くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「せきれい荘のタマル」越谷オサム

2013-07-14 16:33:53 | 文芸・エンターテイメント
 例によってスカイエマさんフェア。もう1カ月も前に借りてきたのに、なかなか読まないままでした。
 でも、読みはじめたら結構あっという間で、タマルのお節介ぶりに周囲がどんどん影響されていくのがおもしろいのです。
 「せきれい荘のタマル」(小学館)。
 この夏、静岡に旅行する予定なんで、主人公の石黒がそちら出身ときき、なんとなく親近感。彼は上京したアパートで田丸大介という先輩と知り合います。サークルも映画研究会で一緒。
 石黒は同郷の友人珠美に片思いをしているため、同じサークルに入ったんですが、彼女が所属する撮影班と、石黒が選んだ鑑賞班は違うサークルのような扱い。なぜかタマルだけが掛け持ちでやっていますが、みんな副部長の山縣さんに遠慮しているようなんです。
 ある日、石黒は部長の三輪から、サークル費が足りないからなんとかタマルから出してもらうことはできないかと頼まれます。タマルは、新潟の造り酒屋の息子なんです。同じころ、珠美からはタマルから毎日寮にプレゼントが送られてきて閉口していると聞かされ、気が気ではありません。
 タマルと付き合ううちに、石黒はうさんくさいバーベキューに誘われてしまいます。これは山縣さんが平行して所属するサークルらしいのですが……。
 宗教団体なんですよね。主宰の大河内という男が、すんげぇ怪しい。
 意外と博識な珠美から、ホット・リーディングの話をされたり。(珠美は古いビデオカメラについても、詳しい)
 後半でレインコートの一団が現れるところはぞっとします。山縣さんに鈴木さんがついていてくれるのは、いいニュースですよね。でも、石黒の目にほとんど入っていなかった状況が、意図的なのかどうか。
 わたしは北さんが好きだな。彼女だけに話したタマルの家庭の事情、ぐっときます。押し入れの黄色いカラーボックスって、何が入っているのかな。

「身をつくし」田牧大和

2013-07-12 21:56:47 | 時代小説
 最近文庫化したんですよね。あらすじを読んでおもしろそうだったので図書館で借りました。田牧大和「身をつくし 清四郎よろづ屋始末」(講談社)。
 よろづ屋とは、失せもの、人探し、揉めごとの仲裁など、便利屋さんのような仕事ですね。請け負った品を預かって売ることもあるそうです。
 「おふみの簪」も、そんなふうにして預かった錺師平次の簪をめぐる物語。相模屋から簪を作ってほしいといわれ、これまでに何本も作っているのにどうも気に入ってもらえない。凝った細工の自信のある品も納得してもらえずにがっかりする平次。実は平次にも相模屋にも、簪には秘めた思いがあったのです。
 清四郎は今でこそ町人の暮らしをしていますが、もともとは武家で、職を辞した過去がありました。その当時からの友木暮や地元の同心松田、煮炊き屋のお染といった人物も魅力的です。
 「正直与兵衛」は、茶店で荷物が入れ替わったことから始まる物語です。包みを開けると大金が入っていて仰天した与兵衛。それよりも、女房が買ってくれた煙草入れがなくなったことの方が衝撃を受けたらしい姿を見てほのぼのとした気持ちになる清四郎なのでした。
 もう一本「お染観音」という話が入っています。だんだんと清四郎の悔恨が明らかになっていく構成がおもしろい。田牧さん、連作短編が合うかも。いっそ、捕物帖を読みたいとも感じました。
 お染の作る惣菜がそりゃあおいしそうなので、わたしも心引かれます。「こんにゃく玉」というのは、山形あたりでよく見る「玉こんにゃくの醤油煮」のことでしょうか。わたしが小学生のころ、売っていたおじさんから聞いた話では、醤油とするめを入れて煮つけるのだそうですよ。
 悩んでいる清四郎に対して、同僚だった男たちや木暮がどう接したかという描写が印象的でした。

