くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「名探偵に薔薇を」城平京

2014-10-09 03:33:21 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 平城京だと、思ってました。ごめんなさい。城平京「名探偵に薔薇を」(創元推理文庫)。研修の日の朝に購入。
 とにかく第二部まで読むようにと帯がうるさい。でも、期待を煽ります。弱いんですよね。どんでん返しとか、隠れた名作とかいう惹句。
 読みはじめて、かなりのグロテスクな表現にちょっとうんざりします。高速バスの待ち時間に読むには適した本じゃない。
 登場するのは、三橋という大学院生、彼が家庭教師をしている鈴花(中学生)とその家族、そして、「名探偵」瀬川みゆき。
 わたしのイメージでは三橋が野崎くんで、瀬川は結月でした。どのくらい「月刊少女野崎くん」に夢中なんだ……。
 まず「メルヘン小人地獄」(すごいネーミングでしょ?)というショートストーリーが、出版社等メディアに送られてきます。また、三橋は駅で鈴花の母親と立ち話をしているときに、見知らぬ男から「小人地獄」という言葉を聞く。そのとき、なんだかはっとしたような顔をしていた母親は、数日後猟奇的な死を迎えます。
 やがて、「小人地獄」に関わったある人物が、アパートの風呂で死体となって発見。
 「小人地獄」とは何か。
 十数年前にある博士が開発した毒。少量で、証拠を残さずに、人を殺す毒です。どうやら、材料として赤ん坊の脳が使われたらしい。殺された二人は、博士の娘と生産の助手をしていた男でした。さらに、殺害状況が「メルヘン小人地獄」に扱われる歌に酷似しているため、見立て殺人ではないかとメディアは騒ぎ立てます。
 歌には続きがあり、三人目の被害者について「フローラはむこう」というのです。りんごのように。
 フローラとは鈴花のことではないか。そう考えた三橋は、友人の瀬川に相談することにしますが……。
 これまでの「名探偵」と瀬川みゆきのキャラクターは随分違います。彼女は「名探偵」であることに強い負い目をもっている。でも、そうとしか生きられない。
 読み終わると、第二部のアイデアが先にあって、その伏線として第一部が書かれたのだろうという気はします。瀬川がおかれた混沌とした状況も、鈴花の言動もラストではっきりする。
 でも、「題名はこれしかないと読後に確信!」というようなことが帯に書かれているんですが、わたしには納得できないというか……。
 ただ、秘密を暴かれた鈴花は、やっぱり「むかれた」のだな、とは思いました。