朗々と次から次に溢れるメロディー。ロッシーニ節満載の音楽を満喫。作品のタイトルの事は忘れてしまう。短調の導入部と、終曲でそれが回帰するあたりにロッシーニが曲をまとめようという意思は感じることは出来るものの、それらに挟まれた2曲目から9曲目までがあまりに美しい。
4ソロとコーラス、ともに音域がいいのかよくできている作品の様でみなさん歌いやすそう。のびのびと思いっきり声が出ていて聴いているほうも気持ちがいい。バスのハオは最近聴く機会が多い。安定のバスでこの日もいかにもベースになる声で4人のバランスが非常に良い。
大詰め8曲目のアリアでの合唱、それに9曲目の四重唱。歌に力感が有り充実した響きで圧巻でした。
字幕のない公演でプログラムにあるリブレットを見ながらでしたけれども、字幕が無くて不便という気も起らず集中できた内容でした。
ジャッドはツワモノヅラを見せない指揮者だけれども、アルチザン肌の一心不乱さが感じられる。プレイヤー、シンガーともに納得の演奏だ。
色印象としては全体がモスグリーン風。明るく流れる音楽の中に、ひとつのマザーボードがあるかのようだ。その広がりが前半ハイドンではどう鳴っていたのか、ロッシーニの素晴らしさにかき消されてしまったところもあるので、もう一度じっくりと聴きたいものです。
いい演奏会でした。
おわり