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『顔のない眼』 ジョルジュ・フランジュ監督 ☆☆☆★
iTunesのレンタルで鑑賞。こういう古いモノクロの怪奇映画を夜中に観るのはなかなかの快楽である。
手っ取り早く言うと、火傷で顔がただれた娘のために女性をさらってきて移植手術を繰り返す高名な医師と、その協力者である女秘書の物語。秘書もかつて医師に顔面皮膚移植で救われた過去があるらしく、首にある傷を真珠のネックレスで隠している。秘書は町でめぼしい娘を見つけると声をかけ、アパートを紹介してあげるなどとうまく取り入って医師のところへ連れていき、クロロフォルムで眠らせて顔の皮を剥いでしまう。恐ろしい。楳図かずおみたいだ。
皮膚移植の手術は一旦は成功し、娘は美しい顔に戻るが、やがてまた皮膚が黒ずみ、崩れていく。すると父親と秘書はまた別の犠牲者を探すのだが、そうこうするうちに警察が動き出し、同時に娘が元婚約者に思わずかけてしまった電話が元で疑惑を招く。娘は死んだことになっているのである。警察はおとりの女性を使ってトラップを仕掛けるが…。
さすがフランスの怪奇映画だけあって、アメリカものとは微妙に違う。繊細で、耽美的で、エレガントである。スプラッターではなく心理的な怖さだし、またその中に哀しい詩情がある。とはいえ、ホラー映画としてはそれほど怖くない。能面みたいな仮面をかぶった娘の顔がもっと怖いかと思っていたら、仮面といってもほぼ顔と同じ形をしているので私は全然怖くなかった。ああいうのは下の顔立ちが分からない方が怖いと思う。それから皮膚移植の手術の場面、顔そのものは映さないだろうと思っていたら映している。顔の回りをぐるっとメスで切っていって、べろんと剥がす。特撮技術はもちろん当時のレベルだが、結構えぐい。当時としては相当ショッキングなシーンだっただろうと思う。そういうのを正々堂々と映すのも楳図かずおっぽいセンスだ(もちろん褒め言葉である)。娘の仮面の下のただれた顔は一度も出て来ないかと思っていたら、これもちょっとだけ出てくる。
それにしてもこの娘、エディット・スコブという女優さんだが、きれいになった時の素顔はまさに天使のようだ。仮面をかぶっている時もあごから首にかけての優美さは人間離れしていて、まるでマネキンが動いているような錯覚を覚える。この美しさはまさにフランスならではだろう。そしてそれほどまでに美しい娘の顔が実は爛れていて仮面をつけているという倒錯した妖しさが、この映画のポエジーの核となっているように思う。
ラストシーンに鳩が出てくるところなど、ちょっとシュールリアリスティックな味わいもある。ポイントはシュールリアリスムにしろ耽美性にしろごてごてと過剰ではなく、匂わす程度のほどよい匙加減ということだろう。そのせいでマニア向けの閉じた世界ではなく、怪奇映画としての大衆性を失っていない。
モノクロの映像も、ふとした戸外の情景などがはっとするほど美しい。あまり怖くはないけれども、詩情豊かでかつ、フランス製らしいエレガンスを漂わせた怪奇映画だ。
iTunesのレンタルで鑑賞。こういう古いモノクロの怪奇映画を夜中に観るのはなかなかの快楽である。
手っ取り早く言うと、火傷で顔がただれた娘のために女性をさらってきて移植手術を繰り返す高名な医師と、その協力者である女秘書の物語。秘書もかつて医師に顔面皮膚移植で救われた過去があるらしく、首にある傷を真珠のネックレスで隠している。秘書は町でめぼしい娘を見つけると声をかけ、アパートを紹介してあげるなどとうまく取り入って医師のところへ連れていき、クロロフォルムで眠らせて顔の皮を剥いでしまう。恐ろしい。楳図かずおみたいだ。
皮膚移植の手術は一旦は成功し、娘は美しい顔に戻るが、やがてまた皮膚が黒ずみ、崩れていく。すると父親と秘書はまた別の犠牲者を探すのだが、そうこうするうちに警察が動き出し、同時に娘が元婚約者に思わずかけてしまった電話が元で疑惑を招く。娘は死んだことになっているのである。警察はおとりの女性を使ってトラップを仕掛けるが…。
さすがフランスの怪奇映画だけあって、アメリカものとは微妙に違う。繊細で、耽美的で、エレガントである。スプラッターではなく心理的な怖さだし、またその中に哀しい詩情がある。とはいえ、ホラー映画としてはそれほど怖くない。能面みたいな仮面をかぶった娘の顔がもっと怖いかと思っていたら、仮面といってもほぼ顔と同じ形をしているので私は全然怖くなかった。ああいうのは下の顔立ちが分からない方が怖いと思う。それから皮膚移植の手術の場面、顔そのものは映さないだろうと思っていたら映している。顔の回りをぐるっとメスで切っていって、べろんと剥がす。特撮技術はもちろん当時のレベルだが、結構えぐい。当時としては相当ショッキングなシーンだっただろうと思う。そういうのを正々堂々と映すのも楳図かずおっぽいセンスだ(もちろん褒め言葉である)。娘の仮面の下のただれた顔は一度も出て来ないかと思っていたら、これもちょっとだけ出てくる。
それにしてもこの娘、エディット・スコブという女優さんだが、きれいになった時の素顔はまさに天使のようだ。仮面をかぶっている時もあごから首にかけての優美さは人間離れしていて、まるでマネキンが動いているような錯覚を覚える。この美しさはまさにフランスならではだろう。そしてそれほどまでに美しい娘の顔が実は爛れていて仮面をつけているという倒錯した妖しさが、この映画のポエジーの核となっているように思う。
ラストシーンに鳩が出てくるところなど、ちょっとシュールリアリスティックな味わいもある。ポイントはシュールリアリスムにしろ耽美性にしろごてごてと過剰ではなく、匂わす程度のほどよい匙加減ということだろう。そのせいでマニア向けの閉じた世界ではなく、怪奇映画としての大衆性を失っていない。
モノクロの映像も、ふとした戸外の情景などがはっとするほど美しい。あまり怖くはないけれども、詩情豊かでかつ、フランス製らしいエレガンスを漂わせた怪奇映画だ。
コクトーが絶賛したのは知りませんでしたが、確かに妖精じみた女優さんでした。私も古雅な映画が大好きなので色々と古い映画を観ますが、これは中でも印象に残っています。場末の小さな名画座か何かで、夜中に観たい感じがします。
ここに掲載している作品についてはお恥ずかしい限りですが、確かにコント・ファンタスティックのようなものを意識していますね。今後ともよろしくお願いします。