「でーれーガールズ」原田マハ

2013-07-11 04:42:15 | 文芸・エンターテイメント
 なかったことにできればいい。そんなふうに思うことは、きっと誰にもあるよ。生きてれば。
 でも、そうはいかないんだよ、あゆ。なかったことには、できない。それが、生きてるってことなんだから。
 ヒデホくんの言葉、胸を打ちます。でも、ラストはわたしにとってちょっと残念な感じがしました。なぜそういう結末? 鮎子のまんがのエンディングも、なんとなく違和感があります。メタフィクションっぽい。
 原田マハ「でーれーガールズ」(祥伝社)。初めて読む作家さんです。昨年の感想画課題図書のリストを見た同僚から「この人の作品おもしろいよ」と言われてはいたんですが。むしろわたしとしては、原田宗典さんの妹さんと聞いて納得、という感じ。この作品にも岡山大学に通う兄が登場しますが、勝手に原田さん(どっちも原田さんですね、ここでは宗典さん)の印象で読んでいました。
 わたし、かれこれ二十年近く前に、「スバラ式」をはじめとするエッセイを読んで感銘し
、その頃の著作はほとんど読んだんです。イラストレーターの原くんとか……。最近だと「お前は世界の王様か!」を読もうとしたけど、久しぶりすぎて合いませんでした。
 スカイエマさんの個人的なフェア実施中ですんで、借りてきました。表紙は文中の思い出の舞台、岡山の鶴見橋です。
 鮎子は、この橋の上で高校時代の友人武美と様々なことを語り合いました。中でも、当時付き合った「ヒデホくん」のこと。神戸大学に通う彼は、ナナハンに乗り革ジャンを着こなし、若き日の草刈正雄のようなんですって。
 で、この彼、鮎子の想像上の人物なんです。現在は売れっ子の小日向アユコとして活躍する彼女のもとに母校から講演をしてほしいと依頼がくる。父の仕事の関係でその間だけ岡山で過ごしたため、ずっとその地を訪れなかった鮎子は、途中で広島に転校した同級生の武美に再会するのを心待ちします。
 かつての同級生たちは皆おばさんになっている。そこに同席した母校の教員萩原一子は、なんと武美なのでした。
 結婚後の苗字と合わないから普段は通称として「一子」を使っているという武美。いやいや、でも誰もそう呼んでいないじゃないですか、と最後までそれが気になるわたし。義親も武美って呼んでますよ。
 武美はこの講演会の発起人で、なんとしても成功させたいと無理をしたようです。みんながその気持ちを汲んでくれるんですが、えーと、このラストみたいな講演でいいの? それとも気を取り直してちゃんと話したんでしょうか。一応原稿もあることだし。
 ここの生徒たちにとっては、武美は「一子」なんでしょうか。そして、彼女たちは鮎子の口から本来ならこの会を取り仕切っているはずの先生がなぜいないのか知らされるのでしょうか。
 それはあんまりだと思うんだけどなぁ。

