崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

盲目のピアニスト

2009年06月12日 05時17分50秒 | エッセイ
 私は10年ほど前に、突然両耳が完全に聞こえなくなったことがある。幸いにも片方が回復し現在片方に補聴器を使っている。自己診断では若い時の長い間の服薬と戦争中で防空壕の中で遊んだ銃声などによるものと思って諦めている。聞こえなくなり、初め失望感に落ちたがベートーベンのことを思って大きく慰められた。
 今度全盲のピアニスト、伸行さん(20)が国際ピアノコンクールで日本人として初優勝した。それを聞いた多くの人に勇気を与えてくれる。特に盲目の方には朗報であろう。このようなニュースを聞いてすぐヘレンケーラーを思い出す。またその人の身近にいる人の存在を想像する。ケーラーの家庭教師のキャサリンを思うように辻井氏の親の育て方に関心が引かれる。広く考えるとその社会環境も考えなければならない。
 人間の能力は無限に発展できるようである。その脳の機能の一部分しか開発発展させないで生きているわれわれの生き方への教訓がある。私はまだ片方の耳がよく聞こえている。今のうち素晴らしい音楽を楽しみにしたい。