くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「でーれーガールズ」原田マハ

2013-07-11 04:42:15 | 文芸・エンターテイメント
 なかったことにできればいい。そんなふうに思うことは、きっと誰にもあるよ。生きてれば。
 でも、そうはいかないんだよ、あゆ。なかったことには、できない。それが、生きてるってことなんだから。
 ヒデホくんの言葉、胸を打ちます。でも、ラストはわたしにとってちょっと残念な感じがしました。なぜそういう結末? 鮎子のまんがのエンディングも、なんとなく違和感があります。メタフィクションっぽい。
 原田マハ「でーれーガールズ」(祥伝社)。初めて読む作家さんです。昨年の感想画課題図書のリストを見た同僚から「この人の作品おもしろいよ」と言われてはいたんですが。むしろわたしとしては、原田宗典さんの妹さんと聞いて納得、という感じ。この作品にも岡山大学に通う兄が登場しますが、勝手に原田さん(どっちも原田さんですね、ここでは宗典さん)の印象で読んでいました。
 わたし、かれこれ二十年近く前に、「スバラ式」をはじめとするエッセイを読んで感銘し
、その頃の著作はほとんど読んだんです。イラストレーターの原くんとか……。最近だと「お前は世界の王様か!」を読もうとしたけど、久しぶりすぎて合いませんでした。
 スカイエマさんの個人的なフェア実施中ですんで、借りてきました。表紙は文中の思い出の舞台、岡山の鶴見橋です。
 鮎子は、この橋の上で高校時代の友人武美と様々なことを語り合いました。中でも、当時付き合った「ヒデホくん」のこと。神戸大学に通う彼は、ナナハンに乗り革ジャンを着こなし、若き日の草刈正雄のようなんですって。
 で、この彼、鮎子の想像上の人物なんです。現在は売れっ子の小日向アユコとして活躍する彼女のもとに母校から講演をしてほしいと依頼がくる。父の仕事の関係でその間だけ岡山で過ごしたため、ずっとその地を訪れなかった鮎子は、途中で広島に転校した同級生の武美に再会するのを心待ちします。
 かつての同級生たちは皆おばさんになっている。そこに同席した母校の教員萩原一子は、なんと武美なのでした。
 結婚後の苗字と合わないから普段は通称として「一子」を使っているという武美。いやいや、でも誰もそう呼んでいないじゃないですか、と最後までそれが気になるわたし。義親も武美って呼んでますよ。
 武美はこの講演会の発起人で、なんとしても成功させたいと無理をしたようです。みんながその気持ちを汲んでくれるんですが、えーと、このラストみたいな講演でいいの? それとも気を取り直してちゃんと話したんでしょうか。一応原稿もあることだし。
 ここの生徒たちにとっては、武美は「一子」なんでしょうか。そして、彼女たちは鮎子の口から本来ならこの会を取り仕切っているはずの先生がなぜいないのか知らされるのでしょうか。
 それはあんまりだと思うんだけどなぁ。