本の紹介なんですが、
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史上最強のオペラ
THE TOUGHEST SHOW ON EARTH
ジョセフ・ヴォルピー著
JOSEPH VOLPE
佐藤真理子 翻訳監修
発行:インプレサリオ
発売:ぴあ
3333円
343ページ
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ヴォルピーさんというのは、1940年生まれで、
1964年にメトロポリタン・オペラハウスに見習大工として仕事をはじめ、
ルドルフ・ビング総支配人のもとなどで、大道具主任、技術部長を経て、
1990年に生え抜きのメトロポリタン・オペラハウス総支配人となる。
2005-2006シーズンを最後に引退。
ヴォルピーによる自身の歴史本である。
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71ページ目
「大道具の仕事場に戻る途中、ビングのオフィスの外でカルーソーの姿を見かけた。この偉大なテノール歌手に会釈をすると彼も頷いた。」
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エンリコ・カルーソーさんというのは
有名なテノール歌手である。
1873年生まれ、1921年没。
71ページ目に見かけたカルーソーは誰だったのだろうか?
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同じく71ページ目
「指揮者のカール・ベームはピットへ入って行った。
歌手のレオニー・ライサネクは王妃役、
ジェームス・キングは王様役、
ウォルター・ベリーは染物屋、
クリスタ・ルドウィッグは染物屋の妻役、・・・・」
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普通の音楽好きなら、こう書く。
「指揮者のカール・ベームはピットへ入って行った。
歌手のレオニー・リザネックは王妃役、
ジェームズ・キングは王様役、
ワルター・ベリーは染物屋、
クリスタ・ルードヴィッヒは染物屋の妻役、・・・・」
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1940年生まれのヴォルピーが1921年に亡くなったカルーソーを見かけることは一般的にはあり得ない。
訳が間違っているか、独特の言い回し、誰かのあだ名、などいろいろ考えられる。
ただ、カルーソーを見かけた話はほかのページにも出てくる。
また、そのあとの、歌手の日本語読みについてもかなり変。
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早い話が、音楽のことを知らない人が、訳している。
71ページ目は例であるが、他のページも基本的に惨憺たるものだ。
あまりひどいので、正しいところまで疑いたくなる。
まぁ、あらすじはあっているから、自分で訳す手間、原語で読む手間を考えると楽ではある。
3333円の価値があるかどうかは、再考の余地あり。
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内容的には読んでのお楽しみであるが、等身大の書きぶりには好感をもてる。また、年代なども正確。だから訳がますます問題だ。
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ちゃんと読みたい人は原語オリジナルを横に置くことを勧める。
BARNES & NOBLEで買うと25ドル95セント。
おわり
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