『女子の武士道』(石川真理子 致知出版社)は、著者が12歳までともに暮らしたお祖母さんの言葉から、「人としての心得」『女性としてのあり方」を紹介したもので、副題は、『武士の娘だった「祖母の言葉五十五」』です(「女子」は「じょし」と読ませています)。
お祖母さんは明治22年に生まれ、米沢藩士だった父親から武家の娘としての厳格な躾を受け、明治・大正・昭和を生き抜いたとのこと。
「女は家を守るもの、堪え忍んで生きるもの」なんていう方向や、きな臭い道徳教育などに利用されそうなところもある本だけど、とりあげられているお祖母さんの言葉やその父親の言葉には「そのような心構えで生きたい」と思うものが多いので、いくつか抜粋します。
●陰で奥歯を噛んでいたとても平気の平左で生きてやる
武士という身分を失いさらに逆賊の立場に立った明治維新後のことをお祖母さんが父親に聞いたとき、いっそ自害すると言い出さなかったのか、どうして耐えることができたのかと訊ねたそうです。そのとき笑い飛ばすような勢いで陽気に言ったという父親の言葉から抜粋します。
「そのようなことにへこたれてしまっては面白くないからのう。誇りを傷つけられたなどと自害しては相手の思うつぼじゃ。陰で奥歯を噛んでいたとても平気の平左で生きてやるのよ。
どんな目に遭おうとも、どっこいそれがどうしたと、知恵と心意気で相対してやるのだ。士族が無くなろうと西洋張りの日本国が生まれようと、武士の心意気が生きていることを見せてやるのよ」
想像もしなかった返事に驚いたけど、これがあっぱれということかと、気持ちが晴れ晴れしたそうです。
著者の感想は、「見栄を張るためではない、誇りを守るための「やせ我慢」とは、なんと格好いいやせ我慢でしょう。」
ほんとにそのとおり。
うん、「プライド」という言葉を、見栄を張ることと勘違いしていることってけっこうあるけど、プライドは誇りのこと。誇りを守るためのやせ我慢って好きだ。つらいけど。