風邪で声が出にくかったが、「風の丘を越えて」の上映の前に解説した。1960年代全羅道で被差別集団のムーダンを調査したこと、そのムーダンつまり巫俗から生まれたパンソリ、旅芸能人の生活、パンソリと恨の関係について語った。元々神にささげる宗教的な神歌から発生した歌であり、服飾や踊り、伴奏は最小限にして音の美しさと神秘さが重要視される。その音の神秘さを悟ることを「得音」という。原題「西便制」とはその悲しさと神秘さを特徴とするという。それは「恨」が主題である。「恨み」を越えることが「恨」である。なぜ女性に生まれたのか、なぜ被差別集団に生まれたのかなど運命とか構造的な矛盾に対する怒りと諦念の感情である。
日本人にこの映画の面白さが伝わるように解説したがどうであろうか。今朝の「毎日新聞」の西嶋氏の記事を読んで安心した(写真)。いま研究所主催で行っている「楽しい韓国文化論」の最終講義として私が以前調査した現地へ旅行を計画している。巫俗とパンソリの本場を訪ねてみたい。昨日の映画祭は「金色夜叉」など多様な内容であったが私は残念ながら体調不良で麻生氏の活弁だけを見て帰った。映画実行委員会と大学の皆さんには大変迷惑をかけてしまったが、心から感謝したい。