クリスマスが近づいてきました。
今年は教会学校のクリスマス会で約60人の低学年が「リトルドラマーボーイ」を演奏することになりました。
ミュージカル風の劇にして、太鼓をたたく子ども、ダンスをする子ども、賛美をする子どもたちが精一杯イエス様の誕生をお祝いします。
そのもとになる童話を書きましたので紹介させていただきます。絵は、教会学校で一緒に奉仕しているTさんが書いてくださいました。
ポールのおくりもの

ポールは、小さな家にたったひとりですんでいました。ポールの家は雨漏りがし、風がふくとバタバタとやねがはがれそうになります。嵐がきたら、とばされてしまいそうなちっぽけな家でしたが、ポールはちっともこわくありませんでした。神さまがいつもいっしょにいて守ってくださることをしっていたからです。

ポールの宝物は、小さなおわんとたいこです。ポールは毎日町に出かけていっては、門のところにお椀を置き、通る人たちに頭をさげます。親切な人がお金を恵んでくれるのをじっとまつのです。いちまいもコインをもらえない日があります。
そんなときは、ヤージーさんの畑に行って野菜をもらって帰ります。ヤージーさんは形が悪かったり、しなびた野菜をわざと畑にのこしておき、ポールのようにひとりぼっちの子どもや貧しい人が自由に持って帰れるようにしてくれています。
でも、たまに何もないときがあります。そんなときは、たいこをたたきます。むちゅうでたたいていると、おなかのすいていることをわすれてしまいます。
ポールのたいこは手作りです。2本のスティックでたたくと、とてもいい音がでました。

ポールがたいこをたたくと、壁の裏にひそんでいたネズミたちが出てきます。ネズミたちは、たいこの音にあわせてリズムをとっています。ヒヨドリは、たいこの音にあわせて首をクルクル動かしてうたいました。
ある冬の日のことです。その日もぜんぜんお金(かね)がもらえなかったので、ヤージーさんの畑にむかっていました。冷たい風が首筋をなで、ポールはブルッと身震いしました。
「畑に何もなかったら、どうしよう……」

ポールがふらふらとした足どりで畑に入ろうとしたとき、通りからワイワイガヤガヤとにぎやかな声が聞こえてきました。
羊飼いたちが歩いてきたのです。うれしそうに歌をうたっている羊飼いの少年、マルコもいました。
「どこへいくの?」
ポールはマルコにたずねました。
「ベツレヘムにいくんだ。救い主がお生まれになったんだ」
「えっ、救い主が!」
ポールは、『ひとりのみどりごがわたしたちのために生まれた。ひとりの男の子がわたしたちに与えられた』という言葉を思いだしました。
お母さんが毎晩のようにそらんじていた神さまの言葉です。
「いつ生まれるかわからないけれど、そのお方は本当の王様、世界を救うお方なのよ」
とお母さんがいっていました。
その救い主が今日うまれたというのです。
「とうとう、おうまれになったんだね」
ポールはうれしくてむねがあつくなりました。
「一緒にお祝いにいこうよ。ぼくは、お祝いに仔羊をおささげするんだ」
マルコはうまれて間もない仔羊を脇に抱えていました。大人の羊飼いたちもそれぞれプレゼントを手にしています。
「ぼくは、何も持ってない……あげるものが何もない」

ポールは悲しくなって畑にもよらず、とぼとぼ家に帰りました。
家に帰ると、机の上に干しいちじくが置いてありました。
朝から何も食べていなかったポールは、むちゅうで食べました。おなかがいっぱいになったとき、
ポツン、テコン、ポツン、テコン
と音が聞こえてきました。みると、おけの上でネズミたちがダンスを踊っているのです。
「きみたち、何やってるの?」
「救い主がお生まれになったから、嬉しくて踊ってたんだよ」
いちばん大きなネズミが答えました。
ヒヨドリがとんできて、はずれた音でうたいます。
「ララララーラララ」
ポールは耳をふさぎました。
「どうして聞いてくれないの? 救い主誕生のお祝いの歌なのに」
またネズミたちが踊りだしました。
ポツン、テコン、ポツン、テコン
あまりにもへんてこなリズムなので、ポールはおなかをかかえてわらいました。
「きみたち、もっと調子よくできなの?」
「これで、せいいっぱいさ」
「わたしもこれがせいいっぱいの声よ」
ヒヨドリはケホケホとせきこみました。
ポールはたいこを出してきました。
ラパパンパーン
とたたくと、
パパパンパーン
とねずみたちが踊り、
ララランラーン
とヒヨドリがうたいます。
「そうそう、その調子」
ラパパンパーン
パパパンパーン
ララランラーン
ラパパンパーン
「たいこをたたいて、それを救い主へのプレゼントにしたら」
ネズミにいわれてポールは目の前がぱっと明るくなりました。
「そうしよう! 救い主はベツレヘムで生(う)まれたんだって。きみたちもいっしょにいこう」
「いくよ、いくよ。ワーイワーイ」
「わたしもいくわ」
ヒヨドリは、羽を震わせました。
「ところで、ここにあったいちじくはだれがもってきたのかな……きみたち、知らない?」
「知らないよ。気がついたら机のうえにあったんだもの」
「不思議だなあ」
「きっと神さまがくださったのよ」
ヒヨドリがいうのをきいて、そうかもしれないとおもいました。いちじくを食べていなければ、たいこをたたく力も、ベツレヘムまで歩いていく力も出なかったでしょう。
「さあ、出発だ!」
ポールはひもでたいこをこしにくくりつけてたたきながら歩きました。
曲がどんどん生まれ、ふくらんでいきます。
「楽しそうだね。仲間に入れて」
りすがやってきていいました。
「楽しそうね。わたしたちも仲間に入れて」
うさぎもやってきました。