「ドーリィ・カノン」やぶうち優

2013-07-10 05:14:03 | コミック
 うちの娘、ちゃおを愛読していまして、本棚はそのまんがだらけです。わたしが小学生のときは、りぼん派だったんだけどなー。なかよしを買っていた友達と交換して読んでいました。ちゃおも一時期買ったけど、やっぱり主流からは外れていたような。当時のまんがだと、「名探偵江戸川乱子」(蘭子?)とか上原きみこさんの「あいつの四季」とかを覚えています。(りぼんは太刀掛秀子、萩岩睦美、荒井裕子が好きでした)
 わたしがちょっと読んでみたのは、まず「俺様キングダム」なんですけど……。いくら読んでも、タイトルの意味が分からない。誰が「俺様」なの? 主人公のののですか?
 あとは「真代家コンプレックス」。一巻がなかなか見つからず、次巻から読んだらはじめの方の話に違和感が。五月と紺の双子はかっこいいんですけどね。
 でも、本誌で続きを読むかと思うと、紙質がよくなくてつらい。
 そんななか、つい気になって、一気に6ヶ月分読んでしまったのが「ドーリィ・カノン」なんです。
 娘が付録のDVDを見ていたんですよ。買って一週間ならないのに何回再生したのやら、挿入歌が完璧に歌えている。
 カラオケで女性歌手の曲を熱唱し、百点取ったのを写メに保存したことを同級生に目撃された少年が、その子のいうことをなんでも聞くと言ってしまう。彼女はカラオケビルのお嬢さんで、もともと彼に片思いをしていたため、嬉しくて女装させてしまう、という筋だけ書くとものすごいんですが、なんか吸引力が。
 この女の子が主人公の心音です。ネットにアップされた彼の歌声と映像、心音の作曲の能力で一躍有名になります。同じ年のアイドルと親しくなりますが……。
 いやいや、かっとんでるなぁ。このアイドルの女の子がよこすメールが「これゎ」みたいな書き方で不満なんですけど、これから先どうなるのか毎号読んでしまいそう。
 しかし、彼らは中学生なんですよね。普段中学生の中にいるわたしからみると、この価値観は妙な感じです。
 ただ、ちゃおの読者対象は小学生なんですよね。「12歳」というまんがは六年生なのにクラスの男の子と付き合ったり横恋慕されたりしていてびっくり。
 「俺様キングダム」も高校生なのにあちこち泊まりに行ったり自由すぎて驚きましたが。
 世の中恋愛は低年齢化しているんですかね。中学生の行動を見ていると、年々生活体験が少なくなっているように感じるんです。ナイフで皮がむけないとか、アイロンをかけるのに台を使わずにテーブルクロスを焦がしてしまったとか、マッチが擦れないとか。
 そうだ、「ラヴァーズ・キス」(吉田秋生)を買ったんです。高校生でも、全く違いますよね。「海街diary」の風太も登場してました。すずとの関わりを考えると、智章と四つくらいしか違わないとは思えない。掲載雑誌の特性の違いでしょうか。

「生協の白石さん 学びと成長」白石昌則

2013-07-09 21:09:07 | 総記・図書館学
 昨年出版された「生協の白石さん 学びと成長」(ポプラ社)を借りてきました。同じ時期に出たものよりもおもしろいと思います。(なんてタイトルだったか忘れましたが、レビューには書いたはずです)
 同じようにツイッターからの質問も入っているのに、こちらの方が読みやすい。本のつくりが違うんですかね。「ひとことカード」の方式が、以前の雰囲気に似ているように思います。
 白石さんは東京インターカレッジコープ渋谷店店長なんですって。四十代前半なのにすごい。やっぱり一躍時の人だったからでしょうか。
 インターカレッジコープは、なんと宮城県にもあるんだそうです。母校では卒業後に生協がオープンしたので、わたしは買ったことがありません。最近は研修で、某国立大学を訪れ、生協オリジナルのお茶(こーちゃんとか)をよく買っていました。
 今回の解答で好きなのはこういうのです。
 自分の名前がごつごつして嫌だという女子に、「名前が、その方の雰囲気を演出することもありますね。たとえば戦国武将の伊達政宗は、なるほどいかつい名前です。が、先頭にクルムをちょい足しすることで幾分まろやかになります。(以下略)」
 どうしても今日が金曜日のような気がしてしまう。そんな方には「同じようによくこのような錯覚をしてしまう私はこの現象を『フライング・フライデー』と呼んでいます。略してフラ・フラ」
 二十歳を過ぎたのに、なかなか大人になったような気がしません。「卒業、就職を経てやがては結婚へと、これから本人の意識や取り巻く環境が変化していきます。それぞれの場面で責任を持って行動すれば、立派な大人ですよ。本当に、いつの間にかなんですよ」
 立派です、白石さん。今月末の研修で、またこーちゃん買いますね。


