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安全問題研究会(旧・人生チャレンジ20000km)~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

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ローカル鉄道に国・自治体・住民はどう向き合うべきか(月刊『住民と自治』 2022年8月号掲載)
核のない未来を願って 松井英介遺稿・追悼集(緑風出版)

●安全問題研究会が、JRグループ再国有化をめざし日本鉄道公団法案を決定!

●安全問題研究会政策ビラ・パンフレット
こんなにおかしい!ニッポンの鉄道政策
私たちは根室線をなくしてはならないと考えます
国は今こそ貨物列車迂回対策を!

【安全問題研究会の政策提案】新型コロナウィルス感染拡大後における医療従事者の待遇改善

2022-01-08 21:13:00 | その他社会・時事
安全問題研究会が、新型コロナに関して、昨年2月、医療従事者の待遇改善に関する政策提案を行ったことには、大晦日の「2021年10大ニュース」発表の際に少し触れた。秋以降、コロナ感染が急速に収束に向かっていたことから、どのタイミングでこの内容を発表するか計りかねていたが、年明け以降、再び新型コロナ感染が急拡大してきたことを踏まえ、このタイミングで内容を発表することにする。

すでに1年近く前だが、この提案が厚労省に聞き流されていまだ実現していないことを考えると、発表する価値は今もなお衰えていないと思うからだ。

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2021年2月10日

内閣総理大臣 菅 義偉 殿
厚生労働大臣 田村 憲久 殿

              平和と民主主義をめざす全国交歓会(ZENKO)

  新型コロナウィルス感染拡大後における医療従事者の待遇改善に関する請願書

[請願趣旨]
 新型コロナウィルス感染拡大後、各医療現場は不眠不休の対応を強いられており、その奮闘は1年を超える状況になっています。医療現場にとって、新型コロナとの闘いに収束のめどが立たないことが事態への対処を困難にしています。

 新型コロナウィルスの感染拡大によって、他の病気やけがの治療や診察も困難になっており、医療従事者の疲弊は深まっています。また、感染をおそれ、既往症患者が通院を控える動きも強まっており、新型コロナ病棟を抱える医療機関は、新型コロナウィルス対応に人手を割けば割くほど通院者が減り、医療機関の経営が困難になるとともに、医療従事者の待遇が経営悪化で引き下げられる事態も起きています。これほどの負担を医療従事者に強いる以上、待遇を上げるのが当然なのに、逆に待遇が下がるまま放置されているのは国の新自由主義的医療政策の明らかな誤りであり、直ちに転換されなければなりません。

 このような中、人事院は、2020年11月27日に人事院規則9-129-4(東日本大震災及び東日本大震災以外の特定大規模災害に対処するための人事院規則9-30(特殊勤務手当)の特例)の一部を改正しました。2020年4~5月の緊急事態宣言期間中、空港などの現場で新型コロナウィルスに感染し、または感染している恐れのある海外からの入国者の身体に接触する業務(移送など)に従事した法務省出入国在留管理庁職員、厚労省検疫所職員に対し、特殊勤務手当をさかのぼって支給することを内容とするものです。

 新型コロナ対策に関連し、危険業務に従事する国家公務員に特殊勤務手当の支給が認められたことは大変有意義なことですが、本来であればこうした手当は低待遇と誹謗中傷被害に長期にわたってさらされ続けている在野の医療従事者にこそ支給されるべきものです。

 当会の試算では、全国の保健師、助産師、看護師、准看護師に対してこれと同等の手当を創設しても、必要な金額は年間1.9兆円に過ぎません。菅内閣がコロナ対策として計上している予備費7兆円の中から十分まかなえる額です。政府・厚労省の責任で直ちに医療従事者にコロナ対策手当を支給すべきです。

[請願項目]
1.2020年11月27日付改正人事院規則9-129-4に基づいて、新型コロナ対策に従事する法務省出入国在留管理庁職員、厚労省検疫所職員に支給されているコロナ対策手当と同等の手当を、新型コロナウィルス対策関連業務に従事している全国すべての医療従事者に対して、新型コロナウィルスが収束するまで支給すること。なお、人事院規則に基づく国家公務員への支給額は以下の通りである。

(1)感染者の診察、看護、護送業務(法務省出入国在留管理庁職員) 1人1日あたり4,000円(非感染者の場合、3,000円)

(2)入国拒否地域からの例外的入国者のPCR検査、採取、感染者対応業務(厚生労働省検疫所職員) 1人1日あたり4,000円(非感染者の場合、3,000円)

(3)地方自治体からの要請によるPCR検査業務(農林水産省動物検疫所職員) 緊急事態宣言期間に限り、1人1日あたり1,000円

2.最前線で感染対策を行う医療従事者に対する差別的言動、誹謗中傷を防止し、尊厳と名誉を守ることは政府としての責務である。誹謗中傷防止のための政府広報活動を実施すること。

<参考資料>

※看護従事者数は保健師、助産師、看護師、准看護師の合計。
出典:「平成30年(2018年)末看護職員就業状況」(北海道保健福祉部地域医療推進局)

<参考条文>
人事院規則9-129(東日本大震災及び東日本大震災以外の特定大規模災害等に対処するための人事院規則9-30(特殊勤務手当)の特例)<抄>

  第三章 新型コロナウイルス感染症により生じた事態に対処するための人事院規則九―三〇の特例

(防疫等作業手当の特例)
第七条 職員が次に掲げる作業に従事したときは、防疫等作業手当を支給する。この場合において、規則九―三〇第十二条の規定は適用しない。

一 新型コロナウイルス感染症(病原体がベータコロナウイルス属のコロナウイルス(令和二年一月に、中華人民共和国から世界保健機関に対して、人に伝染する能力を有することが新たに報告されたものに限る。)であるものに限る。以下同じ。)が流行している地域を発航した航空機若しくは航行中に新型コロナウイルス感染症の患者があった船舶のうち人事院が定めるものの内部又はこれに準ずる区域として人事院が定めるものにおける新型コロナウイルス感染症から国民の生命及び健康を保護するために緊急に行われた措置に係る作業であって人事院が定めるもの

二 新型コロナウイルス感染症から国民の生命及び健康を保護するために行われた措置に係る作業(前号に掲げるものを除く。)のうち、新型コロナウイルス感染症の患者若しくはその疑いのある者に接して行う作業又はこれに準ずる作業であって、人事院が定めるもの

2 前項の手当の額は、作業に従事した日一日につき、次の各号に掲げる作業の区分に応じ、当該各号に定める額とする。
一 前項第一号の作業 三千円(新型コロナウイルス感染症の患者若しくはその疑いのある者の身体に接触して又はこれらの者に長時間にわたり接して行う作業その他人事院がこれに準ずると認める作業に従事した場合にあっては、四千円)
二 前項第二号の作業 千円(新型コロナウイルス感染症の患者又はその疑いのある者の身体に接触して行う作業に長時間にわたり従事した場合にあっては、千五百円)

3 同一の日において、第一項各号の作業に従事した場合には、同項第二号の作業に係る手当は支給しない。

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2021年 安全問題研究会10大ニュース

2021-12-31 12:33:56 | その他社会・時事
さて、2021年も残すところあとわずかとなった。例年通り今年も「安全問題研究会 2021年10大ニュース」を発表する。

選考基準は、2021年中に起きた出来事であること。当ブログで取り上げていないニュースも含むが、「原稿アーカイブ」「書評・本の紹介」「インターネット小説」「日記」「福島原発事故に伴う放射能測定値」「運営方針・お知らせ」カテゴリからは原則として選定しないものとする。

なお、昨年は新型コロナ関連ニュースを別枠で扱う措置をとったが、今年は東京五輪の強行開催を別として、これ以外の新型コロナ関連ニュースを選考から除外することにした。秋以降、医療関係者・専門家含め誰も説明できない理由で「急激かつ謎めいた新型コロナ感染症の収束」が見られ、社会に一服感が出ていること、コロナ感染症の急激な拡大・急激な収束について科学的評価も社会的評価もまったく定まっていないからである。評価が定まっていない事象のニュース価値は判断することはできない。

1位 新型コロナ禍で東京五輪強行開催の一方で、全国で「医療崩壊」。入院できず自宅死亡者相次ぐ<社会・時事>

2位 広島原爆「黒い雨」訴訟 広島高裁で原告勝訴、国が上告断念 被害者救済へ前進<社会・時事>

3位 リニアで初の死亡事故 静岡知事選では反対の川勝氏再選 JR東海社長「開通時期見通せず」と発言<鉄道・公共交通/交通政策>

4位 菅前政権が「福島原発の汚染水の2年後海洋放出」を決定 福島県民はじめ海外から批判、市民の撤回闘争続く<原発問題/一般>

5位 寿都町長選で核ごみ応募決めた現職・片岡春雄氏6選 町内では文献調査進む<原発問題/一般>

6位 東京都内の公務員住宅で生活する避難者4世帯に対し、福島県が「追い出し訴訟」提訴、闘い始まる<原発問題/一般>

7位 福島原発刑事訴訟、東京高裁で控訴審初公判 2019年の無罪判決以来2年ぶり<原発問題/福島原発事故刑事訴訟>

8位 JR日高本線・鵡川~様似間廃止<鉄道・公共交通/交通政策>

9位 北海道新幹線札幌延伸 手稲山口地区の残土置場にヒ素汚染残土強行搬入 函館本線長万部~余市間の協議は越年へ<鉄道・公共交通/交通政策>

10位 英国政府が鉄道再国有化・大規模な廃線復活を決定 コロナ対策・脱炭素で<鉄道・公共交通/交通政策>
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【番外編】
・アフガニスタンで米軍撤退に伴いタリバンが20年ぶり政権掌握<社会・時事>
・コロナの影響を受け、コメ・生乳の需給が歴史的緩和。コメ価格急落<農業・農政>
・水樹奈々さん、第1子出産を発表。9月限りで所属事務所「シグマ・セブン」も退社し新たな活動へ<芸能・スポーツ>
・秋篠宮家次女眞子さん、小室圭氏と結婚し皇室離脱 米NYへ移住<社会・時事>

