アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

Memoirs of a Geisha

2006-01-22 01:28:54 | 映画
『Memoirs of a Geisha』 Rob Marshall監督   ☆☆☆★

 日本では『SAYURI』で公開されているらしいが、米国では『Memoirs of a Geisha』。芸者の回想記、である。何と分かりやすいタイトルだろうか。

 評判が悪かったのでほとんど期待しないで行ったら、思ったより良かった。日本の描写に違和感があると聞いていたがそれもあまり感じなかった。時代は昭和初期なので和風と洋風が折衷して出てきてもおかしくないはずだ。まあなんかやたらでかい建物が出てきた時に「このでかさは日本じゃないな」と思ったのと、ところどころ音楽に中国が入っているなと思ったぐらいだ。みんな英語を喋ってるのは吹き替えだと思えばいい。そりゃ無理か。

 エキゾチズムが強調されているのは別に構わないと思う。はっきり言って、純和風なんて現代の日本人にとってももうエキゾチズムなのである。だからそのエキゾチズムを絢爛豪華に描き出した映像美は私にはかなり楽しめた。まあ日本の昔の町並みなんてのは「絢爛豪華」という言葉には似つかわしくなくて、そういう意味ではモノクロの黒澤映画のストイックな映像美にはかなわないと思う(『赤ひげ』なんて本当に素晴らしい)が、これはこれで単純に楽しめた。邦画ではなかなかここまで金をかけられないだろう。

 ストーリーはまあありがちで、『おしん』のような苦労話プラス純愛もの、という感じである。いじめもちゃんとある。女同士のドロドロもある。とびきり面白い話じゃないが、二時間半をあまり退屈せずに観れたので面白くないわけじゃないと思う。

 私が面白いと思ったのは千代(さゆり)が「芸者」としてのトレーニングを受けるところであった。「芸者」は「美」のプロフェッショナルであり、アーティストであるという考え方が面白く(本当はどうなのか知らないが)、千代が組織的なトレーニングを積むことでそのアートを身につけていくあたりの描写はワクワクする。

 それから子供時代の千代役の女の子が可愛い。大人になった千代はチャン・ツィイーだが、子役と顔が似ている。チャン・ツィイーはすごい美人じゃないが、あどけない可憐な感じがよかった。渡辺謙や役所広司もがんばっている。個人的には役所広司の演技がいいと思った。桃井かおりも悪くなかったが、あの英語のセリフ回しは監督の演出なのだろうか。ちょっとやり過ぎじゃないか。

 最後をハッピーエンドにしてくれたのは個人的には良かった。もともとこれはエキゾチックなファンタジー的映画で、リアリズムの映画ではない。だからちょっとだけ現実から浮き上がったような終わり方の方が似合っていると思う。

 しかし結局はアメリカ人が出てきておいしいところを持っていく話だろうと思っていたので、最後まで日本人メインのストーリーには驚いた。ハリウッドもこういう映画を作るようになったんだなあ。
 


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