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くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「空をつかむまで」関口尚

2009-10-28 05:45:09 | YA・児童書
半年ぶりに髪を切りました。なかなか行けなかったのですよ。お昼をとって本屋に寄ったら普段は200円の駐車料金が千円超えていました。まあ、いいさ、本屋でサービス券貰ったし。
この券、三千円分買わないと貰えないので、つい買ってしまうのです。中の一冊がこれ。関口尚「空をつかむまで」(集英社文庫)。
やられました……。実はこの本、読書感想文で取り上げた子がいて注目していたのですよ。市のコンクールでも入選したのですが。下書き段階のまとめの部分が、読んでみたら文庫解説の川上健一の文章と同じなの……。幸いにも推敲でそこは削らせていたし、本文全体は違うのですが、「枷」という言葉はここから影響を受けていたのね、と思いあたりました。指導の際にはやっぱり全部確認しないと駄目ですね。ほとんどは読んだのですが、この作品については最後に選んだので時間がたりず……。くぅっ。
でも、本はとってもおもしろかったのです。サッカーをやめたことで何事にも本気になれずにいる優太の視点で、三人の同級生たちのことが語られます。将棋部の仲間で、一緒に水泳部にかりだされているモー次郎。水泳部のエースで「姫」とあだ名されるクールビューティ暁人。彼と付き合っている美少女美月。
優太は美月と幼なじみで、淡い恋心を抱いています。でも、暁人と美月にはなにやら抱えこんでいるものがありそうで……。
水泳部の存続をかけて、彼らはトライアスロンの大会に出ることになります。でも悲しいかな、素人の付け焼き刃ではとても勝てそうにありません。ドリームチームと言われる三人組と勝負してみたのですが鼻であしらわれてしまいます。
そんなときコーチを申し出てくれたのが、古希を迎えても現役のトライアスロン選手「鶴じい」。彼はモー次郎に自転車を貸してくれ、暁人にヘッドアップの方法を教え、優太のフォームを徹底的に直します。
彼らはトライアスロン競技を通じて、成長を実感するのです。
でも、この話はそこでは終わりません。
彼らは、とある田舎の村に住んでいます。青春小説では珍しいかも。モー次郎が牛乳配達用の実用自転車でたんぼに突っ込んでしまうシーンがあります。しかも自転車通学の子はヘルメット着用。リアルだわー。
この村が市町村合併により消滅してしまうことになります。そして、通っている中学も廃校。隣接校に吸収されることが決まりました。なんとかこの学校の名前を刻むことはできないかと願う若い先生がいます。そのためにトライアスロンで優勝させたいというのです。
彼らは、勝ちます。こう書いてもこの物語を読むことに支障はないと思います。素晴らしいのは過程であって、出来事ではないからです。「夏の大三角」のエピソードが、わたしは特に好き。彼らがつかみたいと願う「空」は、夏の晴れ上がった空だけではないのです。
それから、「旅立ちの歌」。声が聞こえてくるようです。
背後に伺える暁人の成育歴はなんとも重い。でもタカオはわたしよりも若い! ひー。すっかりおばさんのわたしも、彼らに共感しちゃいますよ。
中学時代真っ最中の方も、遠い過去となってしまった方も、楽しく読めると思います。おすすめです。優太のまっとうさがいい。
諦めかけた夢に手を伸ばす少年たち。どうせなら夏に読むといい、かも。

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