【当研究会関連】
・安全問題研究会がJRを再国有化し全国1社体制に戻す「日本鉄道公団法案」を公表
・安全問題研究会代表が共著者に加わった「地方における鉄道の復権~持続可能な社会への展望」(緑風出版)発売
・安全問題研究会代表が寄稿した「核のない世界を願って~松井英介遺稿・追悼集」(緑風出版)発売
・安全問題研究会代表が取材協力した映画「日高線と生きる」(稲塚秀孝監督)が公開

2021年は、新型コロナ禍で世界がよい方向へ変化するとの希望は持てなくなったこと、「野党共闘」が最大限成立したにもかかわらず総選挙が与党勝利で終わったことから、当ブログ管理人はいわゆる「政局」的なものへの関心は完全になくなりました。菅政権から岸田政権への交代を10大ニュースで取り扱わなかったのは管理人のそうした心境の変化です。

今後は、当研究会が取扱う2大テーマである公共交通問題・原発問題に影響が及ぶ範囲内で政局を限定的に扱うことがありますが、「政局」それ自体をメインテーマとして取り扱うことは原則としてしません。これまで必ず行ってきた投票にも今後は行くかどうかわかりません。

当研究会の興味・関心は政局から「人々がこの危機をどのように分析・認識し、立ち向かっているか」に移行しています。一方で政治と商業メディアには完全に絶望しました。「北海道新聞」の購読をやめ「赤旗」に切り替えたのは、政局より「危機に立ち向かう人々の動きと闘い」を自分の政治的基盤にしたいと考えたからです。今後もこの心境が変わることはないと思います。

一方、安全問題研究会にとって今年はきわめて大きな収穫の1年でした。上でご紹介したとおり、今年は当ブログ管理人の長年の執筆活動が実り、2冊の本が出ました。また、取材協力した映画「日高線と生きる」も公開されました。当研究会の活動がこれほど見える形で実った年はありませんでした。

新年早々に公表した「日本鉄道公団法案」には大きな賛同の声がありました。そうした声を寄せてきたのは若い世代が中心で、改めて若い世代は政権批判よりも対案の提案を強く求めていることが証明されました。若い世代(特に20~30代男性層)は自民支持が強いという調査結果も報告されていますが、それは積極的支持というより「代替案がどこからも示されないなら、安定しているほうがいい」という消極的「政権担当能力」信仰に過ぎないことを物語っています。

当ブログで公表していませんが、今年2月には、新型コロナ対応に当たっている看護師などの医療従事者に特別手当を支給するよう求める対案を厚労省に提案して交渉に臨みました。厚労省からは「1つのご提案として承る」として実質、ゼロ回答でしたが、来年以降も当研究会は次々と対案を提案していくことにしています。

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日本の後進性を余すところなく暴露した東京五輪「万歳」! 強行開催すれば「先進国・日本」の墓場だ

2021-06-25 21:12:15 | その他社会・時事
(この記事は、当ブログ管理人が月刊誌「地域と労働運動」2021年6月号に発表した原稿をそのまま掲載しています。)

 ●暴かれた後進性

 冗談だと思っていた東京五輪の強行開催が現実のものになってきた。世論調査で8割の国民が反対し、海外メディア、それも日頃は同盟国の立場である英米メディアからも再三にわたって中止勧告を受けながら、それらをすべて無視しての開催だ。菅義偉首相は先のG7(先進7カ国首脳会議)で「すべての首脳から開催支持を取り付けた」と主張するが、各国首脳が表明したのは日本の「開催に向けた努力」への支持であり、開催そのものへの支持ではないことは何度でも強調しておかなければならないだろう。

 もっとも、こうなるかもしれないという予感はなかったわけではない。1936年ベルリン五輪はナチスドイツ支配下で開催され、開会宣言はアドルフ・ヒトラーが行った。一部の超優秀なユダヤ人選手が国威発揚のためドイツ選手団に加えられる一方、「その他大勢のユダヤ人」が毎日大量にガス室送りとなっているすぐ隣で、五輪旗がスタジアムに平然と翻り続けた歴史を持つ。そんな悪魔の祭典としての五輪が「たかがコロナごとき」で止まる合理的な理由が思いつかないからである。加えて、日本と日本人の底流を支配する、一度決めたことからは何があろうと撤退できない心性は、退却ができないまま各地で「玉砕」を続けた旧日本軍以来変わっていないからだ。

 東京五輪に1つだけ評価すべき点があるとすれば、日本の後進性を世界に向けて徹底的に暴露したことだろう。2020年1月に始まった新型コロナ感染拡大と五輪をめぐる一連の騒動で、もはや日本を先進国だと思っている市民はほとんどいなくなったように思える。仮にも世界3位の経済大国が自国でワクチン生産もできず、接種率は5月18日時点で3.8%。OECD(経済協力開発機構)加盟国で最低レベルであり、OECD外に広げても、インド(10.4%)やインドネシア(5.1%)にも及ばない。世界では110位前後であり、ミャンマーやマレーシア、ナミビアなどアジア・アフリカの途上国と同水準である。

 五輪準備過程では森喜朗・前東京五輪組織委会長の「女性が会議室にいると会議が長い」という差別発言があった。お笑い芸人・渡辺直美さんを豚に見立てて「オリンピッグ」などと侮蔑する演出案を、演出担当者が冗談半分とはいえグループ通信用スマホアプリ「LINE」に残る形で発言し、辞任に追い込まれたことも記憶に新しい。

 世界経済フォーラムが毎年公表しているジェンダーギャップ指数は、最近は日本国内でも一般報道される機会が増え、認知されてきたが、今年3月に公表された2021年版によれば、日本は世界156カ国中120位。とりわけ「政治」部門は惨憺たるもので、147位とついにワースト10入りした。当然、日本より下は9カ国だけ。限られた本誌の紙幅の中でも列挙できるので並べておくことにしよう。カタール、ナイジェリア、オマーン、イラン、ブルネイ、クウェート、イエメン、パプアニューギニア、バヌアツ。ほぼすべてが中東・アフリカのイスラム圏か、部族主義政治体制が続く南太平洋諸国である(注1)。

 この間、一律10万円の給付金をめぐって自治体窓口に長蛇の列ができたり、ワクチン接種のためのスマホアプリが機能せず混乱が続いたりするなど、日本のIT後進国ぶりも浮き彫りになった。ジェンダーもITもワクチンも後進国となる一方で、日本が先進国と呼べる分野がどこかにあるだろうか。少なくとも筆者にはまったく思い当たらない。

 ●海外メディアから「独裁国家」認定された日本

 そもそも日本はなぜこんな惨状に陥ってしまったのか。スウェーデン・ルンド大学のある日本研究者は「仮に私がオリンピック選手だったらまだトレーニングをやめることは絶対にないだろう。なぜなら、大会を中止するか続行するかの判断は、感染率という単純な問題ではないからだ。ここで疑問に思うのは、世論が本当に重要なのかということだ」と前置きした上で、次のように指摘する(注2)。「日本は投票率が極めて低い国だ。選挙制度の特殊性もあり、自民党は政権を維持するのに有権者の過半数に近い数字を獲得する必要がない。前回の総選挙では、わずか25%の有権者しか自民党に投票しなかったにもかかわらず、自民党は60%の議席を獲得した。つまり、世論は重要だが、決定的なものではないということだ。一部の野党リーダーはオリンピックに反対しているが、全体的に野党は弱く、分裂している。自民党は過去65年間のうち61年間政権を維持しており、国内の主要な問題について世論を無視しても再選を果たしてきた長い歴史がある。菅首相の視点では、国内の世論というのは複雑な方程式の中の1つの要素に過ぎない」。特殊な選挙制度のために国民の4分の1の支持だけで1党優位を維持できる自民党にとっては、民主主義国家なら本来最も重視されるべき「民意」もせいぜいチェスの駒の1つに過ぎないということである。

 東京五輪が日本社会の抱える危機を象徴しているという、もっと端的な指摘は日本国内からも出ている。近現代史研究家の辻田真佐憲さんは「五輪開催に固執すればするほど、日本は先進国としての威厳を失い、世界に恥部をさらし続けています。こうした状況の国を、先進国と呼んでいいのか疑問です。日本は五輪という名前の「先進国としてのお葬式」を執り行う段階にまで突き進んだのです」として、五輪が「先進国としての日本」のお葬式になると痛烈に批判する(注3)。確かに、新型コロナ感染拡大以降の日本には「終末感」「絶望感」「閉塞感」が漂っていて、打開の道もなかなか見えてこない。

 東京五輪の開催強行がどうしても避けられないなら、辻田さんの指摘を受け、筆者からひとつだけ提案がある。開会式の演出を「先進国・日本の葬儀」に変更してほしいのだ。「先進国・日本」と書いたシャツを着た日本人とおぼしき人形をみんなで納棺し、僧侶が読経する。その後は彼(彼女かもしれない)をみんなで荼毘に付す。BGMはもちろん「葬送行進曲」にして、厳かに執り行う。そして、「この大会の閉会後、日本は先進国ではなくなるので、先進国としての経済援助や政治的立ち振る舞いを我が国に期待しないでほしい」と宣言するのだ。

 1964年の東京五輪が、戦災から「復興」した日本が先進国の仲間入りをする歴史的地点に立っていたとするならば、今回の東京五輪はそれとは逆に日本が先進国としての終わりを告げる歴史的地点に立っていることの象徴として開催されるべきである。東京五輪に反対していた人たちを含め、開催強行を前提とするなら国民の「総意」を得られるほとんど唯一の方法だろう。

 ●独裁国家と五輪をめぐる奇妙な「法則」

 自民党が全有権者のわずか25%の票で議席の6割を独占する「特殊な選挙制度」を持つ日本を半独裁国家であるとする海外メディアの論評が出ていることはすでに述べたが、独裁国家と五輪をめぐっては奇妙な「法則」がある。1党独裁国家が五輪を開くと、少なくない確率でその国家と独裁政党は概ね10年後に崩壊、消滅しているのだ。

