吉本隆明が自民党がボロ負けすることを望んでいたというのを、「現代思想」を手にとってわかった。それでいて、民主党が勝てばいいというのではなく、生ぬるいこれまでの政治を嫌悪をしていたからだろう。団塊の世代の教祖的存在であり、、一度も選挙をしたことがない「自立派」の吉本の言葉ではあったが、なぜか説得力があった。自民党が解体の危機にあるとか、賞味期間を過ぎたとか評されるが、根本的には、立党の精神が問われているのだと思う。保守からリベラルまで一緒にやれたのは、政権党だったからである。マックス・ウェーバーが定義したように、政治というのは、国家相互であろうが、一国家内の人間集団相互の間であろうが、「権力の分け前にあずかろうとする努力であり、あるいは権力の分配を左右しようとする努力」(『職業としての政治』・西島芳二訳)であるわけだから、野党になれば、求心力はなくなるのである。しかし、それが逆に党再生のバネになるのではなかろうか。一から出直すことになるからだ。悪いことばかりではないのである。民主党のいい加減な政治を批判するばかりでなく、それこそ目指すべき国家像を示すべきだろう。一番大事なことは、生者だけでなく、死者の声にも耳を傾けるという保守の精神を、もう一度思い起こし、保守勢力の核として生まれ変わることだ。それに気づくためには、徹底的に打ちのめされたことが、かえって好かったのではないか。吉本はそこまでは考えてはいないだろうが、どんなことを言っても、最後は自民党しか頼りにならないからである。
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