国・東電に再び賠償命令=原状回復認めず―原発事故、3件目判決・福島地裁(時事)
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東京電力福島第1原発事故をめぐり、福島県や近隣県の住民約3800人が、国と東電に居住地の放射線量低減(原状回復)と慰謝料など総額約160億円を求めた訴訟の判決が10日、福島地裁であった。
金沢秀樹裁判長は「事故は回避できた」と述べ、約2900人に総額約5億円を支払うよう国と東電に命じた。原状回復の訴えは却下した。
全国に約30ある同種訴訟で3件目の判決で、国の責任を認めたのは3月の前橋地裁に続き2件目。原告数が最も多い福島地裁の判断は、今後の判決に影響する可能性がある。
金沢裁判長は、2002年7月に政府機関が公表した地震予測の「長期評価」は信頼性が高く、国はこれに基づき敷地高を超える津波を予見できたと判断。安全性確保を命じていれば事故は防げたとし、「02年末までに規制権限を行使しなかったのは著しく合理性を欠く」と述べた。
その上で、原告の7割を占める福島、いわき、郡山各市など自主的避難等対象区域の住民には、国の中間指針(8万円)を超える16万円の賠償を認めた。中間指針の対象から外れた茨城県の一部住民にも1万円を認めた一方、960人は放射線量が低いなどの理由で棄却した。
国の賠償責任は「原子力事業者を監督する2次的なものにとどまる」と指摘。責任の範囲は東電の2分の1と認定し、賠償額は約2億5000万円とした。
原状回復請求については「心情的には理解できるが、民事訴訟としては不適法」と却下した。原状回復までの将来分の請求も認めなかった。
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「生業を返せ!地域を返せ!福島原発訴訟」(生業訴訟、10月10日、福島地裁、金沢秀樹裁判長)は、3月の前橋地裁に続き再び国の責任を認め、国・東電双方に賠償を命じた。判決が出た原発賠償訴訟は3例目となる。
判決は、地震調査研究推進本部(推本)の地震に関する長期評価が発表された2002年時点で津波襲来を予見できたのに対策を取らなかったとして、国の責任を認定。「2008年段階で津波を予見できた」とした前橋判決と比べても、国が津波を予見可能だったとする時期を6年も前倒しする、国にとってさらに厳しい内容となった。
賠償額は原告3800人に対し5億円で、1人当たり約13万円となる。低額の賠償水準で、原告が求めていたふるさと喪失の損害を認めない(9月の千葉地裁はこれを認めた)などの点で今後に課題を残した。原告が求めていた原状回復も「知見が確立されていない」として退けた。原発事故が起これば、汚染地を元に戻す方法はないと、司法が公に認めたことになる。
今回の裁判が、先行した前橋、千葉の判決と大きく異なる点は、避難者中心の訴訟ではなく、避難せず福島に残って生活を続ける人が原告全体の8割を占めるところにある。今回、福島に残り、被曝しながら生活を続ける住民の苦しみが、具体的な国の責任として、金銭的価値を伴って認定された意義は大きい。「自主」避難者らが福島県を相手に住宅無償提供の継続などを求めてこの間、何度も交渉を続けてきたが、そのたびに県官僚から「福島に残った人たちはみんな“普通”に暮らしている」と暴言を浴びせられ、涙を流してきた。福島に残る人たちにも苦しみがある、残った人たちも、自分たちは普通なんだとなんとかして自分自身に思い込ませようとしているだけで、すべてが元に戻ったわけではない、被害が消えたわけではないと裁判で認められたことは、福島県による「普通に暮らしている」論を打ち破る大きな根拠を得たことになる。この点にこそ今回の判決の最も重要な意義がある。
この判決を根拠として、「福島県に残っている人の被害も裁判所が公式に認めたのだから、県は真剣に対策を取れ」と要求できる。自分たちにとって都合の悪いことはすべて「風評被害」で片付け、まともに向き合ってこなかった福島県。ナントカのひとつ覚えのように、いつまでも風評風評と騒ぐ暇があるなら、そろそろいい加減で被害者の声と向き合ってもらいたい。