 冒頭に紹介したナチスドイツは開催から9年後の1945年に敗戦で滅亡した。ソ連によるアフガニスタン侵攻に抗議する西側諸国のボイコットの中でモスクワ五輪が開催されたのは1980年だが、国力を衰退させたソ連は11年後の1991年に解体する。1984年、ユーゴスラビアは、連邦を構成する6共和国の1つであるボスニア・ヘルツェゴビナ共和国の首都サラエボで冬季五輪を開催したが、その後、国家は民族主義の台頭で激しく動揺。血で血を洗う凄惨な内戦の末、1995年までに解体。独裁政党・ユーゴスラビア共産主義者同盟も運命を共にした。ナチスドイツに占領されながらも、外国勢力の手を借りず、独力で対独パルチザンを組織し国土を解放、戦後はソ連による乱暴な政治的干渉をはねのけ、コミンフォルム(欧州共産党・労働者党会議)からの除名という処分を受けながらも、第3世界の旗手として存在感を発揮したチトー大統領に率いられたユーゴスラビア共産主義者同盟ですら、五輪による国力衰退に屈したのである。

 もちろん、2008年に北京五輪を開催した中国共産党は10年後の2018年を過ぎても残存しており、すべての独裁政党がこの法則に当てはまるわけではない。だが、歴史を「総合的、俯瞰的」に眺めると、五輪開催で滅亡した1党独裁政党には共通点があることに気づく。破竹の勢いだったヒトラーに陰りが見え始めた段階で五輪を開催したナチスドイツ、ブレジネフ時代の長い政治的・社会的・経済的低迷の時代を経て国力に陰りが見え始めた状態で五輪を開催したソ連、チトー亡き後の長い混乱と低迷が続いた後で五輪を開催したユーゴスラビア。いずれにも共通しているのは、国力が衰退し始めてから五輪を開催しているという点である。したがって筆者は「衰退に入った1党独裁国家が五輪を開催すると、概ね10年後にその独裁政党は滅亡する」に一部修正の上、この法則が適用できるのではないかと思っている。

 この「法則」は日本と自民党には当てはまるだろうか。「失われた20年」と呼ばれる長い社会的低迷の後の開催であること、過去30年で労働者の賃金が上がっていないほとんど唯一の国であること、老人支配が横行し、若者や女性が希望を失っていることなどを考えると、どうやら適用できそうな気配が濃厚だ。

 本誌読者を初め、日本の市民のみなさんは、東京五輪が強行開催されても「また負けた」「結局いつもと同じ」「何も変わらなかった」と落胆しないでほしい。私の見立てたこの法則通りなら、10年後、自民党もナチスドイツ、ソ連共産党、ユーゴスラビア共産主義者同盟と同じ運命をたどる。今までどんなに歯を食いしばって頑張っても自民党に邪魔されて実現できなかった政策を、そのとき思い切りやろう。だから読者のみなさんもあと10年長生きし、「自民党のない日本」が到来したら実現したいことを、ぜひ政策集にまとめておいてほしい。

注1)日本はいよいよ「後進国」に…世界が驚いた「男女格差の深刻実態」「156ヵ国中120位」を考える(「現代ビジネス」2021年4月9日付記事)

注2)海外メディアが指摘「選挙に負けない自民党は『国民の声』を聞いて、五輪を中止する理由がない」(「クーリエ・ジャポン」2021年5月29日付記事)

注3)辻田真佐憲「日本の『後進国』ぶりが世界中に暴露される五輪になる」(「週刊朝日」2021年3月26日付記事)

(2021年6月20日)

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厚労省は今回のコロナ禍を予見していた! 無為無策のまま私たちを「タケヤリで戦わされる帝国臣民」にした政府の罪を問う

2021-05-16 22:01:02 | その他社会・時事
(この記事は、当ブログ管理人が「レイバーネット日本」に発表した記事をそのまま掲載しています。)

 ●日本の本質「刺す」意見広告

 「ワクチンもない。クスリもない。タケヤリで戦えというのか」

 5月11日、朝日、日経、読売3紙の紙面を飾った全面意見広告の刺激的な内容は瞬く間に話題になった。出稿したのは宝島社だ。

 広告出稿のタイミングが絶妙だと思う。新型コロナの感染拡大に対し、市民に「お願い」ばかりで何ひとつ実効ある対策を打てない政府、自己保身に走りバラバラの市民、破滅を招く無謀な作戦であると誰もが知りながら止められず「昔本土決戦/今東京五輪」に突き進む政府の姿を見て、大戦末期に似てきたという声を聞くことがこのところ多くなってきたからだ。ウソだと思うならテレビはともかく、新聞、雑誌、ネットを見てみるといい。この意見広告掲載当日の日経7面には「80年間、なぜ変われないのか」と題した秋田浩之・同社コメンテーターの意見が掲載されている。「戦略の優先順位をはっきりさせない泥縄式対応」「縦割り組織の弊害」「何とかなるという根拠なき楽観思考」……そこで指摘されている日本の欠点も80年前と変わらない。

 壊れたスピーカーのように菅首相が繰り返す「明日はワクチンが来る来る」という大本営発表にもそろそろ飽きてきた。「明日は神風が吹く吹く」と煽り続けた帝国陸海軍のようで滑稽きわまりない。そんな感覚が市民各界各層の間で強まり始めた矢先、早くもなく遅くもない絶妙のタイミングで意見広告を打った宝島社はさすがだ。

 この意見広告を快く思わない勢力(おそらく自民党支持者)からは「意見広告に使われている女子の持っている武器はタケヤリではなく薙刀だ」というどうでもいい批判が続いているが、そのようなつまらない批判に対しては「事態の本質を見極めず枝葉末節にばかりこだわる大局観の欠如」を、当時と今に共通する日本の4つ目の欠点として付け加えておくだけで十分だ。

 ここを見ているかもしれない若い読者に向けては若干、説明が必要だろう。太平洋戦争の戦局が悪化し、誰の目にも敗色濃厚となってきた1944年2月23日付け「毎日新聞」は、竹槍で米軍戦闘機B29を突き刺すという無謀きわまる作戦に対し「竹槍では間に合はぬ。飛行機だ、海洋航空機だ」と批判する社説を掲載した。執筆したのは同社の新名丈夫記者。ストレートな批判を受け激怒した陸軍は「報復」として新名を召集するという暴挙に出たが、海軍航空力増強を望んでいた海軍の計らいで除隊され、フィリピンに匿われた。

 この「竹槍事件」は、日本勝利のためなら軍部批判もある程度許されていた大戦初期から、「日本勝利のためであっても軍部批判はタブー」となる方向への政府の方針転換を決定づけ、戦争と言論をめぐる日本の歴史的転回点ともなった。今回の宝島社の意見広告が「竹槍では間に合はぬ」のパロディーであることを、特に若い読者のみなさんには知っていただきたいと思う。

 近代化し、民主主義化したように見えても、危機になるたびに顕在化し、繰り返される同じ失敗パターン。日本の本質は根底では変わっていないように思える。本当に政府はこの事態を予見不可能だったのか。

 ●政府・厚労省はこの事態を予見していた! 公文書が明かす事実

 筆者の手元に1つの公文書がある。「ワクチン・血液製剤産業タスクフォース顧問からの提言について」と題するもので、厚労省が2016年10月18日付で報道発表したものである。取材源は明かせないが、「本当は翌19日に公表予定だったところ、公表前に一部メディアに漏れたため厚労省が報道発表を1日早めた」との情報とともに、筆者も公表直後に入手していた。重要な公文書に違いないが、当時はパンデミックが差し迫った課題でなかったことから、筆者も忘れていた。大型連休中にふと、思い出し検索してみたところ、公表当時のまま掲載されている。

 『この提言の内容は、厚生労働省内に設置された本タスクフォースにおける議論の内容を整理し、反映させた唯一の文書である。したがって、この内容を広く国民や関係業界に共有する必要があるとともに、具体的な施策へ結実させるべく、さらに具体化に向けた検討を進めるための前提となるものである』と述べられており、一般市民への公表を前提として作成されたものだ。今も厚労省ホームページに掲載されているので、興味のある方はご覧いただきたい。

 「ワクチンに関する中長期的なビジョンおよび国家戦略が不明確である」「定期接種化の決定プロセスの独立性および透明性が不十分である」「施策決定に必要な疫学データの収集及び分析を行う基盤が脆弱である」「予防接種及びワクチンの有効性・必要性や副反応の可能性などについての国民的理解を得る取り組みが不足している」「世界的には、メガファーマ4社でワクチン市場の約7割を占めるなど、製薬企業の統廃合等により規模の拡大と寡占化が進んでいる一方、国内市場では統廃合が進まず極めて小規模のままであることから、研究開発費能力や海外展開および国際競争力に乏しい」「ワクチン等の安定供給確保、・・(中略)・・について、国による取り組みが不十分である」「パンデミックワクチンや不採算となりやすい分野について、国内での製造体制確保等が道半ばである」……。

 「ワクチン産業・行政の現状(課題)」としてこの公文書が指摘している問題点を抜き出し列挙してみた。どれも今まさに問題とされている点ばかりである。今回のコロナ危機をまるで正確に予見していたかのようだ。

 これらの問題点を指摘した人物は一体誰なのか。公文書をさらに読み進む。厚労省にこの提言を行った「ワクチン・血液製剤産業タスクフォース顧問」として4名の専門家の氏名が記載されている。筆頭に記載されているのは「尾身茂・独立行政法人地域医療機能推進機構理事長」。

 今やテレビでその顔を見ない日はない政府「新型コロナウイルス感染症対策分科会」会長である。尾身会長は新型コロナウィルス感染拡大が始まる4年も前に、今日の事態を予見し、政府にその対策を訴えていたのだ。

 尾身氏を初め、政府に提言を行った4名の専門家はワクチン・血液製剤産業タスクフォースの「顧問」すなわちアドバイザー的立場だ。彼らの提言を受け対策を実行する責任は当時も今も厚労省にある。だが厚労省は提言を無視し実行しなかった。尾身会長にしてみれば「あのとき厚労省が自分たちの提言したとおりの対策をしておけばこうはならなかっただろう」という忸怩たる思いがあるのではないか。後の時代になって政府に「パンデミックは予見できなかった」「想定外だった」という言い訳をさせないためにも、この事実をひとりでも多くの国民に知ってほしい。