空にはいままで見たことがなかった赤い大きな星が出ています。
ベツレヘムに近づくにつれ、ポールは心配になってきました。
救い主は、ぼくのたいこを喜んでくれるかな。プレゼントは宝石とか、仔羊のほうがよかったんじゃないかな。ぼくみたいに貧しくて、何にも持っていない者がいってもいいのかな」
不安になって空を見上げると、赤い星が『こっちだよ。はやくおいでよ』といっているようにチカチカまたたきました。

赤い星の真下に小さな家畜小屋がありました。
ポールは小屋の前で立ち止まって、ふーっと息をつきました。家畜小屋の戸は開いていました。そっとのぞくと飼い葉桶の干し草のうえに赤ちゃんがねていました。そのむこうに赤ちゃんのお父さんとお母さんがすわっています。
こんなに貧しくて、みすぼらしいところでお生まれになったなんて……。家畜小屋は、ポールの住むこわれかけた家よりも貧しい場所です。
「お入り、貧しくていいんだよ。何も持っていなくてもいいんだよ」
と、言われた気がしました。

ポールは思いきって赤ちゃんの前に進みでると、たいこをたたきました。ねずみとりすとうさぎはリズミカルにダンスをし、ヒヨドリは美しい声でうたいます。
♪リトルドラマーボーイ♪のうた
うたいおわって赤ちゃんの顔をみると、ぱっちり目が開いていて、ポールにむかってにっこりほほえみました。
赤ちゃんイエスさまは、ポールたちの演奏と歌とダンスを喜んでくれたのです。
それからポールはたいこをたたいて町の人たちに救い主誕生の知らせを告げるようになりました。
もちろん、ネズミとりす、うさぎとヒヨドリもいっしょです。
おわり
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今年は教会学校のクリスマス会で約60人の低学年が「リトルドラマーボーイ」を演奏することになりました。
ミュージカル風の劇にして、太鼓をたたく子ども、ダンスをする子ども、賛美をする子どもたちが精一杯イエス様の誕生をお祝いします。
そのもとになる童話を書きましたので紹介させていただきます。絵は、教会学校で一緒に奉仕しているTさんが書いてくださいました。
ポールのおくりもの

ポールは、小さな家にたったひとりですんでいました。ポールの家は雨漏りがし、風がふくとバタバタとやねがはがれそうになります。嵐がきたら、とばされてしまいそうなちっぽけな家でしたが、ポールはちっともこわくありませんでした。神さまがいつもいっしょにいて守ってくださることをしっていたからです。

ポールの宝物は、小さなおわんとたいこです。ポールは毎日町に出かけていっては、門のところにお椀を置き、通る人たちに頭をさげます。親切な人がお金を恵んでくれるのをじっとまつのです。いちまいもコインをもらえない日があります。
そんなときは、ヤージーさんの畑に行って野菜をもらって帰ります。ヤージーさんは形が悪かったり、しなびた野菜をわざと畑にのこしておき、ポールのようにひとりぼっちの子どもや貧しい人が自由に持って帰れるようにしてくれています。
でも、たまに何もないときがあります。そんなときは、たいこをたたきます。むちゅうでたたいていると、おなかのすいていることをわすれてしまいます。
ポールのたいこは手作りです。2本のスティックでたたくと、とてもいい音がでました。

ポールがたいこをたたくと、壁の裏にひそんでいたネズミたちが出てきます。ネズミたちは、たいこの音にあわせてリズムをとっています。ヒヨドリは、たいこの音にあわせて首をクルクル動かしてうたいました。
ある冬の日のことです。その日もぜんぜんお金(かね)がもらえなかったので、ヤージーさんの畑にむかっていました。冷たい風が首筋をなで、ポールはブルッと身震いしました。
「畑に何もなかったら、どうしよう……」

