くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「禁断の魔術」東野圭吾

2013-04-18 22:12:36 | ミステリ・サスペンス・ホラー
「科学を制する者は世界を制す」
 「猛射つ」のメインキャラ古芝伸吾の父の言葉です。他の作品に比べてこの作品は長いんですが、教師としての湯川が見られる新鮮な物語でした。
 そうだよね、湯川は大学の先生なんだよ、と今更ですが。ちょっと前の「真夏の方程式」を読んだときも、科学の魅力を少年に伝える湯川に、これまでに見せなかった表情を見たと感じたんですが、今回も古芝くんに対しての行動が温かくて、なんともホッとしてしまいました。
 だって、東野圭吾って教員が嫌いだったでしょう。(はっきりあとがきで書いている本もありますからね)
 それが、教師としての湯川を描く。もちろんそれは理想化されているからこそなんでしょうけど、そして、直接の教え子というわけではなくて同窓の後輩にかつてあるアイデアを授けたというきっかけではあるからですが、「探偵ガリレオ」で登場したばかりの頃に比べて人間的に丸くなった感じがしました。
 この「禁断の魔術」(文藝春秋)でシリーズ八作めになるそうですね。テレビドラマも続編が放映中とか。(テレビ見ないんで……。コンビニのフェアと生徒の話で知りました)
 古芝は、両親なきあとに面倒をみてくれた姉を失います。その背後に大物政治家の影が見える。湯川を慕って、彼の勤める帝都大学に進学した古芝でしたが、奨学金の出どころがその政治家であろうことを厭い、退学。復讐を誓います。
 その「武器」となるものがレールガン。新入生勧誘デモンストレーションのために、湯川が指導した「実験装置」でした。
 「猛射」というのは東野さんの造語? まあ、充電の関係で一日に一度しか試せない実験装置なんですけどね。でもその威力は凄まじい。復讐の機会を待つ古芝自身も、レールガンを象徴した人物だといえます。彼が心を許す工場の娘由里奈が可愛らしい。
 それにしても、岸谷くんが久しぶりに登場して嬉しい。最近内海薫にスタンスを奪われつつあったので。有能な部下が二人もいる草薙、頼もしいですね。 
 他の短編は、マジックを超能力めかして使うホステスが登場する「透視す」、戦力外通告をうけたプロ野球選手の「曲球る」、そして、ふたごの姉妹に関わる「念波る」(おくる、なんて読めない!)ですね。
   
 
 


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2 コメント

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Unknown (神崎和幸)
2013-04-19 11:45:42
こんにちは。

自分も「禁断の魔術」読みましたよ。
確かに岸谷くんが久しぶりに登場したのは嬉しいですよね。
わかります。
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岸谷くん (いつか)
2013-04-19 20:34:06
 東野さんは、内海薫をドラマ化のために(つまりは柴咲コウのために)作ったわけではないといっていましたが、そのために岸谷くんが割りを食っているのは事実だと思うんです。
 でも、「ガリレオ」がこんな人気作になるとは。発売当初は予想していませんでした。やっぱり福山雅治の起用が成功しているのですよね。大体、物理学者なのになぜガリレオなのか、間宮さんのネーミングだと思うんですが、よくわからない……。
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