 ●「提言」の背景となったある事件

 ここまでで、多くの読者のみなさんは「そもそもなぜこんな提言がこの時期に行われることになったのか」という当然の疑問を抱いたことだろう。提言は「はじめに」でその経緯についても触れている。『今回の一般財団法人化学及血清療法研究所(以下「化血研」)の事案をきっかけに、我が国のワクチン・血液製剤産業・行政について、そのビジョン及び国家戦略が不明確であること、企業のガバナンスの問題や特定企業・団体等に過度に依存している脆弱な供給体制などの諸問題が浮かび上がった。・・(中略)・・その結果として、国際的競争力の低下を招き、日本国民への質の高い薬剤を安定供給するという本来の目的が損なわれかねないといった、問題も明らかとなった』との危機感が背景にあった。

 5年半以上前の事件であり、もう大半の方は思い出すことも困難と思われるので、振り返っておこう。熊本市に本部を置いている化血研が、1970年代から40年以上にわたり、厚生省(当時)から承認されたのとは異なる方法で血液製剤の製造を続けていたことが明らかとなったのは、2015年12月のことだった。化血研は、自分たちの製造法が不正であることを知っており、40年近くも証拠隠ぺいを続けてきた。90年頃からは、幹部の指示で血液を固まりにくくする「ヘパリン」という物質を、これも厚生省の承認に反する形で不正に混入させ製造を続けていた。医療現場がこれを知らずに患者に投与すれば最悪の場合、死亡にすらつながりかねない重大な不正だった。

 厚労省もこの不正を見抜けなかった。化血研が厚労省に対し「承認書通りの方法で製造している」というウソの報告を続けてきたからだ。発覚したきっかけは、現場で実際に行われている製造方法を詳細に記載した資料を添え、厚労省に送られてきた文書だ。組織内部にいる者しか知り得ない情報。内部告発だった。

 不正製造に手を染めた化血研は、1990年代に発覚し大きな社会問題となった薬害エイズ事件における加害企業5社のひとつでもある。薬害エイズ事件の被害者からも「裏切り」だと強い批判を受け、化血研は、宮本誠二理事長が2015年12月2日付で辞任。理事ら他の役員も全員が辞任、降格など何らかの処分を受けた。厚労省も化血研に行政処分を下し「化血研の組織のままの製造再開は認めない」との姿勢を示した。

 厚労省の姿勢を受け、化血研は、それまで手がけてきたワクチン・血液製剤事業の新たな引き受け手を探したが、事業譲渡交渉は難航した。そんな矢先の化血研に、思いがけない災害が追い打ちをかける。2016年4月に発生した熊本地震だ。化血研の製造設備は大打撃を受け、製造再開のめどが立たない事態に陥った(化血研は2018年になり、明治グループと熊本県内の複数の企業、及び熊本県の出資する新会社「KMバイオロジクス」に事業譲渡することで合意。化血研はワクチン・血液製剤製造事業から手を引いた)。

 薬害エイズ事件という戦後最大級の薬害に加害企業として手を染めた化血研だが、利潤を追求せずにすむ一般財団法人という組織形態は、ワクチンや血液製剤の研究開発に専念するのにふさわしく、ウソと隠ぺいにまみれた組織体質を改革できれば、尾身会長らが「提言」で指摘したワクチンや血液製剤研究開発の引き受け手になれる可能性もあった。だがその可能性は、四半世紀の時を経て再び発覚した不正製造に加え、熊本地震という予期せぬ不運も重なって絶たれた。新型コロナ感染拡大から1年以上経つのに、政府は壊れたスピーカーのように1年前と同じ「お願い」を繰り返すだけで、市民はいまだ竹槍と精神主義での闘いを余儀なくされている背景に、戦後半世紀近くにわたって積み重なってきた製薬業界の闇があることは、もっと多くの市民に知られるべき事実であると筆者は考える。

 今、起きている新型コロナの惨劇がこうした歴史の延長線上にある以上、こうすればパンデミックを短期に収束できるという特効薬的解決策は筆者にも思い当たらない。日本での新型コロナ収束には最短でも3年程度はかかると筆者は予測している。竹槍での闘いはあと2年くらいは続くだろう。この記事を読んでいるみなさんも覚悟を持ち、何とかこの危機を生き抜くとともに、ステイホームを機会に新しい時代に向けた構想力を磨いてほしい。収束後の日本がどんな時代になるかはまだ見通せないが、少なくとも「いま」を生き延びられなければ明日がないことだけははっきりしているからだ。

(取材・文責:黒鉄好/安全問題研究会)

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失われた30年、変われなかった日本に迫る「無条件降伏」 第2の敗戦後の新時代に私たちのなすべきこと

2021-02-25 23:50:00 | その他社会・時事
(この記事は、当ブログ管理人が月刊誌「地域と労働運動」2021年3月号に発表した原稿をそのまま掲載しています。)

 今、私には奇妙な時代感覚がある。太平洋戦争末期の時代をリアルタイムで生き、経験しているわけではないにもかかわらず、今の日本社会が抱える絶望的な閉塞状況を通じて大戦末期を疑似体験しているような感覚だ。歴史の中の遠い時代であるはずなのに、「あの時」の社会的雰囲気も今と同じだったに違いないという絶対的確信に近い気持ちが私の中にあるのだ。

 社会全体を覆う絶望的ムードの中、人々が怒りと諦念を同時に抱きながらこの苦しい「今」との決別を待ち焦がれている。みずからの女性蔑視発言に対する内外からの批判の高まりの中で辞任を余儀なくされた森喜朗・東京五輪組織委前会長の、ほとんど唯一の「功績」を挙げるならば、バブル崩壊以降の日本の「失われた30年」、そして女性や若者に「正体不明の忍従」を強いてきた原因のほとんどすべてが「昭和のオヤジ支配」にあることを国内のみならず、全地球人類に知らしめたことだ。

 ●森辞任要求は国際社会からの「ポツダム宣言」だ

 ここ10年近く、国内問題にかかり切りで日本に関わる余裕のなかった国際社会も、この日本の惨状を目の当たりにして「再介入」へ舵を切ったように思える。「森発言」に対する国際世論からの批判は想像以上で、「黙殺すれば日本を待つものは完全なる壊滅のみ」としたポツダム宣言のようだ。

 ポツダム宣言が発表されても、昭和日本の指導部はなんとか「国体護持」したままソフトランディングができないか、「男たちだけの密室会議」が繰り広げられた。すでに日本に逆転の要素はなく敗戦は明らかな情勢だったが、陸海軍指導部はその現実を受け入れられず、右往左往したまま時間だけが過ぎていった。そうした姿勢が連合国側には宣言「黙殺」と受け止められ、原爆投下への準備が進められていくことになった。当時も日本の意思決定層は高年齢男性だけで占められており、会議をいくら繰り返してもいいアイデアなど出るわけがない。国民に向けては「日本は神国。いずれ神風が吹く」と精神論をあおりながら、本土決戦を呼びかけ続けた。やがて原爆投下、ソ連参戦という決定的破局を招き、日本は無条件降伏に追い込まれた。

 最近の日本の惨状を見ると、大戦末期の無為無策の歴史が繰り返されているようにしか私には思えない。国民には多様な意見があるのに受け入れられない。誰もがこのままではいずれ破局を迎えると分かっているのに改革の気運は盛り上がらず、国民の8割が支持している脱原発、受動喫煙防止、選択的夫婦別姓導入などの改革が提起されるたびに、1~2割に過ぎない「正体不明の頑強な抵抗勢力」のためにいつも決まって潰される。東京五輪など無理と分かっているのに、「開会式までに必ず神風は吹く。いや、俺が吹かせてみせる」と「本土決戦」に突き進もうとする。

 国民の大多数には可視化されず巧妙に隠されているが、この「正体不明の頑強な抵抗勢力」の大部分は昭和のオヤジたちであり、その昭和のオヤジが総結集しているのが自民党というカビだらけの組織である。新型コロナウィルスの感染拡大という危機を前にして、「密室・密談・密約」のいわば「3密」(注)で政治・経済・社会のあらゆる領域を支配していた昭和オヤジ支配が揺らぎつつある。「3密」と会食は切っても切れない関係にあり、だからこそ自民党だけがいつまでも自粛破りの会食を続けなければならないのである。初めに述べたように、「宮廷内の密事」として周到かつ巧妙に隠されてきたこの支配構造を、不用意な発言で天下に知らしめてしまったことこそ森前会長のほとんど「唯一」の功績である。自民党は、いっそ自由民主党から「ジジイ飲酒党」に党名変更してはどうか。

 当コラム筆者から提案がある。新型コロナウィルス感染拡大に伴って、補償も十分受けられないのに営業自粛で損害を受けている飲食店向けに、どこかの酒造会社が新酒「自由飲酒党」でも売り出したら案外、売れるかもしれない。旧ソ連で、アルコール依存症の蔓延に危機感を抱いたアンドロポフ共産党書記長が飲酒規制を打ち出したら、党への皮肉を込めて「アンドロポフカ」(アンドロポフ印)の通称で酒を販売した商店があると聞いた(その後、買いに来た顧客ともども検挙されたそうだ。1980年代初頭の話である)。日本でも、国民に自粛を強いながら自分たちだけ特権とばかりに会食を繰り返す「ジジイ飲酒党」への当てつけとしてちょうどいいのではないか。言論・表現の自由がある日本では与党を揶揄する名称の酒を販売しても、旧ソ連と異なり検挙されることはない。

注)頭の良さより「共感力」で人生が決まる納得理由~「無能なナルシスト」は、もう成功しません」(東洋経済オンライン)。記事著者の岡本純子さんは、日本の政財界リーダーは「コミュニケーションは「密談・密室・密約」という3密が基本だと思っている」と厳しく批判している。

