崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

『甦る民俗映像』

2016年04月02日 04時57分45秒 | 旅行
先週「日本映像民俗学の会」の会場の法政大学市ヶ谷キャンパスにて岩波書店の編集局副部長の馬場氏からDVDブック『甦る民俗映像―― 渋沢敬三と宮本馨太郎が撮った1930年代の日本・アジア ――』を執筆者として献本して頂いた。国立歴史民俗博物館でのシンポジウム以来出版を準備して完成されたものである。これまで公開されることのなかった,渋沢敬三が創ったアチックミュージアムで制作された渋沢・宮本の動画作品のほぼすべてを高画質のデジタル映像で再現.1枚2時間6枚組のDVDと詳細な作品解説の書籍をボックスで提供.コラムとフィルモグラフィーを付す.30年代の日本各地および朝鮮・台湾・樺太の生活の映像と合本した本である(A5判・並製・480頁)。編集委員としては1930年代に撮影した宮本馨太郎氏の息子の宮本瑞夫先生をはじめ佐野賢治,北村皆雄, 原田健一,岡田一男,内田順子,高城玲の諸氏である。
 私は「記録と記憶」という一節を寄稿した。日帝植民地史を遡りながら調査をしているうちに私は文書から画像へ、さらに動画の映像・映画へと向かって行った。多くはプロパガンダ的なものであったが、中にはその時代の生活ふりを覗いてみることができた。同時期において国策映画やプロパガンダ映画が多く作られて多くの人が影響された。それは今CMに影響されるのと似ている。しかし多くの人はそのような脈絡とは関係なく、映像を作り残している。植民地の京城での生活、花見の盛りあがり、喫茶店やバーなどでコーヒーやビールを飲み、ファッション街の通りなど人間が生きている動画には私は大きなショックを受けた。映像を通して植民地研究をすると決心し、植民地期の映像に関心を持った。1936年の映像記録の「朝鮮多島海探訪記」「蔚山達里農楽」は当時盛んに作られた国策映画とは違って、当時の民俗学や人類学の映像として新鮮さがある。韓国の戦前の記録映像の唯一のものである。麦わら帽子に巻いたリボンが映画フィルムであることに気が付いた。私は子供の時にこのフィルムのリボンを巻いた帽子をかぶったことがあり、映っている画像を観察した覚えがある。このようにフィルムを切り売ったので保存されなかったことが分かる。