Model 107

1985年の107
じっくり時間をかけてお気に入りの一台に仕上げます。

されど鉄道文字 中西あきこ著 鉄道ジャーナル社発行 3月 2016年

2016-03-02 | Weblog
「すみ丸ゴシック体」ってご存知でしたか?

私はこの書籍を読むまで知りませんでした。

いつものアマゾンの「お薦めメール」の中のこの書籍が目に留まりました。

「されど鉄道文字 駅名標から広がる世界」というタイトルです。

かなり興味を惹かれました。

著者は「中西あきこ」という書道家の女性です。

鉄道関連の書籍というとかなりディープな鉄道専門家の(しかもオジサン?)著作が多いという先入観を持っていますが、女性…しかも書道家?

ちょっと意外に感じましたが早速発注しました。

アマゾンから届いた書籍を早速読みます。

元々「駅名標」には漠然と強い関心を持っていました。

書道家の女性から見た鉄道…という視点にも興味がありましたが、鉄道文字に秘められた多くの物語にぐんぐんと引き込まれていきます。

レールファン初心者ということもありますが、まだまだ知らないことばかりで興味が尽きることはありません。

本はつぎのような構成となっています。

■鉄道書体 すみ丸ゴシック

■現代に生きるすみ丸ゴシック

■ホーロー引きの駅名標を作る

■車両の標記

■ナンバープレートと文字

■営団地下鉄のサイン文字

■ロンドンの地下鉄とジョンストン・サンズのように

…という標題で構成されています。

鉄道で使用される文字標記はそれぞれの分野で異なるようですが、その中で旅客が直接目にするもの…駅名標や行き先標などは旅客を目的地まで適切に安全に案内することが使命です。

鉄道創生期にはその駅名標や行き先標等は各鉄道会社が看板職人などに依頼した特色のある文字標記でありました。

私などが廃線・廃駅巡りをしていて廃駅舎に掲げられている駅名標をみて、「味わいと風格がある文字だなぁ~」などと感動するのはこの時代のものなのだと思います。

しかし時代が進むにつれ、日本中が鉄道で結ばれる一大ネットワークに成長すると、統一した書体、表記法の制定が必要となりました。

鉄道の発展と共に増大する需要に対応するため、表示板を効率よく作成する為に、誰が書いても同じ書体となるような工夫も必要となりました。

そうした需要に、標記文字は「楷書体」→「丸ゴシック」→「すみ丸ゴシック体」と姿を変え鉄道と共に発展してきました。

本文中で特に興味深かったのが…ある時期、駅名標の文字が“アクリル”の切り抜き文字が使われた時代があって、糸鋸で効率よく文字のコーナーを一気に切り抜くことが出来るように工夫されているのが「すみ丸子シック体」と説明されています。

他にも様々な理由付けや工夫が本文中で述べられています。

どのタイトルも非常に面白かったですが、とくに「すみ丸ゴシック体」が出来るまでのストーリーと国鉄民営化後、初代JR東海代表取締役となられた「須田 」氏のすみ丸ゴシック体への熱い想いの述懐がとても興味深かったです。

鉄道文字は旅客に情報を正確に伝えるのは勿論のことですが、それを目にする利用客に「この鉄道は安全だ」という安心感を抱かせる役目も担っています。

須田氏のすみ丸ゴシック体へのこだわりとは「日本語のデザインを文字に残す」ということなのだと理解しました。

すると、須田氏が新幹線の700系まで「すみ丸ゴシック体」に拘りLED表示を許さなかった理由が分かってきます。

たえず進化しながらも“芯”を外さず良いものを遺す…それが「すみ丸ゴシック体」に表れていると…本当に感動しました。

ちなみに「須田 」の“”はル部に点の入る“”で「寛」では無いそうです。



“”は環境依存文字のようでブラウザーで上手く表示されないかも知れませんので、画像としてアップしておきます。

赤矢印のように「、」が入るのが「須田 」の文字です。

須田 氏は国鉄の、そして民営化後のJR東海に数々の逸話と功績とを残しました。

その中の一つのまさに“金字塔”が「すみ丸ゴシック体」というわけです。

JR東海が運用する「東海道新幹線」にも氏の想いが強く残されているものがあります。

旅客が必ず目にする「駅名標」と車両の「行き先標」であります。

なんと、今日でも新幹線の行き先標に「すみ丸ゴシック体」を見る事が出来るのです。

以下は東京駅新幹線ホームに「すみ丸ゴシック体」を確認に行った記事です。



東京駅新幹線乗り場の券売機前は大勢の利用客の列が出来ています。

しかし…入場券券売機には利用客は居なくて待つことなく購入することが出来ました。



SUICAで購入した入場券

¥140の入場券料金と神田からの乗り越し料金が含まれているようです。

それでは…いざホームへ!



