『生きるとは、自分の物語をつくること』(河合隼雄・小川洋子 新潮文庫)からもうひとつ抜粋します。
小川 患者さんによって、カウンセラーも深められるというところがあるんでしょうか。
河合 それどころか、われわれは常に患者さんに訓練されています。作家の方が書くごとに成長されるのと一緒です。僕らが一番鍛えられるのは、来られる方によってです。
小川 一段高いところにカウンセラーがいて、引っ張り上げるのではないんですね。
河合 引っ張り上げるという感覚はないですね。鍛えられて、教えられて、鍛えられて、教えられて、だんだんだんだん訓練される。そういう感じです。人は一人一人違う。同じ人が来るはずはないので、前のことを生かしてやるいうことは、ほとんどあり得ない。
本当にそう。