 ●過去の失敗などどうでもいいではないか! 総選挙で政権交代を

 民主党政権の無残な失敗以来、日本の市民のほとんどは「自分の生きているうちに二度と政権交代なんて起こり得ないだろう」という諦念にも似た気持ちを抱いて、安倍政権以降の10年近くを生きてきた。その証拠に、安倍政権があれだけのでたらめを続けたのに、安倍政権打倒を求める声はあっても、政権交代を求める声はまったくといっていいほどどこからも聞こえてこなかったからだ。日本では成立の余地などないと証明された「保守二大政党制」という幻想を抱き、政権交代の夢を追い続けてきたのは、私たちのような反自民派よりもむしろ「自民党的なるもの」に飽き足りなかった保守層だったように思える。

 自民党政権の終わりの予感は、菅首相が国民に自粛を強いておきながら、緊急事態宣言下、自分たちだけ連日ステーキ屋で会食をしていた年明け早々から徐々に出始めていたが、そんなことくらいで壊れてしまうほど自民党政権がもろい構造ではないことは、私たち反自民派こそ最もよく知っている。まさか、とずっと思っていた。
ところが、である。「女がいると会議が長い」という無根拠で極めて差別的な森喜朗・東京五輪組織委会長の「暴言」で、ひょっとしたら五輪のみならず、自民党政権の息の根まで止まるかもしれない。そんなムードが急速に出てきたように思える。

 安倍政権以降のここ数年、ネット上の攻撃は弱者にばかり向かっていて、不毛で腹が立つことしかなかった。この間、何度「ネットを辞めよう」と思ったかわからないほどだ。それが今回、批判、攻撃が強者、それも森会長のような「本来向かうべき相手」にきちんと向かったという意味では、久しぶりの「祭り」だと思う。瞬発力の強さという意味では昨年の黒川検事長問題をも大きく超えていて、ネットとしては2012年の「大飯原発再稼働反対官邸前20万人デモ」以来の盛大な祭りだ。

 先日も、買い物に出かけたスーパーで、普段は政治の話をしようとすると遮るようなノンポリの人たちが「私たちが選挙に行かなかったからかしら。自民党以外に入れたらいいの?」と立ち話をしているのを聞いた。ネットでも「どんなに自民党政権がひどくても悪夢の民主党政権よりはマシ」と言っていた人たちが「とにかく自民はダメ。政権交代可能な野党がなくても、国民には自粛しろと言いながら自分は毎日ステーキ食べてるような奴らは一度下野させないと」「俺たち下級国民は重症でも入院できないのに、自民党関係者だけPCRをいつでも受けられ、陽性だったら無症状でも即入院できるなんて許せない」と言い始めている。安保法や黒川検事長問題の時ですらまったく政治に興味がなかった一般の人たちの間に、自民党に対する久しぶりの「懲罰感情」が芽生えているのだ。

 このような状況下で、衆院議員の任期がまもなく切れる。この秋の総選挙は、政府与党が望まない不利なタイミングでの実施を強いられる珍しい形でのものとなる。今後起き得る事態を考えてみよう。

 東京に住んでいると見えないかもしれないが、地方では、熱心に自民党候補者のポスターを貼っているのはたいてい土建業者か、ホテル・飲食店・土産品店などの観光関係の自営業者らである。こうした人たちが営業自粛を強いられているのに、補償は十分もらえていない。意気消沈して「今まで熱心に応援したのに、自民に裏切られた」と感じ、彼らの中から5%くらい棄権が増える。一方で「野党に政権を取らせるところまでは望んでいないけれど、自民党を少し懲らしめたい」と、眠っていた無党派層が10%くらい決起し、安倍政権下で行われた過去6回の選挙で55%前後だった投票率が、60%くらいに少し上がる。

 無党派層、普段はノンポリの人たちの「懲罰感情」ほど怖いものはない。野党側に政権担当準備があってもなくても、勝手に政権が転がり込んでくる、という可能性があるのは実はこんなときだ。直近で言うと、1989年や2009年の政治情勢に似ている。1989年も「女性は政治家の講演会に来てもネクタイの柄を見ているだけで、話の内容なんて聞いていない」という中曽根康弘首相の女性差別発言が出た。ちょうど同じタイミングで、社会党が女性として初めて土井たか子さんを委員長に据えたら、ブームが起きて自民党が参院で過半数割れを起こした。反乱が女性から始まった、という点でも当時とムードが似てきている。

 1月31日に投開票された北九州市議選(定数57)で自民が6議席減の大敗北を喫したが、57議席中の6議席といえば1割強なので、これを定数465(過半数233)の衆院に当てはめると、ちょうど自民が50議席くらい減らす計算になる。現在の279議席から50減らせば229議席で、単独では過半数に達しない。公明党と合わせてようやく政権維持、維新の力まで借りてようやく政権を安定させられるくらいになる。これだけでかなり政治は面白くなると思う。

 地方議会は中選挙区制なので、選挙区によっては3~4位でも当選可能だが、北九州市議選では自民がトップ当選をあまりできていない。小選挙区制はトップ以外当選できない制度なので、北九州市議選よりもっと極端な変動が起きる可能性もある。ただ立憲民主党は、2009年の民主党に比べてもあまりに非力すぎる。自民党に単独で取って代われる強力な野党が存在していない現在、当時のような劇的な形での政権交代という事態はあり得ないだろう。

 だが、1993年のような「熱量の低い形での政権交代」ならば考えられる。有権者としては「自民党を懲らしめる」程度のつもりだったが、小選挙区制であるために思ってもみなかった大規模な与党の議席減少が起き、自民が70~100議席くらい減らす。その結果、自民、公明、維新以外の議席を全部足してみたら、自公維に勝っていた。「もう一度、自公維以外の政党が力を合わせて、政権を作ってみようか」--そんな事態なら、野党第1党が非力な現状でも十分あり得るのである。

 失言で辞任した森前会長が、かつて「無党派層は寝ていてくれるのがいい」という発言をしたことを思い出してほしい。この間、選挙に行かなかった人たちはいつまで民主党政権の失敗にこだわり続けているのか。このような事態を生み出した責任は選挙に行かなかった人々にもある。「国民には自粛しろと言いながら自分は毎日ステーキ食べている自民党」「俺たち下級国民は重症でも入院できないのに、自分たちだけPCRをいつでも受けられ、陽性だったら無症状でも即入院できる自民党」を許せないと思うなら、次はぜひ投票所に足を運び、野党第1党、野党統一の候補が非力でもそこに票を集中させてほしい。5~10%程度の投票率上昇でも上記のような事態を引き起こすことは可能なのである。

 「会社が仕事をもらわなければならないから仕方ないんだ」「商工会長にはお世話になっているから」など、過去のしがらみや人間関係などの情けない理由で自民党に投票しようとしている人を見たら、すべての女性(心ある男性も)は力を合わせて止めてほしい。「それで、その自民党があなたに何をしてくれたの?」「自民党に投票しようとしているということは、あなたも森さんみたいに女がいると会議の邪魔だと思っているの?」と問うてほしいのだ。「自民党のような女性、マイノリティ差別政党に投票するならあなたとは離婚する」と勇気を出してパートナーに告げてほしい。もちろん自分も絶対に自民党にだけは投票してはならない。

 国民の8割が望む政策の実行を妨げているほとんどの原因は昭和オヤジ組織の自民党にある。この党を政権から排除するだけで、「何をしても変わらない」とあきらめかけていた政策の9割以上は実現に向かうだろう。選択のときは半年以内に迫っている。

(2021年2月20日)

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森喜朗の「女性蔑視暴言」が東京五輪だけでなく、自民党政権の息の根まで止めるかもしれない

2021-02-07 23:05:35 | その他社会・時事
民主党政権の無残な失敗以来、日本の市民のほとんどは「自分の生きているうちに二度と政権交代なんて起こり得ないだろう」という諦念にも似た気持ちを抱いて、安倍政権以降の10年近くを生きてきた。その証拠に、安倍政権があれだけのでたらめを続けたのに、安倍政権打倒を求める声はあっても、政権交代を求める声はまったくといっていいほどどこからも聞こえてこなかったからだ。

日本では成立の余地などないと証明された「保守二大政党制」という幻想を抱き、政権交代の夢を追い続けてきたのは、私たちのような反自民派よりもむしろ「自民党的なるもの」に飽き足りなかった保守層だったように思える。

自民党政権の終わりの予感は、菅首相が国民に自粛を強いておきながら、緊急事態宣言下、自分たちだけ連日ステーキ屋で会食をしていた年明け早々から徐々に出始めていたが、そんなことくらいで壊れてしまうほど自民党政権がもろい構造ではないことは、私たち反自民派こそ最もよく知っている。まさか、とずっと思っていた。

ところが、である。「女がいると会議が長い」という無根拠で極めて差別的な森喜朗・東京五輪組織委会長の「暴言」で、ひょっとしたら五輪のみならず、自民党政権の息の根まで止まるかもしれない。そんなムードが急速に出てきたように思える。

安倍政権以降のここ数年、ネット上の攻撃は弱者にばかり向かっていて、不毛で腹が立つことしかなかった。この間、何度「ネットを辞めよう」と思ったかわからないほどだ。それが今回、批判、攻撃が強者、それも森会長のような「本来向かうべき相手」にきちんと向かった、という意味では、久しぶりの「祭り」だと思う。瞬発力の強さという意味では昨年の黒川検事長問題をも大きく超えていて、ネットとしては2012年の「大飯原発再稼働反対官邸前20万人デモ」以来の盛大な祭りだ。

先日も、買い物に出かけたスーパーで、普段は政治の話をしようとすると遮るようなノンポリの人たちが「私たちが選挙に行かなかったからかしら。自民党以外に入れたらいいの?」と立ち話をしているのを聞いた。ネットでも「どんなに自民党政権がひどくても悪夢の民主党政権よりはマシ」と言っていた人たちが「とにかく自民はダメ。政権交代可能な野党がなくても、国民には自粛しろと言いながら自分は毎日ステーキ食ってるような奴らは一度下野させないと」「俺たち下級国民は重症でも入院できないのに、自民党関係者だけPCRをいつでも受けられ、陽性だったら無症状でも即入院できるなんて許せない」と言い始めている。安保法や黒川検事長問題の時ですらまったく政治に興味がなかった一般の人たちの間に、自民党に対する久しぶりの「懲罰感情」が芽生えているのだ。