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東京電力福島第1原発事故をめぐり、福島県や近隣県の住民約3800人が、国と東電に居住地の放射線量低減(原状回復)と慰謝料など総額約160億円を求めた訴訟の判決が10日、福島地裁であった。
金沢秀樹裁判長は「事故は回避できた」と述べ、約2900人に総額約5億円を支払うよう国と東電に命じた。原状回復の訴えは却下した。
全国に約30ある同種訴訟で3件目の判決で、国の責任を認めたのは3月の前橋地裁に続き2件目。原告数が最も多い福島地裁の判断は、今後の判決に影響する可能性がある。
金沢裁判長は、2002年7月に政府機関が公表した地震予測の「長期評価」は信頼性が高く、国はこれに基づき敷地高を超える津波を予見できたと判断。安全性確保を命じていれば事故は防げたとし、「02年末までに規制権限を行使しなかったのは著しく合理性を欠く」と述べた。
その上で、原告の7割を占める福島、いわき、郡山各市など自主的避難等対象区域の住民には、国の中間指針(8万円)を超える16万円の賠償を認めた。中間指針の対象から外れた茨城県の一部住民にも1万円を認めた一方、960人は放射線量が低いなどの理由で棄却した。
国の賠償責任は「原子力事業者を監督する2次的なものにとどまる」と指摘。責任の範囲は東電の2分の1と認定し、賠償額は約2億5000万円とした。
原状回復請求については「心情的には理解できるが、民事訴訟としては不適法」と却下した。原状回復までの将来分の請求も認めなかった。
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「生業を返せ!地域を返せ!福島原発訴訟」(生業訴訟、10月10日、福島地裁、金沢秀樹裁判長)は、3月の前橋地裁に続き再び国の責任を認め、国・東電双方に賠償を命じた。判決が出た原発賠償訴訟は3例目となる。
判決は、地震調査研究推進本部(推本)の地震に関する長期評価が発表された2002年時点で津波襲来を予見できたのに対策を取らなかったとして、国の責任を認定。「2008年段階で津波を予見できた」とした前橋判決と比べても、国が津波を予見可能だったとする時期を6年も前倒しする、国にとってさらに厳しい内容となった。
賠償額は原告3800人に対し5億円で、1人当たり約13万円となる。低額の賠償水準で、原告が求めていたふるさと喪失の損害を認めない(9月の千葉地裁はこれを認めた)などの点で今後に課題を残した。原告が求めていた原状回復も「知見が確立されていない」として退けた。原発事故が起これば、汚染地を元に戻す方法はないと、司法が公に認めたことになる。
今回の裁判が、先行した前橋、千葉の判決と大きく異なる点は、避難者中心の訴訟ではなく、避難せず福島に残って生活を続ける人が原告全体の8割を占めるところにある。今回、福島に残り、被曝しながら生活を続ける住民の苦しみが、具体的な国の責任として、金銭的価値を伴って認定された意義は大きい。「自主」避難者らが福島県を相手に住宅無償提供の継続などを求めてこの間、何度も交渉を続けてきたが、そのたびに県官僚から「福島に残った人たちはみんな“普通”に暮らしている」と暴言を浴びせられ、涙を流してきた。福島に残る人たちにも苦しみがある、残った人たちも、自分たちは普通なんだとなんとかして自分自身に思い込ませようとしているだけで、すべてが元に戻ったわけではない、被害が消えたわけではないと裁判で認められたことは、福島県による「普通に暮らしている」論を打ち破る大きな根拠を得たことになる。この点にこそ今回の判決の最も重要な意義がある。
この判決を根拠として、「福島県に残っている人の被害も裁判所が公式に認めたのだから、県は真剣に対策を取れ」と要求できる。自分たちにとって都合の悪いことはすべて「風評被害」で片付け、まともに向き合ってこなかった福島県。ナントカのひとつ覚えのように、いつまでも風評風評と騒ぐ暇があるなら、そろそろいい加減で被害者の声と向き合ってもらいたい。