くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「聴き屋の芸術学部祭」市井豊

2013-07-07 13:47:30 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 久しぶりに一日家にいます。このところ授業参観だの部活だの法事だのちょっと忙しくしていました。夜はお囃子練習だし。
 これは、スカイエマさんのブログで興味をもった本です。市井豊「聴き屋の芸術学部祭」(東京創元社)。
 ロジックと仲間うちの楽しさが魅力ですね。特におもしろかったのは、「からくりツィスカの余命」。
 主人公柏木の一人称で物語は進みます。柏木はいろんな人から話を聞いてしまう体質で、学部祭では「聴き屋」の看板を出すと人が集まってくるためにサークル部誌も売れてしまうほど。彼は芸術学部文芸学科の学生なんですが、周囲には個性的な友人がたくさんいて、ずっとマイナーなことばかり繰り返して語る「先輩」や女装が得意な作家の川瀬、BL好きの梅ちゃん。サークルは「ザ・フール」というんですが、雑多な趣味の人ばかり。
 演劇部の月子さんが登場するのが、先述の「からくりツィスカ」なんです。次の舞台で演じるシナリオが途中で切れているのでエンディングを考えてほしいと言われます。月子さんが演じるのがツィスカ。一緒に暮らす魔女の力が衰えて、人形に命を吹き込むことができなくなります。からくりツィスカの命がもつうちに、なんとかしなければならない。街の塔にいる姫巫女を訪ねることに。
 街でツィスカはある少年と知り合い、今まで考えてこなかったことを突きつけられるのですが、そこに隣国が攻めてくると情報が入ります。これまで姫巫女が人形兵を動かして対抗できるために大きな戦はなかったのですが……。
 函物語になっていて、エンディングが意表をついてくれました。
 なーるーほーどーねー!
 小説と舞台原作の違いなんて、これまで考えたことなかったです。
 そういう価値観の転換みたいなのも読書の醍醐味ですよね。
 で、なんだかずっと昔の学生のころの雰囲気を思い出しました。いや、わたしは女子大なんで柏木くんみたいな同級生はいないんですが。