目的の列車は17番線、13:03 の「のぞみ 473」と 16番線 13:26 の「こだま 659」です。

この2本の列車の使用機材?(飛行機じゃないから“機材”とは言わないのかな?)が、700系の筈なんです。

「やったぁ!」17番線には“700系”が…そして隣には今は主力機材の“N700系”が入線しています。



早速、お目当ての行き先方向幕を確認します。

「おぉ!これが“すみ丸ゴシック体”の方向幕かぁ!」と感動してみます。

これまで、新幹線の方向幕など注視することなど無かったですからね。

ボデーには700系のデカールが張られています。

*この何気なく「デカール」と使っている用語も書籍の中で詳しく述べられています。



近寄って行く先方向幕を注視し撮影します。

乗客の方々は不思議に思ったでしょうね、「何をやってんだか?」って。



旅客に行き先などの「情報を正確に明瞭に伝える」という意味だけにおいては、方向幕とデジタルのLED表示とでは明らかに後者の方が優れていると思います。



かなりくたびれてしまったボデーが痛々しいです。

老体に鞭打って頑張っているなぁ~



ひかり岡山行きを見ていると、16番ホームには13:26 の こだま 名古屋行きが入線してきました。

「おぉ…こちらの方向幕はまだまだ綺麗だなぁ~」と感動しながら鑑賞します。



拡大してみて見ますと…特に白矢印の部分に「すみ丸ゴシック体」の特徴を見ることが出来ます。



こちらの客車種別を示す指示器の表示にも「すみ丸ゴシック体」の特徴を見ることが出来ます。



拡大してよ~く見てみますと、矢印の部分…かなり凝った表示であるのが分かります。

凝り凝りですね!

赤矢印の部分など感動的な程の凝りようです。



折角ですので、車輛標記 も観察します。

これは車体側面の車輛形式番号・製造番号といわれる標記です。

JR東日本、JR西日本、JR北海道 などは E W H など各会社の頭文字を冠しているようですが、JR東海はこのように会社の頭文字などは付記されていません。

ただ…写真のように何両に一両は Corporate color のオレンジ色JR マークが付記されています。

数字はマックでお馴染みの“Helvetica”が使われているそうです。

*ちなみにWindows では、Ariel というフォントが代用されています。
どちらもいつもお世話になっています。



こちらも、近くで観察しますと赤矢印のようにとても凝った作りとなっているのが分かります。



新幹線ホーム、JR東海の駅名標を観察します。

新幹線の駅名標は高速で走行する車輛からでも確認が容易なように、駅名は漢字で表記されるそうです。

平仮名では高速で走行する車輛から確認が困難なのでこうして漢字表記の下部に表記されます。



駅名標を拡大して見てみます。

おぉ! やっぱJR東海、駅名標にもきっちり“すみ丸ゴシック体”が使われています。



こちらは山手線ホームの駅名標。

JR東日本の駅名標ですから、JR東海のそれとはきっちり違いますね!



文字端のコーナーを観察すると明らかに「すみ丸ゴシック体」とは異なる鋭角な端部です。

在来線の山手線でありますが、新幹線の表示と同様に漢字の駅名が上でその下に平仮名の表記があります。



同じ山手線の駅名標ですが、御徒町のそれは…平仮名が上でその下に漢字が表記がされています。



昨年9月に訪れた小幌駅のホーロー製駅名標です。

北海道の各駅には今でもホーロー製駅名標が多く残り使われ続けています。

このタイプの駅名標は「柱用ホーロー駅名標」といい、国鉄掲示規定に沿って製作、運用されています。

柱用駅名標の表示には、すみ丸ゴシック体の“ひらがな”を用い、ホームに20m~30mごとに掲示することが定められているそうです。

それは車輛1両の長さが約20mであることにその理由があるそうです。

なるほど…

そして駅名の下には「本場の味 サッポロビール」の広告が取り付けられる国鉄時代の“タイアップ広告”であります。

以前から駅名標を眺めるのはとても興味深かったのですが、この本「されど鉄道文字」を読んで様々のことを教えて頂き、ますます駅名標を鑑賞するのが楽しみになりました。

いかがでしょう?

わずか¥800 の書籍ではありますがこれほど楽しめるとは、鉄道文字…かなりディープな世界であります。

レールファン初心者の私にとっては、小野田 滋 さんの「鉄道構造物探見」と並び導きの書として欠かせないものとなりました。

この書籍を手に、都内の地下鉄、モノレールなど様々な鉄道の表示を見て歩いてみようと思います。

2016年の北海道旅行の楽しみも一つ増えました。

超お薦めの書籍であります。

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