『空飛ぶタイヤ』 麻生学、鈴木浩介監督 ☆☆☆☆☆
非常に面白かった『空飛ぶタイヤ』がWOWWOWでドラマ化されていて、これがまた異常なくらい評判が良い。これは観ないわけにはいかない、というわけでDVDを購入、期待感をいっぱいに膨らませて観賞した。ここまで期待すると普通はコケるものだが、これは見事に期待に応えてくれた。大満足。
内容はかなり小説に忠実である。小説の男性キャラクターを何人か女性に変えてあること(新聞記者の榎本を水野美紀、ホープ自動車品証のネットワークエンジニア杉本を尾野真千子が演じている)、ホープ銀行の井崎を狩野常務の姪の婚約者に設定してあること(井崎にかかるプレッシャーを強調するためと思われるが、副産物として姪と井崎のラブストーリーが加わった)が一番目立つ変更だ。それからもちろん、全5回のドラマにまとめるために簡略化してある部分はあって、それはPTA絡みのエピソード(妥当)、赤松が他社の事故を調べていく過程(簡潔にしてあるがツボは外していない)、赤松運送がはるな銀行から受けるサポート(好きなエピソードがなくなっていて残念)、ホープ銀行内のパワーバランス(ほぼ井崎と巻田専務に限定)、などである。あ、忘れていた、一番大きな変更は原作で「いかにもおやじ」なルックスの赤松がかっこいい仲村トオルになっていることかも知れない。
とはいえ、原作のファンが観てもストーリー展開に違和感はないはずだ。上記のような多少のアレンジと引き替えに、役者たちの熱演という大きなスパイスが加わっている。特に素晴らしいのはやはり、主演の赤松社長を演じた仲村トオルだ。社員思いの熱い経営者を力いっぱい演じていて、観ていてすがすがしい。DVD特典で水野美紀が、彼と差し向かいで芝居する場面で思わず涙しそうになり、こらえるのに必死だったと告白していたが、それも納得の大熱演だ。まあしかし、これだけ面白いホンでこの役をもらったら熱くならなきゃ嘘だろう。
沢田役の田辺誠一も良かった。これは黒とも白ともつかないグレーな存在感を持つキャラだが、その揺らぎをスマートに演じていたと思う。かっこ良かった。それから個人的にツボだったのが刑事役の遠藤憲一。相変わらずコワい顔である。じっと見つめられると噛み付かれるのかと心配になる。最初は赤松を頭から犯人扱いにして超ウザイが、だんだん「実はいい奴か?」と思わせる部分が出てくるあたり、なかなか魅せます。役者の味っていうのは複雑だなあ。悪役側では大ボスの狩野常務を國村隼が演じているが、小説に比べてもう少し人間味を出してある。が、貫禄は充分だ。あと、嫌味な品証課長を演じた相島一之も印象に残った。こんな奴会社にいそうである。
まあとりあえず、観て下さいと言っておこう。強力無比だ。第一回の冒頭、男の子を手を引いて歩道を歩く若い母親、背後に迫るトラック、そして突然の脱輪。悲鳴。ここから全5回、怒涛のように見せます。
非常に面白かった『空飛ぶタイヤ』がWOWWOWでドラマ化されていて、これがまた異常なくらい評判が良い。これは観ないわけにはいかない、というわけでDVDを購入、期待感をいっぱいに膨らませて観賞した。ここまで期待すると普通はコケるものだが、これは見事に期待に応えてくれた。大満足。
内容はかなり小説に忠実である。小説の男性キャラクターを何人か女性に変えてあること(新聞記者の榎本を水野美紀、ホープ自動車品証のネットワークエンジニア杉本を尾野真千子が演じている)、ホープ銀行の井崎を狩野常務の姪の婚約者に設定してあること(井崎にかかるプレッシャーを強調するためと思われるが、副産物として姪と井崎のラブストーリーが加わった)が一番目立つ変更だ。それからもちろん、全5回のドラマにまとめるために簡略化してある部分はあって、それはPTA絡みのエピソード(妥当)、赤松が他社の事故を調べていく過程(簡潔にしてあるがツボは外していない)、赤松運送がはるな銀行から受けるサポート(好きなエピソードがなくなっていて残念)、ホープ銀行内のパワーバランス(ほぼ井崎と巻田専務に限定)、などである。あ、忘れていた、一番大きな変更は原作で「いかにもおやじ」なルックスの赤松がかっこいい仲村トオルになっていることかも知れない。
とはいえ、原作のファンが観てもストーリー展開に違和感はないはずだ。上記のような多少のアレンジと引き替えに、役者たちの熱演という大きなスパイスが加わっている。特に素晴らしいのはやはり、主演の赤松社長を演じた仲村トオルだ。社員思いの熱い経営者を力いっぱい演じていて、観ていてすがすがしい。DVD特典で水野美紀が、彼と差し向かいで芝居する場面で思わず涙しそうになり、こらえるのに必死だったと告白していたが、それも納得の大熱演だ。まあしかし、これだけ面白いホンでこの役をもらったら熱くならなきゃ嘘だろう。
沢田役の田辺誠一も良かった。これは黒とも白ともつかないグレーな存在感を持つキャラだが、その揺らぎをスマートに演じていたと思う。かっこ良かった。それから個人的にツボだったのが刑事役の遠藤憲一。相変わらずコワい顔である。じっと見つめられると噛み付かれるのかと心配になる。最初は赤松を頭から犯人扱いにして超ウザイが、だんだん「実はいい奴か?」と思わせる部分が出てくるあたり、なかなか魅せます。役者の味っていうのは複雑だなあ。悪役側では大ボスの狩野常務を國村隼が演じているが、小説に比べてもう少し人間味を出してある。が、貫禄は充分だ。あと、嫌味な品証課長を演じた相島一之も印象に残った。こんな奴会社にいそうである。
まあとりあえず、観て下さいと言っておこう。強力無比だ。第一回の冒頭、男の子を手を引いて歩道を歩く若い母親、背後に迫るトラック、そして突然の脱輪。悲鳴。ここから全5回、怒涛のように見せます。
DVDの一気鑑賞もうらやましい限りですが、「来週が待ち遠しい」と云う懐かしい感情も結構良いものです。
ところで『下町ロケット』のドラマ版もいいですか?
主人公の娘や元妻など、女性の描き方にはついつい辛口になってしまいます。でも、(今回も)設定を女性に変更してしまった弁護士については、寺島しのぶの演技で納得しました。