このところ『14歳の世渡り術』シリーズ(河出書房新社)が面白くて興味深く読んでいるのですが、『14歳からの原発問題』(雨宮処凛:アマミヤカリン)にはかなーり驚きました。
3.11の東日本大震災で福島原発事故がおきるまで原発には無関心だった著者が、“原発がなかったら電気が足りないってホント?” 、“「原発作ろう」って言ったのは誰?”などのさまざまな疑問を抱き、とにかく知りたいと、原発で働いていた人や社会学者、『はんげんぱつ新聞』編集長、獣医師らに話を聞いています。
内容について紹介されているものを引用します。
・河出書房新社から
「3・11」で原発の恐ろしさに気付いた著者が、小熊英二・鎌仲ひとみ・西尾漠・原発労働者ら6名の専門家を訪ね、原発についてイチから学ぶ。これからを生き抜くための「原発問題」入門。
・「BOOK」データベースから
「3・11」まで無関心だった著者が、イチから学んだ「原発問題」。未来を台無しにしないための、日本で一番わかりやすい原発本。
出版されたのが2011年9月と福島原発事故から半年後ですが、短い期間でよくこれだけ詳しくわかりやすくまとめられたものだと驚きました。「知らなかったよ」、「えっ、そんな裏話があるの!」、「実はそうだったのか」が山盛りで、4年後の今でも読む価値が高い本だと思いました。
でもいちばん驚いたのが、原発関連本としては知られていないこと。実にもったいない。ジュニア向けだから見過ごされたんだろうなあ。
この本で提言されていることがどれだけ実現しているかを考えるとがっかりしてしまうところもあるけど、でも実現されてることもあるから、これからもきちんとチェックして、原発はいらないと声をあげていかなくちゃね。
以下に目次をあげておきます。
はじめに
第1章 「原発いらない!」と気付いた日――3・11からの「反原発」
◆これで全部終わっちゃうのかな……
◆この人たち、本気でなんにも考えてなかったんだ……
◆誰かに犠牲を強いる社会はまっぴらだ
◆子どもたちの被ばくより金もうけ?
◆福島と東京との埋めがたい温度差
◆海外で進む脱原発と地震大国・日本の原発
◆原発は、カネと命の交換なのか
第2章 原発の中では何が起きている?――元・原発労働者Aさんに聞く
◆時給1万円? 日当40万円?
◆「あんた子どもつくんの?」
◆ロボットより、結局は人間
◆年に7,8回の健康診断
◆原発内で潮干狩り
◆電力会社の人にAVを買いに行かされる
◆風評被害と健康被害を混同してはいけない
◆必ず「被爆要員」が出続ける
第3章 なぜ日本に原発ができたのか――社会学者・開沼博さんに聞く
◆「原子力つけめん」と「回転寿司アトム」の衝撃
◆原発を作るために動いたキーパーソン
◆デパートに原子売り場?
◆福島に原発ができたワケ
◆原発で変わる町、生活
◆町民の多くが原発関連の仕事
◆情報隠し、データ改ざん、それでも原発?
◆京都議定書と原子力ルネッサンス
◆ゴジラが「核」で、鉄腕アトムが「原子力」?
◆地元の誇りだった“夢のエネルギー”の果て
第4章 世界の動きと日本の原発――歴史社会学者・小熊英二さんに聞く
◆5・31 原発怖いぞコノヤロー交流会
◆核廃絶運動を始めた杉並の主婦たち
◆語呂合わせで決まった原子力予算
◆核開発とノーベル平和賞
◆石油ショックというきっかけ
◆純粋にビジネスとしてダメな原発
◆進歩のない斜陽産業である理由
◆戦争に勝って核武装できた国、負けてできなかった国
第5章 そもそも原子力発電ってなに!?――「はんげんぱつ新聞」編集長・西尾漠さんに聞く
◆テレビで言ってる「大丈夫」は大丈夫じゃない
◆なぜ原発を作ってしまったのか
◆一番危ないのが80万年後?
◆原爆では短く、原発では長い放射能の半減期
◆劣化ウラン弾に苦しむ子どもたち
◆日本の原発ゴミが劣化ウラン弾に?
◆日本の電力は原発依存ではない
◆レベル7どころではない福島の事故
◆もう共存していくしかない
◆節電だけでなくライフスタイルの見直しを
第6章 20キロ圏内にとり残された動物たち――獣医・なかのまきこさんに聞く
◆人の消えた町を歩く、痩せこけた犬
◆自殺した酪農家の苦悩
◆受験会場で実験動物が鳴き叫ぶ声を聞いた
◆おうちの前で飼い主の帰りを待つ犬
◆餓死を待つかのような政府の対応
◆チェルノブイリでは、家畜は全頭避難した
◆私たちは動物への恩を忘れているのではないか
◆偏見を持たないで
第7章 「総被曝時代」に立ち向かうために――映画監督・鎌仲ひとみさんに聞く
◆中立という立場は「賛成」なのだ
◆スウェーデンの脱原発
◆原発を続けるための節電キャンペーンにダマされるな
◆電力会社が送電線を独占しているのは日本だけ
◆予想される健康被害とは
◆え、私も内部被曝?
◆声をあげ続ければ、大きな力になる
あとがき
参考文献等