『Focus』 井坂聡監督 ☆☆
レンタルDVDで鑑賞。浅野忠信の演技がすごいと聞いて観たのだが、あんまり面白くなかった。ちょっとカルト系である。
浅野忠信の演技は確かになかなかいい。ただこの映画の後半で彼が披露するようなキレる演技=狂気的な演技は、インパクトはあるけれども実はさほどの演技力は要求されないような気もする。それよりも前半から中盤にかけての素人っぽいナチュラルな演技の方がすごい。本当に演技していることを感じさせない演技だ。この映画は全篇ドキュメンタリータッチなので余計にそれが引き立つ。浅野と比べると、ディレクター役の白井晃はまだ芝居のにおいがする。
登場人物はTVディレクター、カメラマン、アシスタントの女の子、無線オタクの青年、の四人。カメラマンが撮っている映像がそのままこの映画というブレア・ウィッチ・プロジェクト方式だ(ただしこっちの方が早い)。映画の中で経過する時間は約一日弱。TVクルーが無線オタクの青年に公園でインタビューしたり、車の中で無線を盗聴したりしていると、拳銃をコインロッカーに隠したというヤクザの会話が聞こえてくる。興奮したディレクターはコインロッカーに先回りして拳銃をネコババし、それをオタク青年に持たせてコメントさせようとするが、青年はディレクターの横暴とやらせに嫌気がさしてもうイヤだと言い出す。口論しているところへチーマーが絡んできて、キレた青年ははずみでチーマーを射殺、そのままTVクルーごと車で逃亡する。錯乱している青年を必死になだめようとするディレクターだがヤケになった青年の暴走は止まらず、口止めのためディレクターにアシスタントの女の子をレイプさせてそれを撮影する。再び車に乗って海に行き、夜明けの海を眺めているところで拳銃の奪い合いになり、暴発して青年は死ぬ。茫然としているTVクルー、で終わり。これを全部、生々しいビデオカメラ映像でやる。
なんというか、殺伐とした映画だ。見所らしきものはおそらく二つ、キレたオタク青年の暴走と、やらせでもなんでもやって番組を盛り上げようとするディレクターのいやらしさ。そういう意味では、徐々にエスカレートしてくるディレクターのいい加減さや、後半に噴出する暴力の伏線として見せられるバスの乗客が中学生に刺される場面など、それなりに考えられた構成にはなっている。しかし、こういう題材をドキュメンタリー・タッチで見せられれば一応先が気になって見てしまうというレベルで、所詮ワイドショー的スキャンダリズムの域を出ていないように思う。だから映画を観終わった後何の感動もない。末梢神経をチクチクと刺激するスキャンダリズムのかけらが残るだけである。
DVDジャケットは妙にクールでスタイリッシュだが、内容は全然こんな感じじゃない。個人的には浅野忠信を観るなら『DISTANCE』『幻の光』を推薦します。
レンタルDVDで鑑賞。浅野忠信の演技がすごいと聞いて観たのだが、あんまり面白くなかった。ちょっとカルト系である。
浅野忠信の演技は確かになかなかいい。ただこの映画の後半で彼が披露するようなキレる演技=狂気的な演技は、インパクトはあるけれども実はさほどの演技力は要求されないような気もする。それよりも前半から中盤にかけての素人っぽいナチュラルな演技の方がすごい。本当に演技していることを感じさせない演技だ。この映画は全篇ドキュメンタリータッチなので余計にそれが引き立つ。浅野と比べると、ディレクター役の白井晃はまだ芝居のにおいがする。
登場人物はTVディレクター、カメラマン、アシスタントの女の子、無線オタクの青年、の四人。カメラマンが撮っている映像がそのままこの映画というブレア・ウィッチ・プロジェクト方式だ(ただしこっちの方が早い)。映画の中で経過する時間は約一日弱。TVクルーが無線オタクの青年に公園でインタビューしたり、車の中で無線を盗聴したりしていると、拳銃をコインロッカーに隠したというヤクザの会話が聞こえてくる。興奮したディレクターはコインロッカーに先回りして拳銃をネコババし、それをオタク青年に持たせてコメントさせようとするが、青年はディレクターの横暴とやらせに嫌気がさしてもうイヤだと言い出す。口論しているところへチーマーが絡んできて、キレた青年ははずみでチーマーを射殺、そのままTVクルーごと車で逃亡する。錯乱している青年を必死になだめようとするディレクターだがヤケになった青年の暴走は止まらず、口止めのためディレクターにアシスタントの女の子をレイプさせてそれを撮影する。再び車に乗って海に行き、夜明けの海を眺めているところで拳銃の奪い合いになり、暴発して青年は死ぬ。茫然としているTVクルー、で終わり。これを全部、生々しいビデオカメラ映像でやる。
なんというか、殺伐とした映画だ。見所らしきものはおそらく二つ、キレたオタク青年の暴走と、やらせでもなんでもやって番組を盛り上げようとするディレクターのいやらしさ。そういう意味では、徐々にエスカレートしてくるディレクターのいい加減さや、後半に噴出する暴力の伏線として見せられるバスの乗客が中学生に刺される場面など、それなりに考えられた構成にはなっている。しかし、こういう題材をドキュメンタリー・タッチで見せられれば一応先が気になって見てしまうというレベルで、所詮ワイドショー的スキャンダリズムの域を出ていないように思う。だから映画を観終わった後何の感動もない。末梢神経をチクチクと刺激するスキャンダリズムのかけらが残るだけである。
DVDジャケットは妙にクールでスタイリッシュだが、内容は全然こんな感じじゃない。個人的には浅野忠信を観るなら『DISTANCE』『幻の光』を推薦します。
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