ポールがふらふらとした足どりで畑に入ろうとしたとき、通りからワイワイガヤガヤとにぎやかな声が聞こえてきました。
羊飼いたちが歩いてきたのです。うれしそうに歌をうたっている羊飼いの少年、マルコもいました。
「どこへいくの?」
ポールはマルコにたずねました。
「ベツレヘムにいくんだ。救い主がお生まれになったんだ」
「えっ、救い主が!」
ポールは、『ひとりのみどりごがわたしたちのために生まれた。ひとりの男の子がわたしたちに与えられた』という言葉を思いだしました。
お母さんが毎晩のようにそらんじていた神さまの言葉です。
「いつ生まれるかわからないけれど、そのお方は本当の王様、世界を救うお方なのよ」
とお母さんがいっていました。
その救い主が今日うまれたというのです。
「とうとう、おうまれになったんだね」
ポールはうれしくてむねがあつくなりました。
「一緒にお祝いにいこうよ。ぼくは、お祝いに仔羊をおささげするんだ」
マルコはうまれて間もない仔羊を脇に抱えていました。大人の羊飼いたちもそれぞれプレゼントを手にしています。
「ぼくは、何も持ってない……あげるものが何もない」

ポールは悲しくなって畑にもよらず、とぼとぼ家に帰りました。
家に帰ると、机の上に干しいちじくが置いてありました。
朝から何も食べていなかったポールは、むちゅうで食べました。おなかがいっぱいになったとき、
ポツン、テコン、ポツン、テコン
と音が聞こえてきました。みると、おけの上でネズミたちがダンスを踊っているのです。
「きみたち、何やってるの?」
「救い主がお生まれになったから、嬉しくて踊ってたんだよ」
いちばん大きなネズミが答えました。
ヒヨドリがとんできて、はずれた音でうたいます。
「ララララーラララ」
ポールは耳をふさぎました。
「どうして聞いてくれないの? 救い主誕生のお祝いの歌なのに」
またネズミたちが踊りだしました。
ポツン、テコン、ポツン、テコン
あまりにもへんてこなリズムなので、ポールはおなかをかかえてわらいました。
「きみたち、もっと調子よくできなの?」
「これで、せいいっぱいさ」
「わたしもこれがせいいっぱいの声よ」
ヒヨドリはケホケホとせきこみました。
ポールはたいこを出してきました。
ラパパンパーン
とたたくと、
パパパンパーン
とねずみたちが踊り、
ララランラーン
とヒヨドリがうたいます。
「そうそう、その調子」
ラパパンパーン
パパパンパーン
ララランラーン
ラパパンパーン
「たいこをたたいて、それを救い主へのプレゼントにしたら」
ネズミにいわれてポールは目の前がぱっと明るくなりました。
「そうしよう! 救い主はベツレヘムで生(う)まれたんだって。きみたちもいっしょにいこう」
「いくよ、いくよ。ワーイワーイ」
「わたしもいくわ」
ヒヨドリは、羽を震わせました。
「ところで、ここにあったいちじくはだれがもってきたのかな……きみたち、知らない?」
「知らないよ。気がついたら机のうえにあったんだもの」
「不思議だなあ」
「きっと神さまがくださったのよ」
ヒヨドリがいうのをきいて、そうかもしれないとおもいました。いちじくを食べていなければ、たいこをたたく力も、ベツレヘムまで歩いていく力も出なかったでしょう。
「さあ、出発だ!」
ポールはひもでたいこをこしにくくりつけてたたきながら歩きました。

曲がどんどん生まれ、ふくらんでいきます。
「楽しそうだね。仲間に入れて」
りすがやってきていいました。
「楽しそうね。わたしたちも仲間に入れて」
うさぎもやってきました。

空にはいままで見たことがなかった赤い大きな星が出ています。
ベツレヘムに近づくにつれ、ポールは心配になってきました。
救い主は、ぼくのたいこを喜んでくれるかな。プレゼントは宝石とか、仔羊のほうがよかったんじゃないかな。ぼくみたいに貧しくて、何にも持っていない者がいってもいいのかな」
不安になって空を見上げると、赤い星が『こっちだよ。はやくおいでよ』といっているようにチカチカまたたきました。

赤い星の真下に小さな家畜小屋がありました。
ポールは小屋の前で立ち止まって、ふーっと息をつきました。家畜小屋の戸は開いていました。そっとのぞくと飼い葉桶の干し草のうえに赤ちゃんがねていました。そのむこうに赤ちゃんのお父さんとお母さんがすわっています。
こんなに貧しくて、みすぼらしいところでお生まれになったなんて……。家畜小屋は、ポールの住むこわれかけた家よりも貧しい場所です。
「お入り、貧しくていいんだよ。何も持っていなくてもいいんだよ」
と、言われた気がしました。

ポールは思いきって赤ちゃんの前に進みでると、たいこをたたきました。ねずみとりすとうさぎはリズミカルにダンスをし、ヒヨドリは美しい声でうたいます。
♪リトルドラマーボーイ♪のうた
うたいおわって赤ちゃんの顔をみると、ぱっちり目が開いていて、ポールにむかってにっこりほほえみました。
赤ちゃんイエスさまは、ポールたちの演奏と歌とダンスを喜んでくれたのです。
それからポールはたいこをたたいて町の人たちに救い主誕生の知らせを告げるようになりました。
もちろん、ネズミとりす、うさぎとヒヨドリもいっしょです。
おわり
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