アブソリュート・エゴ・レビュー

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タイニイ・バブルス

2013-03-22 20:55:14 | 音楽
『タイニイ・バブルス』 サザンオールスターズ   ☆☆☆☆

 私は特に自分がサザンオールスターズのファンとは思わないが、数えてみるとかなりCDを持っている。ある時これに気づいて感心した。なるほど、これが国民的アーティストというものか。

 好きなのはサウンドが洗練される以前のごく初期で、『タイニイ・バブルス』『NUDE MAN』あたりを聴くことが多い。最近、最高傑作と言われる『KAMAKURA』を中古で入手したが、正直、全然面白くない。当時最先端だったサウンドなのだろうが見事に古びていて、聴いていると何だか索漠とした気分になってくる。それにひきかえ、『タイニイ・バブルス』あたりの泥臭い音は味が深い。手作り感がいっぱいだし、曲のセンスはすでに後期に劣らず一級品、かつその一方で微妙な垢抜けなさが愛嬌になっている。それに何といっても、桑田をはじめとするメンバーのパッションが伝わってくる。

 私の場合サザンのアルバムを通して聴くと曲がバラエティに富み過ぎていて、どうしても好みではない曲があり聴き通すのが億劫、ということになってしまいがちだが、このアルバムは問題ない。全曲聴き通せる。いちばんの難所はアルバムに大抵一曲ぐらい含まれている桑田と原坊以外のメンバーが歌ってる曲で、どうしてもとばしてしまうが、このアルバムでは「松田の子守唄」なのでちゃんと聴ける。これは名曲である。

 アルバム中フェイバリットな曲を挙げれば「タバコ・ロードにセクシーばあちゃん」「涙のアベニュー」「C調言葉に御用心」あたりになると思うが、とにかく全曲良い。それにしても「タバコ・ロードにセクシーばあちゃん」はなんとも粋な曲で、最高にかっこいいメロディとサウンドにこの歌詞がつくからたまらない。もう一度じいちゃんに会いたいと願うばあちゃんの歌である。「恋するマンスリー・デイ」のレゲエも決まっていて、桑田のヴォーカルが渋い。で、これはゆうこさんのマンスリーデイの歌。こういう曲が堂々と商品化されるようになったのも桑田からではないだろうか。

 「C調言葉に御用心」は「いとしのエリー」の次のシングルで、サザンの才能は一般的に「いとしのエリー」から認知されたことになっているが、私の場合、本格的にサザンを気に入ったのは「C調言葉に御用心」からだった。そして恒例の原坊曲は「私はピアノ」で、これはもうJ-POPの古典といっていいだろう。これがヒットしないわけがない、という曲である。

 そしてアルバムは真っ向勝負のパワーバラード「働けロック・バンド (Workin' for T.V.)」で締めくくられる。これはデビュー当時、テレビで色物扱いされていた頃のことを書いたといわれる曲で、内容はテレビ批判になっている。こういう詞を書いてもちゃんと聴ける曲にしてしまうのが桑田の才能である。根っからのエンターテイナーなんだなあ。


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