無党派層、普段はノンポリの人たちの「懲罰感情」ほど怖いものはない。野党側に政権担当準備があってもなくても、勝手に政権が転がり込んでくる、という可能性があるのは実はこんなときだ。直近で言うと、1989年や2009年の政治情勢に似ている。1989年も「女性は政治家の講演会に来てもネクタイの柄を見ているだけで、話の内容なんて聞いていない」という中曽根康弘首相の女性差別発言が出た。ちょうど同じタイミングで、社会党が女性として初めて土井たか子さんを委員長に据えたら、ブームが起きて自民党が参院で過半数割れを起こした。反乱が女性から始まった、という点でも当時とムードが似てきている。

もうひとつ、興味深いデータを示しておきたい。



日本の経済成長率の推移を示す折れ線グラフの上に、自民党から非自民への政権交代が起きた年を入れてみた。あまりに分かりやすくて笑ってしまうほどだ。過去2回、自民→非自民の政権交代は、経済が大崩壊した直後に起きていることが分かる。

安保法や原発のような「イデオロギー色は強いけれど飯の種にはならないイシュー」で当ブログのような反自民勢力がいくら騒いでも、政権交代は結局「飯が食えなくなったとき」に起きる。自民党支持層は利権の分配に期待して支持しているのだから、経済が大崩壊して分配すべき利権が消失したときに崩壊する、という説明で大半の読者には納得していただけるだろう。コロナで経済が大崩壊している今年の総選挙で、もしかすると……と当ブログが判断するひとつの根拠がここにある。

反自民派の中には「過去2回の非自民政権の時は、経済が最悪だったのだから仕方ない」と細川、鳩山政権を変な形で擁護する人が今も時折いるが、こうした擁護論は非自民政権のためにならない。むしろ、このデータからは「経済が悪くなったからこそ非自民に政権が回ってくるのだ」と考えるべきであり、原因と結果が逆である。それだけに、次に非自民政権ができたときに成功するかどうかは「素早く効果的な経済対策を打ち出せるかどうか」こそが鍵を握っているのである。

「とりあえず国民に飯を食わせ、脱原発などのやりたい政策はその後にゆっくり考える」というスタンスで臨めば次は成功できる、と思いたいが、そうとも限らない。上のグラフには描かなかったが、1993年、2009年に政権が転がり込んできて、経済もどん底から脱出し、まさにこれからだと思っていた矢先の1995年、2011年に再び経済が「ポキッ」と腰折れするようなグラフの形になっている。1995年は阪神・淡路大震災、2011年は東日本大震災のためで、本当にツイていないと思う。この「腰折れ」が原因で、結局非自民勢力は2回とも政権を失い、再び自民に政権が戻ることになった。

この「非自民政権になると大震災が起きる」理由はわかっていないが、当ブログはとりあえず「自民党本部の中に人工地震の起爆装置がある」的な陰謀論からは明確に一線を画したいと考えている。それでは「女がいると会議が長い」と無根拠に決めつける森会長と大して変わらないからだ。

いずれにしても、衆院議員の任期は今年秋までには切れる。この秋の総選挙は、政府与党が望まない不利なタイミングでの実施を強いられる珍しい形でのものとなる。今後、どんな事態が起きるのか。自民党に単独で取って代われる強力な野党が存在していないため、2009年のような劇的な形での政権交代という事態はあり得ない。立憲民主党は当時の民主党に比べてあまりに非力すぎるからだ。

1月31日に投開票された北九州市議選(定数57)で自民が6議席減の大敗北を喫したが、6/57といえば1割強なので、これを定数465(過半数233)の衆院に当てはめると、ちょうど自民が50議席くらい減らす計算になる。現在の279議席から50減らせば229議席で、単独では過半数に達しない。公明党と合わせてようやく政権維持、維新の力まで借りてようやく政権を安定させられるくらいになる。かなり政治は面白くなると思う。

地方議会は中選挙区制なので、選挙区によっては3~4位でも当選可能だが、北九州市議選では自民がトップ当選をあまりできていない。小選挙区制はトップ以外は当選できない制度なので、北九州市議選よりもっと極端な変動が起きる可能性もある。自民が70~100議席くらい減らしたら政権を維持できないかもしれない。「野党に政権を取らせるところまでは望んでいないけれど、自民党を少し懲らしめたい」と、眠っていた無党派層が決起し、安倍政権下で行われた過去6回の選挙で55%前後だった投票率が、60%くらいに少し上がる。

東京に住んでいる人には分からないかもしれないが、地方では、熱心に自民党候補者のポスターを貼っているのはたいていは土建業者か、ホテル・飲食店・土産品店などの観光関係の自営業者らである。こうした人たちが営業自粛を強いられているのに、補償は十分もらえていない。意気消沈して「今まで熱心に応援したのに、自民に裏切られた」と感じ、彼らの中から5%くらい棄権が増えるが、それを上回る10%くらいの無党派層が自民以外に投票することで、差し引き5%程度の上昇となる。有権者としては「自民党を懲らしめる」程度のつもりだったが、小選挙区制であるために思ってもみなかった大規模な与党の議席減少が起き、自公、維新以外の議席を全部足してみたら、自公維に勝っていた。「もう一度、自公維以外の政党が力を合わせて、政権を作ってみようか」--そんな事態なら、野党第1党が非力な現状でも十分あり得る。2009年のような劇的な事態はあり得ないが、1993年のような事態ならばあり得るというのは、そういう意味である。

もし、市民のみなさんが「国民には自粛しろと言いながら自分は毎日ステーキ食ってる自民党」「俺たち下級国民は重症でも入院できないのに、自分たちだけPCRをいつでも受けられ、陽性だったら無症状でも即入院できる自民党」を許せないと思うなら、野党第1党が非力でもそこに票を集中させることだ。5~10%程度の投票率の上昇で上記のような事態は十分可能なのである。そして、その選択のときは、半年以内にやってくる。

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新型コロナは「禍」か? 二度目の緊急事態宣言の中、見えてきたかすかな希望

2021-01-24 14:53:57 | その他社会・時事
(この記事は、当ブログ管理人が月刊誌「地域と労働運動」2021年2月号に発表した原稿をそのまま掲載しています。)

 新型コロナウィルスの感染拡大に伴って、昨年夏頃から使われるようになった新型コロナ「禍」という単語を筆者はあまり好きではない。文脈上どうしても使わなければならない場合に限定し、基本的にこの単語は使わないようにしている。なぜならこの言葉からは新型コロナウィルスを忌まわしく避けるべきものだとするような否定的ニュアンスや、克服し、または制圧すべきものだとするような傲慢なニュアンスしか感じられないからだ。

 確かに、新型コロナウィルスの感染拡大は衰えをまったく見せず、本誌が読者諸氏に届く頃には全世界の感染者数は1億人に達しているかもしれない。国内に目を転じても、多くの若い世代にとってはよくある日常的体調不良と同程度で切迫感がない一方で、少なくない中高年世代や重い既往症のある人たちにとっては直ちに生命の危険を生じさせる本当の危機であることは間違いなく、「禍」との思いを持っている人が大多数に違いない。とりわけ日本でも世界でも、現在の社会体制から多くの利益を受けているいわゆる支配的勢力がこの危機から一刻も早く脱したがっていることは事実だろう。

 昨年5月にいったん緊急事態宣言が解除された後、筆者は少なくとも本誌では一切、新型コロナ問題には触れてこなかった。昨年8月に寿都町、神恵内村で核のごみ最終処分場への応募問題が急浮上し、筆者にとっては新型コロナより核のごみ問題のほうが優先課題だったことも大きい。新型コロナウィルス感染拡大が深刻化し、安倍政権による最初の緊急事態宣言が発せられた頃には、社会が変化することに対する希望、期待も少なからずあった。だが宣言解除後の社会状況を見ると、起きたのは経済格差の拡大や、社会的弱者への徹底的なしわ寄せなど悪い方向への変化ばかりで、新型コロナウィルス感染拡大が社会にいい方向での変化をもたらすという希望が完全に失われた。このことも筆者にとってこの問題を取り上げる意欲を失わせる出来事だった。

 だが、秋以降、11都府県に再び緊急事態宣言を出さざるを得なくなるような情勢下、各地で、あるいは各分野で起きつつある変化を注意深く観察していると、そこには機能しない政治への徹底的な失望とともに、新しい社会に向けた小さな変化の芽も出つつあるように見える。

 ●政治家と子どもたちの対照的な風景

 一般市民に対しては5人以上による会食の自粛を呼びかけておきながら、自分は高齢者ばかり8人での会食をはじめとして、毎夜会食を繰り返す菅首相への批判は修復不可能な打撃となりつつある。首相は「政治家は人と会うのが仕事」「対面で会食しなければ得られない情報もある」などと大人数への会食を正当化しようとしているが、政治家だけがそこまでして対面会食しなければ得られない情報とは一体どんなものなのか。しかも、会食を繰り返しているのは政治家全体というよりは、ほとんど自民党ばかりであり、野党議員は支持者や利害関係者との意見交換も多くはオンラインを使い、リモートで行うようになってきている。

 沖縄県議会でも、大人数で会食していた自民党県議団からクラスターが発生し、県議会が一時休会になる騒動があったが、そもそも沖縄県政では野党である自民党にとって、玉城デニー県知事と利害関係者の間を取り持つ緊急的必要性があるとも考えられないのに、なぜそこまで対面会食にこだわるのか、この間、筆者はまったく理解できないでいた。

