5月28日、この日から開講となったさっぽろ自由学校「遊」の特別講座「福島を遠く離れて」に参加してきた。この特別講座は、この日の第1回目を皮切りに、9月まで毎月1回、最終水曜日に計5回開催される。
この日、トップバッターとして講師を務めたのは、札幌市に本拠地を置く避難者団体「チームOK」の代表、森田千恵さん。森田さんとは、先日報告した木下黄太氏のウクライナ報告会でお会いした。福島からではなく群馬からの避難者である。この日の話の内容は以下の通り。
・原発事故での北海道への避難者は約7800人。当初はそのうちの6~7割がいわゆる「母子避難」だったが、現在は、父親が転居してきて同居となるケースが増えた結果、母子避難の割合は5割程度に減っている。避難者の内訳は、福島からが70%、宮城からと関東からが各15%ずつ。
・チームOKの「OK」とは、「避難してOK」「OK FOOD」(安心できる食料)「OKLIFE」(安心できる生活)にちなんで名付けた。みんなが自主避難を、負い目ではなく誇りに思えるようにするために、避難者の笑顔の写真をホームページにできる限り載せていくのが基本方針。
・(10年ほど前に躁うつ病と診断され、精神障害者として障害者手帳を持つ森田さん自身の経験を踏まえ)原発自主避難と精神障がいには共通点がある。どちらも「なりたくてなったわけではない」こと。ただ、精神障がいになるのに自分の意志は全く介在しないのに対し、自主避難はまだ「自主」的に決めただけに自分の意志が介在できる余地がある(だからこそ、自分の決断が間違っていたのではないかという思いを自主避難者は常に抱え、自分を責めている)。
以上の通り話した上で、森田さんは、今後、自主避難者が避難先で自立して生活を確立していくために、
(1)自分と向き合う
(2)(今まで当たり前と思っていたそれまでの生活基盤や人間関係を)手放す力
(3)無駄に集まる(ネットではなく顔が見える場を頻繁に持つ)
(4)1人の100歩より100人の1歩
(5)旗を掲げて門を閉ざさず(常に「チームOKはここにいるよ」という旗を立てる)
(6)できる人ができることを
(7)できる人は半歩前へ
(8)本当の自立とは、共に生きる仲間を自分でつくること
・・・を提唱。そして「活動のために子どもに寂しい思いをさせることがあっても、最後に子どもは必ず理解してくれる」と締めくくった。
1時間にわたる話を聞いて、自主避難に成功した人とそうでない人を分けたのは(2)の「手放す力」が大きいと私は思う。それまで持っていたものを手放すことはマイナスのイメージが強いが、それを新しいものを獲得していくプロセスとして捉える逆転の発想が必要なのだろう。
「避難者の笑顔の写真をホームページにできる限り載せていく」というチームOKの基本方針は斬新だと思う。多くの福島県民が未だに避難をできないでいる背景に、もちろん、国・福島県による徹底的な避難者敵視政策があることはいうまでもないが、それとともに「避難者が苦しんでいる」式の意図的、一方的な報道ばかりが行われていることも大きい。自主避難に前向きな未来が描けなければ多くの人が踏み切れないのは当然で、自主避難者が避難先で成功し、苦しさの中でも未来を見据えて生きている姿が発信されることが必要ではないだろうか。原子力村の手先と化し、真実をねじ曲げてまで「美味しんぼ」叩きに狂奔する大手メディアにはこの仕事は決して果たせない。私たち市民自身が、そうした未来志向の自主避難者の姿を肯定的に捉え、発信していくことで「自主避難は悪いことではない」と多くの人の背中を押す結果につながればよいと思う。
森田さんが掲げた(1)~(8)までの項目は、自主避難者が避難先で自立していくために何が必要か、という文脈で語られたものだが、単にそれだけにとどまらず、私たちが原発再稼働を阻止し、廃炉につなげるために何が必要か、という問いかけに対しても十分な回答になる。反原発運動に限らず、あらゆる闘いにもそのまま通用する「方程式」のようなものだ。小出裕章・京大原子炉実験所助教が「自分ひとりで40年頑張っても1基の原発も止めることができなかったが、3.11以降、1億人の日本人が頑張った結果、50基の原発が全部止まっている。みんながそれぞれ、できることをしていけば原発は明日にでも止められるし、なくすことができる」と発言している。このことは、森田さんが指摘した「(4)1人の100歩より100人の1歩」にも通じる。1人が1億歩進もうと思えば、気が遠くなってどんな人でも倒れてしまうが、1億人が1歩進むなら明日にでも実現できる。反原発の闘いを「一部のイカれた少数派の闘い」として孤立させないよう守っていくことが大切だ。
なお、最後にひとつ、予告も兼ねたお知らせ。この講座の最終回(5回目、9月24日(水)開催分)は、当ブログ管理人が講師を務める予定になっている。札幌近郊の方で興味をお持ちの方は、私の拙い話でよければ、ぜひ参加してほしい。
