アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

影の車

2008-03-11 20:47:28 | 映画
『影の車』 野村芳太郎監督   ☆☆☆☆★  『疑惑』『事件』に続いて野村芳太郎監督作品。原作松本清張。うーん、これもいいっすね。全篇に漂う不安感、淫靡な空気、やるせなさ、寂しさ、そして暗いノスタルジーの甘美さ。これまで観た中でいちばん松本清張っぽかった。つまり、宮部みゆきのアンソロジーで感じた「松本清張らしさ」が一番現れていたと思う。ストーリーも不倫、だんだんドツボにはまっていく男、高まる不安 . . . 本文を読む

女ざかり

2008-03-09 21:20:03 | 
『女ざかり』 丸谷才一   ☆☆☆☆☆  ハードカバーで再読。ずいぶん昔に買った本だが、今じゃ文庫も出ているようだ。  まーとにかく面白い。練達の文体で自由自在にコントロールされる、知的で優雅でエスプリに満ちた最高のエンターテインメント。軽薄さはかけらもない。登場人物もほとんど40代以上で、洒脱な大人のドラマである。主人公の弓子と哲学教授の不倫なんかもごく淡々と余裕の筆致で描かれる。  メイ . . . 本文を読む

夜の幸

2008-03-07 21:25:46 | 音楽
『夜の幸』 原マスミ   ☆☆☆☆☆  原マスミといっても知ってる人はあまりいないだろう。よしもとばななの本の装丁でイラストを描いている人といった方が分かりやすいかも知れない。この人はイラストも描くが音楽も創るのである。自身のアルバムとしては『イマジネーション通信』『夢の四倍』『夜の幸』と三つしかなく、一番新しい『夜の幸』も89年リリースなので、もう随分長いことアルバムを出していないことになる。 . . . 本文を読む

アズールとアスマール

2008-03-05 12:17:58 | アニメ
『アズールとアスマール』 ミッシェル・オスロ監督   ☆☆☆☆☆  フランスのアニメ。日本版DVDを買って鑑賞。まーとにかく映像が綺麗。圧倒的な映像美、とはまさにこのこと。一つ一つの場面をプリントして額に入れて壁に飾りたくなる。緻密だけれどもひたすらリアリズムじゃなく、シンメトリックで独特の装飾性に溢れた構図。まるでマチスのような影がない平面性、光源がどこにあるのか分からない光の偏在性。そしてな . . . 本文を読む

土曜日

2008-03-03 18:01:09 | 
『土曜日』 イアン・マキューアン   ☆☆☆☆  マキューアンの新作を読了。これまでの作品とはまた違ったタイプの小説だった。主人公は40代後半の脳神経外科医。妻と成人した二人の子供あり、豪邸あり、ベンツあり。長身、趣味はスカッシュ。息子と娘はそれぞれ詩人とミュージシャン。妻との関係は良好。義父は有名だが過去の人となった詩人、母親は認知症で施設の中。こういう、まあ言ってみれば満ち足りた生活(認知症 . . . 本文を読む

Taking Notes

2008-03-01 13:10:28 | 音楽
『Taking Notes』 Jeff Berlin   ☆☆☆★  ジェフ・バーリンのソロ・アルバム。ジェフ・バーリンとは誰か? 英国ジャズ・ロックの雄ブラッフォードの超絶技巧ベーシストであり、アラン・ホールズワースやビル・ブラッフォードのソロにもよく顔を出す人である。渡辺香津美ともやったことがある。  とってもうまい。それは間違いない。超絶技巧の看板に偽りはない。が、地味といえば地味。プレ . . . 本文を読む