 いろいろな可能性について、当てはまらないものをひとつひとつ消去していくと、最後まで消えずに残るものがある。確たる証拠はないが、会食の場で何らかの「利益提供」すなわち金品の受け渡しを行う必要があるからではないだろうか。金品の受け渡しはオンラインでもできなくはないものの、電子送金を使えば事実が国税当局などに捕捉されるおそれもあるから、そのような後ろ暗い金品の受け渡しこそ対面によるのが最も望ましいからだ。一方、職務権限を持たない野党議員には、そもそも見返りを期待して金品を受け渡すような連中は近づいてこないし、意見交換だけならオンラインでもまったく問題がない。自民党だけが夜の会食をやめられない背景を、筆者はこう分析している。うがった見方のようにも思えるが、筆者だけではなく元民主党国会議員の井戸まさえさん(注1)や、経済評論家の加谷珪一さん(注2)も同様の見解を示している。

 一方、未来を担う子どもたちの世界ではどうか。福岡県を中心に、九州内で多くの読者を持つブロック紙「西日本新聞」が興味深い記事を掲載している。昨年末、県内の私立大附属小学校に通うある女子児童のコメントが反響を呼んだ。安倍政権による一斉休校を経験後「友達とのおしゃべりが好きだから学校には行きたい」との思いが強まる一方、新型コロナウィルス感染拡大によって見える校内風景は明らかに変わったという。「今までは、そこまで必要だろうかと思えるような大きな声で発表するよう先生から求められることが多かった。だけど、クラスには声の小さい子もいて、それだけで手を挙げる気力を失っているように思っていた。でも大声で話すのがダメになり、みんながマスクをしている今は大きな声は要求されず、静かに挙手をすればいい。発表も、クラス内の全員が聞こえるような声を出さなくても、先生がホワイトボードに発言内容を記し、全員に見せてくれる。声の小さい子が積極的に発表できるようになってきた」。その上で、この女子児童は「いいと思えることも少しはあった」とこの間の経緯を振り返る(注3)。

 ●「カネと大声で物事を押し通すオヤジの時代」の終焉?

 新型コロナウィルス感染拡大という局面でも会食をやめない菅首相をはじめとする自民党へのすさまじいネット上での批判の一方で「声の小さい子が積極的に発表できるようになってきた」という女子小学生の声を聞いて、コロナでもこの先、いい方向への変化は生まれないだろうと思っていた筆者の中にかすかな希望が生まれた。人目をはばかるように毎夜、料亭で密会しては後ろ暗い金品を受け渡し、公式の場では「女、子どもに政治の話がわかるか」とばかりに大声で物事を通すオヤジたちによって次々と重要な決定が行われていく「料亭政治と体育会系の時代」に終焉の兆しが見えてきたからだ。支配勢力もこうした情勢変化を言語化できなくても肌感覚的に捉えており、だからこそ、この事態を早期に収束させなければ「小さき声の人々による革命」につながりかねないと焦っているのである。

 もし、これが新型コロナウィルス感染拡大の生んだ明らかな「成果」ならば、恐怖に怯えている高齢者や既往症のある方には申し訳ないが、「withコロナ」時代はもう少し続いたほうがいいように思われる。諸勢力のさまざまな利害関係が複雑かつ重層的に入り組んだ現在のような社会が変化するにはある程度の時間を必要とするからだ。

 政治家に金品を受け渡せるようなチャンネルもなく、他の諸勢力を圧倒できるような大声も出せないために、これまで政治の場から排除される以前に存在として認識もされてこなかった人々にとっては千載一遇のチャンスがめぐってきている。受け渡される金品の額や声の大きさではなく、主張の内容に正当性があるかどうかで会議の結論が導き出されるようなまっとうな社会に日本が移行できる最初で最後のチャンスのように思われる。筆者はそこにかすかな希望の芽を見る。だからこそコロナ「禍」という単語をできるだけ使いたくないとの筆者の思いはこの間、ますます強まっている。

注1)深刻な緊急事態でも政治家が会食をやめられない「残念なワケ」(元民主党衆院議員井戸まさえさん/2021.1.11付け「現代ビジネス」 )

注2)「会食ルール化」も結局見送り。日本の政治家が食事なしで会合できない理由(経済評論家加谷珪一さん/2021.1.16付け「ミモレ」)

注3)「勇気ある投稿」「涙止まらない」コロナ禍の小6訴え、SNSで反響(2020.12.20付け「西日本新聞」)。

(2021年1月24日)

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心ある首都圏住民に告ぐ~2021年、地方移住の勧め

2021-01-03 10:26:06 | その他社会・時事
当ブログ管理人は、この年末年始、帰省もせず、道内の自宅でゆっくりと過ごした。とはいえ、まったく外出しないのも身体に良くないので、気分転換を兼ねて散歩程度の外出はしている。だがそこは全国一人口密度が低い北海道だ。札幌市内を除けば、道内には「密」になるような場所はほとんどないため、感染拡大の心配はする必要がない。

とはいえ、この間、各地を回ってみて新年早々がっかりした。安倍前政権が提唱した「働き方改革」の下、昨年までは低賃金長時間労働が常態化したサービス業を中心に「働き方を変えよう」「せめてお正月くらいは休業しよう」と一丸となって努力していたのに、あれは何だったのか。「働き方改革」などウソのように、どこもここも、揃いもそろって元日から初売りだ。

新型コロナウィルス感染の拡大が止まらない今年のお正月こそ「密」を作り出さないため、休業が最も効果的なはずだ。だが、サービス産業のほとんどは「今日稼いだ資金で明日の開店準備をする」という究極的日銭商売、自転車操業だから、緊急事態宣言以降の営業短縮で経営が悪化し、もはや休んでいる余裕もないのだろう。新年早々、働き方改革もどこへやら、わざわざ開店して作り出す必要もない「密」を自分から作り出している。

日本人、そして日本企業の「思考停止病」「変わりたくない病」は、ある意味では新型コロナなんかよりよほど深刻で、日本の製薬業界はコロナワクチンより「変わりたくない病」治療薬の開発の方が先ではないか。新年早々、そんな嫌みのひとつも言いたくなる。

首都圏1都3県の知事が、深刻な医療崩壊の危険を察知して、政府に緊急事態宣言の再発令を求めているのに、政府は相変わらず経済を優先したいらしく、発言に慎重な姿勢を崩さない。当ブログは、罰則付き緊急事態宣言の再発令もやむなしの立場だが、仮に再発令しても「もうこれ以上何を自粛しろというのか」という人と「自分には関係ない。自粛するくらいなら逮捕されてもいい」とあくまで反自粛を貫く人に二極化、分断していて、もう効果はないだろう。残念ながら、1月から2月にかけ、首都圏1都3県の医療崩壊は事実上、確定したと言っていい。

とはいえ当ブログ管理人に驚きはない。むしろここまでの展開は当ブログの予想通りに進んでいる。政府がこれまでに取ってきた対応は、10年前の原発事故の時とそっくりだ。あのときも政府はあくまで「経済」「復興」(=ゼネコンボロ儲けの「ハコモノ乱造」)が最優先。民主党政権当時「コンクリートから人へ」のスローガンの下で虐げられてきたゼネコン業界の「逆襲」ともいうようなすさまじい「ハコモノ・トンカチ行政」が続けられた。「福島復興」と東京五輪のおかげで日本に20社近くある大手・準大手・中堅ゼネコン全社が戦後最高の増収増益。高度成長期でもあり得ないようなでたらめぶりだった。

一方、高い放射線量下で鼻血が止まらないなどの身体症状がひどく、福島からの自主避難を考え、実行した人もいる。その数は約4万人。人口200万人の福島県民の2%、実に50人に1人が自主避難の道を選んだ。学校1クラスに1人、いるかいないか。それほど多くの福島県民が当時、自主避難の道を選んだ。

政府は当時、自主避難を選ぶ人たちを「神経過敏」「鼻血もストレスが原因」など意味不明の反科学的言説で攻撃し、孤立させる作戦を採った。この年末も、福島県庁の「バカ役人」どもがわざわざ福島県内に残っている自主避難者の家族を戸別訪問(「三密」回避なのに!)してまで「家族としても避難者の住居からの退去に協力をお願いしたい」と避難者「叩き出し」策動を続けている。反科学的で、どんなエビデンスを突きつけられても命より経済が優先なのは、福島原発事故の時に嫌というほど見せつけられた。当ブログにはその「原体験」があるから、どうせコロナでも同じ対応になるだろうと、自民党には期待しないどころか「逆の意味で期待」している。どこまで人命を切り捨てて経済最優先を貫けるか、という「期待」(もちろん皮肉)である。

自民党は「経団連党」なので、国民の命よりゼネコンの利益のほうが優先なのは当然だろう。今さらそんなこともわからない人は、一体何年日本人をやっているのか、と思ってしまう。問題はそんな党が選挙で勝ち続けていることにあるのだが、それは選挙に行かない有権者が半分近くいるからだ。とはいえ、「聖人君子」が出馬しない限り投票所には行かないと固く決意している「純朴な無党派層」に何度「選挙に行け」と言ってももはや理解はしてもらえなさそうなので、今後も自民党政権はたぶん安泰だろう。

では、どうすればいいのか。この出口なき八方塞がり状態に、打開策はあるのか。ひとつだけだが、ある。その答えは、10年前に2%の福島県民が教えてくれている。どこに行っても「密」だらけでもはや手の打ちようのない東京から、1人でも多くの人が地方に避難、移住することだ。

特に、若い頃、地方から進学や就職のため東京に出てきて、引退後もそのまま東京に住んでいるが、出身地には今でも実家があるという人。年金暮らしをしているけれど、現在の自宅が持ち家ではなく賃貸や「サ高住」(サービス付き高齢者住宅)で、いつでも引き払えるという人。地方に別荘があり、別荘を本拠地にしてもいいな、と思っている人。東京と地方の2地域居住を始めていたり、興味を持って情報収集をしている人。まずは高齢者の中のそんな人たちからでいい。年明け、社会活動が再開したらすぐにでも、地方に移住すべきだろう。

