2016年3月15日(火) 7:00-8:05pm ミューザ川崎
テリー・ライリー トレッド・オン・ザ・トレイル 11′
マイケル・トーキー 7月 7′
エリオット・カーター カノン組曲 7′
ジョアン・タワー(サクソフォンカルテット版編曲(佐藤尚美)) 翼 11′
スティーヴ・ライヒ ニューヨーク・カウンターポイント 11′
演奏
サクソフォン、大石将紀、江川良子、富岡裕子、田中拓也
エレクトロニクス、有馬純寿
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このホールの企画もの、ラインチタイムコンサートが約40分、ナイトコンサートが約60分。このうちあまりにも興味深過ぎるプログラムの夜の部にお初でうかがいました。
1時間ロングで休憩無し、一律千円の自由席。スペシャルシートで聴きました。レアプログラム5曲、間に大石さんの説明が入ったりしますが、ほぼびっしりの演奏です。
1曲目のライリーのトレッド・オン・ザ・トレイルは大石さんが予め複数人数分録音していたものと生での演奏との組み合わせで。
あるワンフレーズが繰り返される。リズムの繰り返しとはちょっと違う。フレーズがミニマルの最小単位、この場合、パターン化された音型というのがこの単位なのかと思う。フレーズが進むにつれて重なりの度合いが増してきて、なにやら、揺れ動き、スウィングするような波、波形が出来上がる。ミニマル効果ですね。
大石さんの音はきれいで遠くまで響く。音の均質性もミニマルにはいいもので、正確性が折り重なりファジーになるような錯覚。あっという間に過ぎました。
トーキーの7月。これはサクソフォン4人でのプレイ。ソプラノサックス、アルト、テノール、バリトン、たぶんですけれど。
大石さんが高音域ソプラノのプレイです。4人とも、もの凄く速いパッセージがずーーっと続きます。息する間もありません。これは大変な作品。
いわゆるポストミニマリズムの作曲家トーキーの作品で、たしかにミニマルやジャジーな部分は、活用、利用という風に聴こえます。見事な消化と言えます。調性も感じます。
カーターのカノン組曲は3曲。4人ともアルトサクソフォンに持ち替えて、ステージを広く使います。結構な距離でみなさん散らばります。よくアンサンブルがとれるもんですね。このように距離を置く意味はよく分かりませんけれど、空いた空間にも音が張りつめられるようで、ゆるい空間はない。彼らの腕の見事さによるところも大いにあるかと思います。大きい空間を感じることができますね。
曲はカノンの追っかけていく感じがよく出ています。
タワーの翼はこれもアルト4人で、カーターのカノン組曲のときよりもっとみなさん離れます。ステージ奥の台まで使って、高さの違いもだします。真ん中手前に大石さん、右左は台にあがり、中央奥でもっと高い台上で。
センター手前の大石さんのピアニシモから始まり、盛り上がりを見せ、最後ピアニシモ終わる。この日の作品では一番クラシックに感じた。ちょっと言い方が変でした。一番、いわゆる現代音楽的にしっくりとする響きでした、でもそれは、既にクラシックなものとなっているという話です。
最後のとっておき、ライヒのニューヨーク・カウンターポイント。クラリネットではなくサクソフォンで。これも最初のライリー同様、予め収録しておいたものと生演奏を重ねていくもので、観る限りにおいては録音の方のウエイトが高そう。11個の録音でも成り立つかもしれないがその場合、演奏会行為なのかという疑問が残る。11人のサクソフォン奏者によるライブなら間違いなく演奏会ということだと思うが。
パルス、ピチカート風なパルスが空間を占める。徐々にずれて出てくるパルス。このパルス音と遠くから近くに向かう鼓動は、健康診断のときの聴覚検査の音によく似ている。遠くから近くに鳴るピピピサウンドですね。遠近感とズレ、この双方が音楽の振幅を大きく感じさせてくれる。それと、中間部のウエットな流れ。マンハッタンの雑踏の波というにはあまりに美しい大石さんの音、それにパルスのユニークさは、もっと洗練されたものを感じさせてくれた。満足。
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このような素晴らしい企画ものは誰にも教えたくないと言ったらアレですが、あまり騒がずほどほどの人数の聴衆で楽しみたい。それを実現してくれた。
楽しめました、満足です。
今回は完全に企画の勝利。また同種の企画をお願いしたいものです。アメリカものもっとたくさん聴きたいと思います。オーケストラ編成のアメリカものはだいたい雰囲気分かりますが、今回のようなコンパクトな編成の作品はやっぱりライブで聴くと色々なものが見えてきますね。
良かったと思います。
ありがとうございました。
おわり