「チャーシューの月」村中李衣

2013-07-08 05:06:13 | YA・児童書
 児童養護施設で暮らす子どもたちの姿を、中学一年生の美香の視点で描いています。今年の課題図書なので、とりあえず優先して読みました。でも、もう十日くらい経っているのに感想が書けませんでした。
 美香は冒頭で、「ギャルフィクション」とか「プチレディ」という雑誌の名前をあげ、これまでは友達から借りてコピーをとったのを切り抜いていたと語っています。このあとダルマ園長から「アイドル雑誌の購入希望がそう簡単にとおると思うなよ」と言われているんですが、これがまず引っかかってしまう。
 アイドル雑誌、というからには芸能ものなんでしょうか。そのわりには誌名がアンバランスなので、ティーンズ雑誌なのかと思い、てっきりファッション記事でも切りたいのかなと思ったら、よくみると「ギャルフィクション」です。ファッションじゃないんだ?
 まぁどうでもいいんです。でも、その割には美香がそういうことにこれっぽっちも興味があるようには感じられない、というのがわたしとしては謎なんです。
 美香は、全体を通してみると結構冷めた女の子です。同じ部屋のゆかのことは配下のように扱うし、クラスの友達の話題なんてその後出てくるわけでもない。そんなクールな美香が、新入りの明希と出会うことによって変化していく。明希の悲しみを取り除くことで自分の抱えていた苦しみからも救われる、という物語なんだと思うんです。この出だしは必要なのかな?
 明希の住んでいた家も、自転車で行けるくらいの距離なんですよね。なんとなく養護施設ってちょっと遠いところにあるように感じていました。明希はこれまで幼稚園にも行ってなくて、ラーメン屋なんて施設に送られるときに父親と入ったのが初めて。チャーシューを見て「外のお月さまが浮かんでる」といったのだそうです。
 だから、タイトルは「チャーシューの月」(小峰書店)。明希がものを記憶するとき、写真のように映像で焼き付けてしまうことが、このあたりからも感じられます。
 後半で明希を置いて出ていった母親が登場します。明希がおばあちゃんから言われた言葉から判断するに、新しい男についていっちゃったんでしょうね。
 うーん、わたしが気になるのは、施設の先生方との関係かな。及川先生のエビフライ事件とか……。ダルマ園長に対する美香の台詞も。内面で慕ってはいるんだろうけど、なんとなく信頼が薄いというか。
 近々夏休みの課題について話をするんですが、どう伝えるか少し悩んでしまいます。
 

「聴き屋の芸術学部祭」市井豊

2013-07-07 13:47:30 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 久しぶりに一日家にいます。このところ授業参観だの部活だの法事だのちょっと忙しくしていました。夜はお囃子練習だし。
 これは、スカイエマさんのブログで興味をもった本です。市井豊「聴き屋の芸術学部祭」(東京創元社)。
 ロジックと仲間うちの楽しさが魅力ですね。特におもしろかったのは、「からくりツィスカの余命」。
 主人公柏木の一人称で物語は進みます。柏木はいろんな人から話を聞いてしまう体質で、学部祭では「聴き屋」の看板を出すと人が集まってくるためにサークル部誌も売れてしまうほど。彼は芸術学部文芸学科の学生なんですが、周囲には個性的な友人がたくさんいて、ずっとマイナーなことばかり繰り返して語る「先輩」や女装が得意な作家の川瀬、BL好きの梅ちゃん。サークルは「ザ・フール」というんですが、雑多な趣味の人ばかり。
 演劇部の月子さんが登場するのが、先述の「からくりツィスカ」なんです。次の舞台で演じるシナリオが途中で切れているのでエンディングを考えてほしいと言われます。月子さんが演じるのがツィスカ。一緒に暮らす魔女の力が衰えて、人形に命を吹き込むことができなくなります。からくりツィスカの命がもつうちに、なんとかしなければならない。街の塔にいる姫巫女を訪ねることに。
 街でツィスカはある少年と知り合い、今まで考えてこなかったことを突きつけられるのですが、そこに隣国が攻めてくると情報が入ります。これまで姫巫女が人形兵を動かして対抗できるために大きな戦はなかったのですが……。
 函物語になっていて、エンディングが意表をついてくれました。
 なーるーほーどーねー!
 小説と舞台原作の違いなんて、これまで考えたことなかったです。
 そういう価値観の転換みたいなのも読書の醍醐味ですよね。
 で、なんだかずっと昔の学生のころの雰囲気を思い出しました。いや、わたしは女子大なんで柏木くんみたいな同級生はいないんですが。
 

