ふうるふうる・たらのあんなことこんなこと

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「グラン・ローヴァ物語」

2005-10-17 22:59:49 | 本や言葉の紹介
 キンモクセイが町のそこここでよい香りをただよわせています。このところのお天気はまさに秋の長雨。湿気と寒さに弱いことを口実に、好きな漫画を引っ張り出して一日中読みふけりました。その中の『グラン・ローヴァ物語』(紫堂恭子)から、好きなせりふをご紹介します。

 これは、ケチな詐欺師サイアムが、放浪の賢者グラン・ローヴァや、古い力をもつ大蛇だけど可愛い乙女の姿であらわれるイリューシアなどに出会い、人間と世界の行く末を見ていくというようなファンタジーです。この放浪の賢者グラン・ローヴァがまたぼろぼろのすってんきょうな爺さまで、私のあこがれ。こんな爺さま、いや、婆さまになりたい。タイトルを『でっかい老婆』なんて読み替えたりして……はい、バカです私。

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サイアム「なーにがグラン・ローヴァだ! おまえサギ師なんだろう。お見通しだぞ!」
グ・ロ 「実にあんたは頭がいいのお。当たらずとも遠からずじゃ。学舎のおっかないじーさんたちがそう呼んどるだけじゃでなんでかわしもようわからんのじゃ!」
サイアム「東の学舎に本当にいたってんならそこで何か学んだはずだろう!」
グ・ロ 「うーん 強いて言うならいつも機嫌よく暮らすことぐらいかのお。わしゃもの覚えが悪くての。それだけで百年かかったわい!」

(サイアムが母と別れたときのことを思い出していたとき)
グ・ロ 「なんという悲しい話じゃ!」
サイアム「泣くなよみっともない! 機嫌よく暮らしてんじゃなかったのか!」
グ・ロ 「泣くときは心おきなく泣き! 怒るときはめいっぱい怒る! 機嫌よく暮らすコツじゃよ」

(サイアムが心を閉ざし、死んだほうがよいのではと思ったとき)
グ・ロ 「別にどんな馬の骨だって誰だって生きてていいんじゃないかな?」
サイアム「そんなきれいごと言ったって俺はとんでもない悪人なんかに生きてて欲しくないし 生きてて欲しい人が死んでしまうのを止めることもできやしないじゃないか」
グ・ロ 「ねえサイアム。わしらよく魚や鳥を食べたけど 魚に恨まれたことあるかね?」
サイアム「あるわけないだろっ」
グ・ロ 「うん。魚は水の中で気持ちよく生きてたんだと思うけど わしらが食べるのを許してくれてるんじゃよ。相手がいい人でも悪い人でも関係なしにね。この木は木の実をくれたり 枯れ枝は体をあたためてくれるし 魚はあんなにきれいな体を食べさせてくれる。わしはいつでも忘れたことはないよ。たった今こうして息をしていられるのも 世界中全部が生きることを許してくれてるんだってね」
サイアム「俺も許してもらってるのかなあ……」
グ・ロ 「うん。わしはたいして何もしらないけど それだけはずっと前から知ってたよ。ほんとは誰でもわかってることなんじゃがね どうもみんなすぐ忘れてしまう」


 せりふだけ抜き書きしても伝わりにくいですね。すみません。同じ作者の『辺境警備』も好きで、隊長さん(サウル・カダフ)がひいきです。人間、多面性と深みがあるほうがやっぱり魅力的ですね。