東日本大震災で津波の被害にあったところで、津波も乗り越えられない巨大な防潮堤を作ることが計画されたけど、「なんかおかしいんだよなあ、なんか変だ」と疑問に思っていました。
そうしたら11月3日の東京新聞朝刊『「森の防潮堤」阻むコンクリート信仰』という記事を読んで腑に落ちました。
海と陸はつながり、生きている。それをコンクリートで遮断すると、短期では利益があるかも知れないが、長期で見れば、海も陸も死んでしまうことになる。(「いのちを守る森の防潮堤」推進東北協議会会長で輪王寺住職の日置道隆さん)
防潮堤ができると、水平線が見えなくなる。
大事なのは自然の力だ。コンクリートの防潮堤は、森から海に栄養分を運ぶ地下水を遮断し、海を腐らせる。(NPO法人「海べの森をつくろう会」理事長の菅原信治さん)
うん、そうなんだ。命の循環が断たれてしまうことがなんか変に思えたんだけど、人の生活を守るためには仕方がないのかなあ、ほかにいい方法がないならしょうがないのかなあ、でもなんかおかしいよなあと思っていたんだ。
でも、“森をつくる”という良い方法があったんだ!
コンクリート造りの防潮堤の代わりに、海岸沿いに震災がれきを混ぜた盛り土を築き、地元に生息する広葉樹を植えるという「森の防潮堤」構想は、震災直後に植物生態学の宮脇昭・横浜国立大名誉教授が提唱。
・木が生長するまで10~20年かかるけど、できあがった森は津波の水位と速度を落とすから避難する時間を稼げる。
・津波が引くときに引き水に飲み込まれても、樹木で食い止めることができる。
・広葉樹は根が深くて倒れにくく維持管理にも手間がかからない。
・コンクリートは百年ももたないけど、森は孫の代を超えて次の氷河期が来るまで持続できる。
・震災がれきの処理にもなる。
すごいじゃん。宮脇名誉教授が言うとおり“一石五鳥”。
でも「森の防潮堤」構想は広まっていないんだって。
国や自治体が「コンクリート信仰」を捨てず、従来のコンクリート造りに邁進しているからだ。震災で破壊された防潮堤はすべて復旧させた上で、新設もする。復旧対象の48%で完成や着工している。(9月末現在)
とのこと。
なぜ「森の防潮堤」構想が広まらないのか。
・コンクリートは強度の計算ができて、分かりやすいからだ(首都大学東京・横山勝英准教授 環境水理学)
・地元自治体に理解があっても、国交省は、植樹にカネを出そうとはしない。林野庁は、減災効果が少ないマツを植えようとする(宮脇名誉教授)
・海岸の管轄主体が、場所によって国交省、農林水産省、県、市町村などに分かれていることも一因。
うーん利権の問題もあるんだろうし。
目に見える結果がすぐ出るもの以外にお金をかけるのはいやなんだろうか。
宮脇名誉教授は「まず森づくりを前提にして、足りない部分はコンクリートで補うという考え方に、改めるべきだ」と話している。
私もそう思う。『「森の防潮堤」構想と宮脇昭理論の生態学上の問題点』などの反対意見もあるけどね。
「森の防潮堤の提案」(いのちを守る森の防潮堤推進東北協議会のウェブページ)に詳しく説明されています。