「図書室のキリギリス」竹内真

2013-07-06 20:57:39 | 文芸・エンターテイメント
 装丁もいいし、モチーフがわたし好み。でも、読んだことがない作者さんなのでちょっとためらいました。「自転車冒険記」結構生徒に人気があったのでトライしようと買ってから、ごめんなさい、トランクに入れたまま忘れていました。
 思い出したのは、「たまさか人形堂それから」のカバーイラストも中島梨絵さんだったから。
 すっごくおもしろかったんですよ。竹内真「図書室のキリギリス」(双葉社)。
 もと出版社勤務でちょっとだけサイコメトリの能力がある詩織。夫が失踪して三年、籍を抜いて旧姓に戻り、職探しをしようとしていたところに友人のつぐみから連絡がきます。自分の勤める高校で司書を探している。面接だけでも受けてみたら?
 「アリとキリギリス」にたとえるならどう考えても後者の詩織ですが、だんだんと図書室に居場所を作っていきます。
 そうなると気になるのは前任の司書さん。丁寧な引き継ぎ書を作ってくれたり、常連の子との関係や図書室の使い勝手のよさを考えたりするときに、ふと会ってみたいような気持ちになります。司書教諭からは「ティンカー・ベル」を思い出させると聞く永田さん。しかし、何故突然辞めたのか、現在どこにいるのか不明なんです。
 詩織は永田さんの手がかりを探そうとしますが……。
 高校生たちも輝いています。演劇部長の初くんとか常連の楓ちゃんとか。やっぱり大隈くんが印象的ですかね。星野道夫の写真と巡り会って、読書の魅力を知ります。そして、影響を受けて夏休みに一人旅をする。
 彼らが読書会を開く場面が本当に楽しくて、わたしもメンバーに入れてほしいよぅ。「旅をする木」も「マボロシの鳥」も読んでないけどさ。
 リテラチャー・サークルという方式で話し合いをしていくそうです。絵を描く、連想する、質問する、好きなフレーズをあげる。それぞれ役割を決めておいて、自分のやってきたことを話しながら他の人にも意見を語ってもらい、イラストをコラージュするかたちで展示するんですって。
 文化祭の愛読書キャッチコピーもおもしろそうです。楓ちゃんが持っているしおりもいいんですよね。永田さんがおしばを作ってくれたとか。
 その影響か本日グラウンドにて四つ葉のクローバーを3つ発見。それから、しおりをつくろうかと綺麗な端紙を買ってきました。しばらく四つ葉探しに熱中するかもしれません。

