崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

鳳仙花

2009年06月02日 05時37分19秒 | エッセイ
 ベランダに鳳仙花の白、ピンク、紫の花が咲いている。とても懐かしい。生まれ故郷の庭で母が楽しんだ花である。姉と私も花を摘んでミョウバンをほんの少し入れてつぶして指の爪につけて赤く染めたことがある。昨日家内と一緒にやってみたが爪は薄いオレンジ色になった。
 私個人としては夏に咲く母のイメージの花であるが、この花は朝鮮民族の花でもある。中央アジアや中国の朝鮮族の村でこの鳳仙花を見つけて嬉しかったことも思い出す。この花が朝鮮民族の悲しみを象徴するようになったのは洪蘭坡作曲の「鳳仙花」という歌によったといえる。塀の下に咲いているあなたの姿、悲しい…という歌詞とメロディである。
 植民地下の朝鮮民族を象徴する歌として流行って、当時禁曲にもなった。最近韓国では作曲家洪蘭坡が親日派として非難され、記念行事が中止にもなった。花に民族性を付与して花に迷惑をかけたことは以前にも指摘したようにばかばかしいことである。未だに文化に民族性を付与して考える人は多い。私は脱民族主義を信念としてもっている。鳳仙花を見て楽しみ、爪を染めることに留めておく。