翁長雄志沖縄県知事は21日午後(日本時間22日未明)、スイス・ジュネーブの国連人権理事会で名護市辺野古への米軍基地建設に反対する声明を発表しました。(最後に全文を載せます)
そして24日に「日本外国特派員協会」で次のように説明しました。今朝の東京新聞記事「辺野古は人権問題 翁長知事が国連で言いたかったこと」から抜粋します。
沖縄は136年前までは、人口数十万人の小さな独立国だった。日本に併合され、一生懸命言葉も勉強したが、戦争では最も悲惨な目に遭った。戦後、沖縄に自己決定権が何もない中でつくられたのが今の基地。そして今も日本は、沖縄の自己選択権、人権を何も保障しないまま、再び翻弄しようとしている。私たちは琉球王国のように、アジアの架け橋になりたいと望んでいる。
私はだいぶ前から、沖縄は独立して日本とは別の国になるほうがいい状態になるんじゃないかと思っていたけど、今朝の「辺野古は人権問題 翁長知事が国連で言いたかったこと」「国連人権機関 過去に何度も勧告 先住民差別 続けるのか」を読んで、ますますその意を強くしたのよ。
で、記事を私なりにまとめてみました。長くなります。
記事の見出しの「先住民」という表現にちょっとひっかかったんですけどね、沖縄の「先住民性」とは何かについて、龍谷大学の松島泰勝教授(島しょ経済論)は「まず独立国として存在していた歴史がある」と説いています。
15世紀に始まる琉球王国は450年間続き、独自の文化を築いた。江戸末期にはアメリカなどとも独自の修好条約を結んでいる。つまり独立国として認められてたわけだよね。でも明治政府は琉球を日本の領土と見なして1879年に併合。そして日本政府は沖縄を他県と同じ日本民族で差別はないと主張。
なんか、スペインに滅ぼされたインカやアステカを思い出してしまったよ。アイヌ民族もその先住民性を認められたのはつい最近だったよねえ。
さて、国連は日本政府の主張を蹴り飛ばしているのよ。
●国連の動き
・自由権規約委員会は2008年に沖縄の先住民性を認め、「彼らの土地の権利を保障すべきだ」と勧告。
・教育科学文化機関(ユネスコ)は2009年に沖縄固有の民族性や歴史、文化を認めた。
・人種差別撤廃委員会は2010年に沖縄の基地集中が人権侵害にあたると勧告。
2014年夏の「最終見解」で沖縄の人々の権利保護を勧告。消滅の危機にある琉球語の保護や歴史・文化を伝える教育カリキュラムの促進を求める。
先住民性を認めない日本政府の姿勢に対して「遺憾」の意を表し、「彼らの権利保護については沖縄の代表者との十分な対話がなされていない」と断じた。
これらの流れを踏まえると、翁長知事の演説がより分かりました。
●翁長知事の国際演説のポイント
・沖縄の人々は自己決定権や人権をないがしろにされている。
・沖縄は日本国土の0.6%の面積しかないのに、在日米軍専用施設の73.8%が存在し、戦後70年間基地に派生する事件・事故や環境問題が生活に大きな影響を与え続けている。
・基地になっている土地は沖縄が自ら進んで提供したものではない。
・日本政府は沖縄での全ての選挙で示された民意を一顧だにせず、美しい海を埋め立てて辺野古新基地建設作業を強行しようとしている。
・自国民の自由、平等、人権、民主主義などを守れない国が、世界の国々とその価値観を共有できるのか。
●演説への日本政府の反応
◎嘉治美左子大使(ジュネーブ国際機関政府代表部)
辺野古移設計画は合法的に進められている。
◎菅官房長官
各国の人権保護などを主な任務とする理事会で、沖縄の米軍基地をめぐる問題が扱われたことに強い違和感を持っている。知事の主張は国際社会では理解されない。
翁長知事は菅官房長官の発言に「基地問題は民主主義の在り方としておかしいと、本土の人に気づいてもらわないといけない」と反論しています。
●各氏の意見
◎松島教授(国際法にもとづいた沖縄の独立をめざしている)
自らの土地の使い方を自分たちで決定できないのは明らかに人権侵害。
◎糸数慶子参院議員(沖縄選出)
県民が繰り返し選挙で辺野古基地建設に反対しているのに、民意に反して工事を進めようとしている政府の姿勢は人権侵害の最たるもの。
戦後、米軍の統治下で土地を強制的に奪われたばかりか、車にひかれて殺されても、女性がレイプされても住民の権利は守られなかった。本土復帰後も沖縄の人権は踏みにじられた。
◎神戸大学・五十嵐正博名誉教授(国際法)
翁長知事は「自己決定権」という言い方をしたが、民族自決権は、国際社会では最も重要な人権。
知事の演説は国際社会では当たり前に支持されるロジック。否定する政府のほうが理解しがたい野蛮な主張に聞こえる。
◎沖縄国際大学・前泊博盛教授(政治学)
いじめられた人に、いじめた側が「いじめじゃない」と言い募るのと同じ。どう見ても、聞く耳を持たないのは政府の方だ。
結局、日本に民主主義はない。沖縄の基地問題は客観的には差別以外のなにものでもない。政府も、政府の主張に納得する国民も、問われているのは自分たちの姿勢であることを直視すべきだ。
ヘイト(ヘイトスピーチ)の放置、安全保障関連法の成立強行…。すべて同根ではないのか。
基地問題は沖縄の人権と切り離しては考えられないんだね。だからこそ翁長知事は“加盟国の人権状況を監視して改善をうながす重要機関”である国連人権理事会で演説したんだ。翁長知事のすばらしい粘りの理由が少しわかった気がします。
●「辺野古の状況を見てください」国連での沖縄知事声明全文(日本語訳)
沖縄タイムスWeb(2015年9月22日 11:42)から
沖縄県の翁長雄志知事は21日午後(日本時間22日未明)、スイス・ジュネーブの国連人権理事会で名護市辺野古への米軍基地建設に反対する声明を発表した。声明は次の通り。
ありがとうございます、議長。
私は、日本国沖縄県の知事、翁長雄志です。
沖縄の人々の自己決定権がないがしろにされている辺野古の状況を、世界中から関心を持って見てください。
沖縄県内の米軍基地は、第二次世界大戦後、米軍に強制接収されて出来た基地です。
沖縄が自ら望んで土地を提供したものではありません。
沖縄は日本国土の0.6%の面積しかありませんが、在日米軍専用施設の73.8%が存在しています。
戦後70年間、いまだ米軍基地から派生する事件・事故や環境問題が県民生活に大きな影響を与え続けています。
このように沖縄の人々は自己決定権や人権をないがしろにされています。
自国民の自由、平等、人権、民主主義、そういったものを守れない国が、どうして世界の国々とその価値観を共有できるのでしょうか。
日本政府は、昨年、沖縄で行われた全ての選挙で示された民意を一顧だにせず、美しい海を埋め立てて辺野古新基地建設作業を強行しようとしています。
私は、あらゆる手段を使って新基地建設を止める覚悟です。
今日はこのような説明の場が頂けたことを感謝しております。ありがとうございました。