地方では、車を持っていないと移動に大きな制約がある点が心配だと思うが、比較的公共交通機関が整っている県庁所在地や政令指定都市の郊外がお勧めだ。年金の支給額は全国どこに住んでいても同じなので、家賃の安い地方のほうが生活水準を上げることができる。「密」を避けられ、コロナに怯えなくてすむ。県庁所在地や政令指定都市なら適度に都会なので、いかにも「ムラ社会」にありがちな排他的人間関係に苦しむ心配もそれほどない。賃金は高くないけれど、年金の足りない額を補う程度の収入でいいなら、地方にもサービス業を中心にシルバー世代向けの仕事はある。経験値の低い若者より、社会経験を積んできたシルバー世代のほうが安心して雇える、という企業も地方にたくさんある。老後の「第2の人生」を考える上からも、悪くない選択なのではないか。

当ブログ管理人は、今年で50歳になる。この間、東京一極集中問題は議論されており、私が子どもの頃も「多極分散型国土形成」がスローガンだったが実現しなかった。半世紀、実現できなかったことが、コロナ禍で無能をさらしている今の政府や自治体にできるはずもない。であるなら、国民みずから率先して首都圏を出て行き、地方に活路を求めるしかない。

原発事故当時、自主避難した人たちに対するあの殺されるかと思うほどの壮絶なバッシングを思うと、目立たず静かにやる方がいい。親しい人だけにきちんと挨拶し、住み慣れた首都圏を出て、地方に第2の人生の拠点を定める。コロナに収束のめどが見えない2021年から数年先の日本社会は、おそらくそんな姿になるのではないか、という気がする。

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2020年 安全問題研究会10大ニュース

2020-12-30 18:37:33 | その他社会・時事
さて、2020年も残すところあとわずかとなった。例年通り今年も「安全問題研究会 2020年10大ニュース」を発表する。

ただし、今年は新型コロナという100年に1度級の異常事態が発生したため、新型コロナ関係を別枠にしないと、トップ10がすべて新型コロナ関係で埋まってしまう。そのため、新型コロナ関係は別枠とし、順位は付けないこととする。それ以外のニュースは従来通りとする。

選考基準は、2020年中に起きた出来事であること。当ブログで取り上げていないニュースも含むが、「原稿アーカイブ」「書評・本の紹介」「インターネット小説」「日記」「福島原発事故に伴う放射能測定値」「運営方針・お知らせ」カテゴリからは原則として選定しないものとする。

<新型コロナ関係(順位なし)>
・中国・武漢で発生した新型コロナ、全世界に広がる 各地で都市封鎖、一斉休校実施
・クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で次々と感染拡大
・安倍政権、新型コロナで「緊急事態宣言」
・開催予定だった東京五輪、1年「延期」決定、プロ野球、Jリーグなど日程延期、短縮相次ぐ
・海外と日本との間の出入国全面停止 観光客「消滅」で観光・飲食・イベント産業に大打撃
・マスク、トイレットペーパーなど生活必需品の買い占め騒動発生 石油危機以来約半世紀ぶりの「国民生活安定緊急措置法」発動によりマスク転売が一時禁止に
・新型コロナで「密」避ける動き。観光客と通勤客の「ダブル消滅」で鉄道・航空業界に大打撃
・医療従事者・医療機関に十分な支援なく、続々窮地に

<新型コロナ以外の通常ニュース>
1位 安倍政権が退陣、菅政権発足<社会・時事>

2位 米大統領選でバイデン民主党候補勝利、現職トランプ氏敗北<社会・時事>

3位 北海道寿都町、神恵内村が「核のごみ」最終処分地へ応募、初の文献調査開始<原発問題>

4位 福島原発「生業を返せ!」訴訟控訴審で仙台高裁、国の責任認定し賠償大幅増額の画期的判決<原発問題>

5位 JR日高本線の廃線が決定。一方、政府は2021年度からJR北海道に3年間で1300億円を支援へ<鉄道・公共交通/交通政策>

6位 英国が初のEU「離脱」~国民投票以来4年越しで<社会・時事>

7位 大阪「都構想」住民投票で反対多数、大阪市存続が決定<社会・時事>

8位 リニア新幹線、水問題でJR東海と静岡県の対立激化。長崎ルートは佐賀県の抵抗で、北海道新幹線札幌延伸工事は残土問題でストップ。北陸新幹線工事でもトンネル亀裂が見つかり、鉄道・運輸機構理事長、副理事長が辞意表明<鉄道・公共交通/交通政策>

9位 北神急行が神戸市交通局に編入。戦後鉄道史上、純粋私鉄の公営化は初<鉄道・公共交通/交通政策>

10位 大阪地裁が大飯原発3号機の設置許可取り消し判決<原発問題>
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【番外編】
・種苗法「改悪」法案成立 主要種苗の海外流出防止へ「育成者権」強化も「自家増殖」経費膨張の恐れ<農業・農政>
・三浦春馬さん、竹内結子さん……コロナ禍で芸能人の自死相次ぐ<芸能・スポーツ>
・水樹奈々さん、入籍&妊娠発表<芸能・スポーツ>

2020年を振り返ってみると、前半は新型コロナ、後半は核のごみ問題に振り回され、それ以外のことは何もできず終わってしまった。特に、自分が関われないでいるうちに日高本線の廃線が決まってしまったことは、近年で最も手痛い敗北だと思っている。

来年は、これらの問題にも引き続き取り組むが、新型コロナ問題では、少なくともこれにより自分の望む方向に世界が変わる希望はまったく持てなくなった。むしろ変化は自分の望んでいなかった悪い方向(格差拡大など)ばかりが目立っている。新型コロナ問題はこれまで取り組んできた日常の戦線の延長線上の問題として、来年は取り組む。

JR問題では新年早々、大勝負に出る。今はまだ内容を明らかにできないが、確定次第、当ブログでお知らせしていきたい。

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独裁者のいない朝~安倍首相辞任表明を聞いて

2020-08-29 23:39:55 | その他社会・時事
 圧政の長いトンネルを抜けると、そこは曇り空であった。
 長く暗く重い、7年8ヶ月。終わりの見えないトンネルに、突然の終わりが訪れた。

 「どんなに長い夜でも明けない夜はない」

 この7年8ヶ月、ただこの思いだけを胸に、歯を食いしばって耐えてきた。

 7年8ヶ月ぶりに訪れた独裁者のいない朝が、こんなにすがすがしいと思わなかった。空気がおいしい。水がおいしい。茶色の朝が、7年8ヶ月ぶりにカラー映像になって見える。28日夜は連れ合いとお祝いをした。

 1986年、マルコス独裁政権を倒したフィリピン市民の気持ちがわかる気がする。まさか、こんな途上国並みの気持ちを、仮にも10年前まで世界第2の経済大国と言われてきた日本で味わうことになるとは思っていなかった。

 「安倍長期独裁政権がついに倒れた日本では、政権側が出した外出自粛、集会禁止の命令を無視して市民が街頭に繰り出し、独裁から解放された喜びを表現しています」

 こんな風に報道しているメディアが世界のどこかにあるのではないかという気がする。かつて、遠く離れた自分たちと関係のない国で、ドラマのように独裁者が倒れ、追放される歴史的事件を日本のメディアが伝えてきたように。

 「あの嫌な夫婦のいないクリスマスはすばらしい」

 1989年、ルーマニアでチャウシェスク独裁体制が崩壊したとき、街に繰り出したブカレスト市民のひとりがこう言ったのを今も私は忘れない。今、私も全く同じ思いだ。「あの嫌な私物化夫婦のいない8月はすばらしい」と心から叫びたいと思う。確かに安倍首相は病気再発で辞任表明した。だが、黒川検事長の定年延長阻止以降、嵐のように燃え広がった市民の闘いがなければ、安倍首相が病気を再発させることもなかっただろう。その意味で、これは確かに市民による安倍打倒なのだ。そのことが持つ大きな政治的意味は、いくら強調してもしすぎることはない。

 最後の記者会見で、安倍首相は在任中の改憲ができなかった悔しさからか、目にうっすらと涙を浮かべていた。それを見た瞬間、「日本の市民はついに勝ったのだ」という実感がこみ上げてきた。この7年8ヶ月、右翼・改憲勢力の総力を挙げた波状攻撃に次ぐ波状攻撃の嵐を耐え抜き、二度と自分たちの政府に侵略戦争をさせないと誓ったこの宝物を守り抜いたのだ! 本当に日本の市民はよく頑張ったと思う。今はただ、その長きにわたる不屈の意志と闘いを私はたたえたい。

 安倍「信者」たちは、改憲が実現しなかったことがよほど悔しいのか、「病気で辞める人間に鞭打つな」と騒いでいるが、寝言は寝て言えと言いたい。そう言う「信者」たちこそ外国人や障がい者や女性には、情け容赦なく鞭打ち、徹底的にいじめ抜いてきたではないか。彼らのような品性下劣な「信者」が内部から安倍政権を食い倒したのだ。

 日本の市民の多くが、後ろからついてきていると思っていた韓国、台湾がとうの昔に日本を追い抜き、今、日本からはその背中も見えなくなりつつある。コロナ禍を通じて浮かび上がったのはそんな厳しい現実だ。中国も今や日本を大きく上回る経済力を持つに至った。東アジアの中で、後ろを振り向けば、そこにいるのは朝鮮民主主義人民共和国だけーー安倍独裁政権7年8ヶ月が残した確かな「成果」である。

 「私たちが手にしたいのは本当の民主主義です。共産党の“衣”だけを変えても何にもなりません」「汚れのない人たちで指導部を作るには時間が必要です。しかしこういう人たちが真の民主主義を作るのです」。1989年、別のブカレスト市民はこう話している。市民、弱者の話に耳を貸さず、一般党員を投票から閉め出して密室で後継総裁を決めようと策動している「不自由非民主党」の“衣”だけを変えても何にもならない。汚れのない人たちで、今までとは全く違う新しい勢力を作らなければ、また別の長いトンネルが私たちを待つだろう。

 今の日本を見ていると、このまま曇り空が晴れるかどうかははなはだ心許ないと思う。だが私の今の気持ちは晴れ晴れとしている。1~2日くらいは勝利の美酒に酔ってもいいし、疲れているなら休んでもいいと思う。疲れが取れたらまた歩き出そう。7年8ヶ月ぶりに取り戻したこの解放感を、権力者に渡してしまわないように。

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