ふうるふうる・たらのあんなことこんなこと

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「桜守」からの聞き書き

2009-08-19 18:05:16 | 本や言葉の紹介
 武蔵浦和“ふうるふうる”のたらです。
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 「桜のいのち庭のこころ」(佐野藤右衛門 草思社)は、京都・嵯峨野の造園業・植藤の十六代目の言葉を塩野米松さんが聞き書きしたもの。おじいさんの十四代目から特に桜と深い縁ができ、三代続いて「桜守」と呼ばれています。

 桜についてはもちろん、庭の作り方、いい土とはどんなものか、自然と人間のかかわり、仕事のしかた等々、読んでいてとにかく「へえ、ほう、おお」の連続。

 エコロジーなんて仰々しく言わなくても、庭を見ているだけでわかる人はわかるんだなあ。私はただ単に見ているだけで、ちゃんととらえていないし考えていないなあ。

 ちょっと紹介させてください。

●(木を植えたあと)年寄りが「植えたときに小鳥が止まればつく」とよくいいますわな。枯れそうな木になかなか鳥は止まりませんね。「あ、鳥がきてくれた」というたら、やっぱり大丈夫ですわ。ということは、木も生きとるさけね。そういうことがどうして言えるのかというのは学問的にも科学的にもわかりませんわなあ。「気配」というやつですかなあ。

●今は人間が日本の自然を無茶苦茶にしているから、桜もやや減りつつあります。というのは、まず、鳥がおってくれないとあきませんやろ、それと昆虫類がおってくれんとあきません。それには地面の中の虫、微生物、そのほかもろもろのもの、これらみんなが作用して成り立っておるわけです。それを今は地面が虫を追い払わずに、殺すんですわ。鳥にしたって、これだけ都市化が進んでしもうて、住む場所がないんです。昆虫もそうやし、鳥もそうやし、動物もみんなそうです。それらが減っていくと同じように、桜も減っていかなしゃあないんです。

●(桜の)日本の野生種は、土地も広かったし、虫も鳥もいっぱいいたので広がっていったんです。みんなうまいこと同居しておったんですね。ところが今はソメイヨシノを植えすぎたんです。ソメイヨシノは寿命が短いですわな。百年以内で枯れるんやから。これも枯れたからっていうて、また同じところにあわてて植えるから、うまくいきません。

●ソメイヨシノのおかげで桜の観念が狂ってしまいましたわ。ソメイヨシノは接ぎ木がしやすい、成長が早い、それで、どこで植えても同時に咲くんです。個性がない。人間につくられたものやから個性がないんです。ソメイヨシノは、ただ一本の変種から日本中に散らばっていったんです。ずっと接いできたから、今のものはあまりよくなりませんわなあ。ソメイヨシノの若々しいと思われる芽を摘んでも、すでに百五十歳になっているわけですわ、芽が老化しておるんです。それを接ぐから、あまりいいものはできない。

●村にはその村の農作業の目安になっている桜がありますな。田植え桜とか、麻まき桜とか。やはりそれが、なるほどなあ、ということがみなありますわ。あれはもう、気象庁の天気予報より正確に、その年の気象条件を知らせてくれますわな。ソメイヨシノにはそんなことできへんからね。

●関東、東京周辺では、おめでたには、みな桜湯を使うんですな。見合いの席や婚礼の席では茶を濁すといって茶を使わないで、桜湯にするんですな。ところが京都では、桜は散りやすいから「花の縁は散りやすい」というて桜は嫌がりますわ。


 この十六代目、けっこう口が悪い。とっても素敵に口が悪い。
 とにかく深くて面白い聞き書きです。読んでみてください。

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
やあさすが (さめ)
2009-08-23 04:46:03
桜守の方だけあって、おっしゃることが、桜湯ようです。ちょっとからいが、香気がありますね。
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“うまい”コメントをありがとうございます (たら)
2009-08-23 07:03:56
さめさん、コメントをありがとうございます。

「ちょっとからいが、香気がありますね」
 ↑
うまい! 桜湯にかけたすてきなひとことに、膝を打ちました。

庭造りって、その土地の植物を入れないとうまくいかないんだそうです。
その土地土地のしきたりも、それが伝えられてきたということには何かしらの理由があるんでしょうね。

 
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