アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

SALT

2010-08-25 19:48:46 | 映画
『SALT』  Phillip Noyce監督   ☆☆★

 先週末、アンジェリーナ・ジョリーの『SALT』を観てきた。ヒット作のはずだが、映画館はすでにガラガラだった。さすが田舎の映画館である。おかげで特等席で観ることができた。

 ボーン・シリーズみたいなアクションものと聞いたこと、それから世間の評判はかなり良いらしいということからわりと期待したのだが、残念ながら期待外れだった。ボーン・シリーズのあの切れ味、ワクワク感はない。確かに似た感じではある。きっと作る方も意識したんだろう。が、私的には全然違うといわなければならない。

 まず、主人公のイヴリン・ソルトがあまりにスーパー過ぎる。ジェイソン・ボーンだってスーパーじゃないかと言われそうだが、あれがギリギリ許容範囲内でリアリティを持たせているとしたら、本作のイヴリン・ソルトはもうマンガの域に突入してしまっている。何事もやり過ぎはいかんのだなあ。例えば、身近にある日用品をとっさに利用するというボーンもよく使う技、あれをソルトもやるのだが、追いつめられたソルトが消火器だのパイプなどを使って即席で作ったのはなんと、手作りのロケット・ランチャーである。いくらなんでも無理があるんじゃないか?

 ロシアのスパイ連中のアジトではたった一人であっけなく全滅させてしまうし、逮捕されて護送される時も自分は手錠はめられ素手、まわりには武装警官が大勢いるというのに、頭突き、体当たり、肘打ちなどの肉体技のみで警官たちを手玉に取り、現場から悠然と歩いて逃走する。要するに、ソルトは超人なのである。あれなら牢屋に入れられても拘束されても、好きな時に脱出できるだろう。ホワイトハウスに侵入した時も、エレベーターシャフトの中をぴょんぴょんジャンプしながら降下していく。あんたはスパイダーマンか。

 それから格闘シーンもたくさん出てくるが、どうしてもソルトが強そうに見えない。これも大きな不満だ。体もか細いし、華奢なのに、彼女が「んん!」とかいって殴ると、ごつい男が軽々とぶっ飛ぶのである。ありゃ不自然だろう。これは本人の演技だけでなく、演出とか撮り方もあると思う。私がジェイソン・ボーンと闘ったら瞬殺されるだろうという気がするが、ソルトと闘ってもあんまり負けそうな気がしない。

 それから更に言うと、話の都合上、ソルトはCIA職員達やアメリカ人のシークレット・サービス達を殺さない。向こうは銃で武装しているのに、殴る蹴るで気絶させていくだけだ。つまり手加減をしているのである。敵は大抵複数いるが、一人を殴り倒し、もう一人を蹴り倒し、その間に立ち上がった最初の敵をもう一度殴り倒す、なんてシーンもある。その間、敵は銃を使わない。なんでだろう。ソルトがこの映画の主人公だから、という以外の理由を思いつかない。

 まあそんなことは気にせずに単純に楽しめばいいんだよと言われそうだが、アクション映画の良し悪しってそういう細部で決まってくるんじゃないだろうか。いずれにしろ私にとっては物足りない映画だった。


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