「□緒(ひしょ)の鳥」小野不由美

2013-07-04 21:44:48 | ファンタジー
 「不」の下に「一」が入って(「胚」の右側ですね)いるんですが、わたしのスマートフォンでは出てきません。「□緒の鳥」(新潮文庫)、「十二国記」、十二年ぶりの新刊です。ネットで発売を知り、慌てて買いに走りました。いやー、嬉しい。待っていたかいがあるというものです。
 短編が四作入っています。うち二編は書き下ろし。結構働くベテラン男性の物語だったので、月日の流れのようなものを感じます。
 「十二国記」の本編は、どちらかといえば若者の物語ですよね。慶王中嶋陽子にしても泰麒にしても高校生だったし。今回は、「風信」の視点がうら若き蓮花という娘ではありますが、小野さんがスポットをあてているのは戦乱の世の中でも暦を作る仕事を全うしようとする男たち。
 新王即位のために鳥に仕立てた的を射落とす儀式を行うことになった陶工。様々な苦悩から仕事に意義を見いだせなくなった彼が立ち直るアイデアが、非常に美麗です。この新王というのは陽子のことなんですが、儀式のことで礼をいう真摯さがよかった。
 さらに、「風信」も陽子が即位する前後の物語なんですって。愛読者はすごいですね。なにしろ読んだのが八年も前なので、わたしは細かいことはすっかり忘れています。女を国から追い出そうとした女王、ということで慶だとすぐにわかるんだそうです。
 さらには、「玄英宮」という言葉から「青条の蘭」が雁国だとわかるそうなんです。うー、わたしもその隣ページの「柳へ向かう国境」からそうかな、とは思ったんですが、この国が尚隆の国だってことは抜け落ちていました。皆さんアニメも見ていらしたのでしょうか。わたしが鈍いだけ? 
 それから、柳国の法曹と死刑の是非について書かれた「落照の獄」。なかなか読み切れませんが、死刑執行に関わるドキュメンタリーを読んでいたので(時間がなくて休止しています……)、なんだか考えさせられます。
 極悪非道の男。死をもって償わせるしかないのか。途中で官たちがディベートみたいな役割分担をしているのも興味深いと思います。
 正直をいえば、本編の大きな流れを解決してほしいという思いはあります。でも、やっぱり生きている人たち、意義のために働く人たち、のことを描く作品もこのシリーズには必要なのかな、と思いました。
 早く決着をつけてほしいとも思うし、もっとたくさん読みたいという気持ちもあります。
 長編の刊行が楽しみです。

「たまさか人形堂それから」津原泰水

2013-07-02 21:33:12 | 文芸・エンターテイメント
 続編です! でもこの続きもありそうですよね。津原泰水「たまさか人形堂それから」(文藝春秋)。
 冨永くんが新作のぬいぐるみを作ります。「八っつぁん」というタコのぬいぐるみ。これが縁となって澪さんはデートに誘われ、好きな作家さんに紹介してもらえます。彼からはマリオネットの修理を依頼されて、師村さんが直してくれる。
 そんな毎日の中にも様々な事件はあって、髪の毛が伸びる市松人形が運び込まれたり、しかもそれが玉坂人形堂で作られたものだったり、師村さん因縁の小田巻姫が発見されたり。
 わたしとしては束前さんが関わる「香山リカ」改め「佐藤リカ」さんのその後が気になります。すぐ飽きちゃうと言っていたし、束前さん自身も閉口していましたが。
 芸術的なマネキン人形と、ボルトで作ったギタリストの人形にショックを受けた冨永くんには早くスランプから抜け出してほしい。
 わたしも「八っつぁん」のぬいぐるみを頭に載せて写真を撮ってみたい! テディベアと対だから「熊さん八っつぁん」というセンスはたまらないですね。
 わたし自身はぬいぐるみにあんまり興味はありません。どちらかというと創作日本人形の方が好みです。初任のときに教え子のおばあちゃんにいただいた紙人形、大切にしています。
 そういえばリカちゃん人形は買ってもらえませんでしたね。わたしが持っていたのは「アグネス先生」でした。大人になってから「リカちゃんキャッスル」には何度か行きましたが。
 どうにもとりとめのない感想になってしまいました。読んでから少し時間を置いてしまうと、細部を忘れてしまうようです。記憶力が劣化している。
 そして、現在地区のお祭り準備に駆り出されて、本を読む時間が約90分削られています。「十二国記」の新刊読む時間がないよっ。ついでに歯が痛い(でも多分虫歯ではないのです。ストレスだろうか)。
 わたしもピロシキ食べたいな。揚げたものと焼いたものがあるとか。わたしは揚げたのしか食べたことありません。歯が痛くても作中の食べものはおいしそうなんです。
 ところでこのシリーズの登場人物、独身率が高いですよね?