この日、トップバッターとして講師を務めたのは、札幌市に本拠地を置く避難者団体「チームOK」の代表、森田千恵さん。森田さんとは、先日報告した木下黄太氏のウクライナ報告会でお会いした。福島からではなく群馬からの避難者である。この日の話の内容は以下の通り。
・原発事故での北海道への避難者は約7800人。当初はそのうちの6~7割がいわゆる「母子避難」だったが、現在は、父親が転居してきて同居となるケースが増えた結果、母子避難の割合は5割程度に減っている。避難者の内訳は、福島からが70%、宮城からと関東からが各15%ずつ。
・チームOKの「OK」とは、「避難してOK」「OK FOOD」(安心できる食料)「OKLIFE」(安心できる生活)にちなんで名付けた。みんなが自主避難を、負い目ではなく誇りに思えるようにするために、避難者の笑顔の写真をホームページにできる限り載せていくのが基本方針。
・(10年ほど前に躁うつ病と診断され、精神障害者として障害者手帳を持つ森田さん自身の経験を踏まえ)原発自主避難と精神障がいには共通点がある。どちらも「なりたくてなったわけではない」こと。ただ、精神障がいになるのに自分の意志は全く介在しないのに対し、自主避難はまだ「自主」的に決めただけに自分の意志が介在できる余地がある(だからこそ、自分の決断が間違っていたのではないかという思いを自主避難者は常に抱え、自分を責めている)。
以上の通り話した上で、森田さんは、今後、自主避難者が避難先で自立して生活を確立していくために、
(1)自分と向き合う
(2)(今まで当たり前と思っていたそれまでの生活基盤や人間関係を)手放す力
(3)無駄に集まる(ネットではなく顔が見える場を頻繁に持つ)
(4)1人の100歩より100人の1歩
(5)旗を掲げて門を閉ざさず(常に「チームOKはここにいるよ」という旗を立てる)
(6)できる人ができることを
(7)できる人は半歩前へ
(8)本当の自立とは、共に生きる仲間を自分でつくること
・・・を提唱。そして「活動のために子どもに寂しい思いをさせることがあっても、最後に子どもは必ず理解してくれる」と締めくくった。
1時間にわたる話を聞いて、自主避難に成功した人とそうでない人を分けたのは(2)の「手放す力」が大きいと私は思う。それまで持っていたものを手放すことはマイナスのイメージが強いが、それを新しいものを獲得していくプロセスとして捉える逆転の発想が必要なのだろう。
「避難者の笑顔の写真をホームページにできる限り載せていく」というチームOKの基本方針は斬新だと思う。多くの福島県民が未だに避難をできないでいる背景に、もちろん、国・福島県による徹底的な避難者敵視政策があることはいうまでもないが、それとともに「避難者が苦しんでいる」式の意図的、一方的な報道ばかりが行われていることも大きい。自主避難に前向きな未来が描けなければ多くの人が踏み切れないのは当然で、自主避難者が避難先で成功し、苦しさの中でも未来を見据えて生きている姿が発信されることが必要ではないだろうか。原子力村の手先と化し、真実をねじ曲げてまで「美味しんぼ」叩きに狂奔する大手メディアにはこの仕事は決して果たせない。私たち市民自身が、そうした未来志向の自主避難者の姿を肯定的に捉え、発信していくことで「自主避難は悪いことではない」と多くの人の背中を押す結果につながればよいと思う。
森田さんが掲げた(1)~(8)までの項目は、自主避難者が避難先で自立していくために何が必要か、という文脈で語られたものだが、単にそれだけにとどまらず、私たちが原発再稼働を阻止し、廃炉につなげるために何が必要か、という問いかけに対しても十分な回答になる。反原発運動に限らず、あらゆる闘いにもそのまま通用する「方程式」のようなものだ。小出裕章・京大原子炉実験所助教が「自分ひとりで40年頑張っても1基の原発も止めることができなかったが、3.11以降、1億人の日本人が頑張った結果、50基の原発が全部止まっている。みんながそれぞれ、できることをしていけば原発は明日にでも止められるし、なくすことができる」と発言している。このことは、森田さんが指摘した「(4)1人の100歩より100人の1歩」にも通じる。1人が1億歩進もうと思えば、気が遠くなってどんな人でも倒れてしまうが、1億人が1歩進むなら明日にでも実現できる。反原発の闘いを「一部のイカれた少数派の闘い」として孤立させないよう守っていくことが大切だ。
なお、最後にひとつ、予告も兼ねたお知らせ。この講座の最終回(5回目、9月24日(水)開催分)は、当ブログ管理人が講師を務める予定になっている。札幌近郊の方で興味をお持ちの方は、私の拙い話でよければ、ぜひ参加してほしい。