崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

「一生一冊の名作」

2011年01月08日 23時09分46秒 | エッセイ
 年末に韓国の出版社へ送った私の1冊の本の原稿が15日間で初稿がメールで送られてきて驚いた。ハングルの原稿をおそらく数人で分けて打ったのではないか。超スピーディな仕事振りに驚きながら日本の常識からは大丈夫かと不安な文句が言われそうである。慎重にするということで仕事を怠ける部類の人はいないだろうか。私が若い時に本を出した時、ある人は慎重にするべきだと批判されたことがある。その彼は論著らしいものを1冊も発表することなく、今現職から離れている。
 一生一冊の名作を書いたのは「風と共に去りぬ」(Gone With the Wind)の作者マーガレット・ミッチェルである。この長編小説はアメリカ南部の貴族的白人文化社会が消え「去った」ことをテーマにしている。女史は10年近い歳月を費やして執筆され、1936年に出版した。一冊のためにも長い年月をかけ、一生一冊残した人もいる。長く考え磨き、努力したと思う。それは怠けたことを意味しない。凡人が彼女のような非凡な努力者を真似することは結構なことであるが、それを借語して慎重だといいながら怠けることはよくない。
 私は凡人として若い時から多く拙著を世に出してきた。残してきた足跡を今省みながら修正、増補している。