大福 りす の 隠れ家

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僕と僕の母様 第155・最終回

2011年08月24日 11時31分59秒 | 小説
『僕と僕の母様』  目次

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僕と僕の母様 第155・最終回



母様と帰りの電車に乗っている時に 順平からメールが入った。

『卒業式終わったんだろう? みんなで先生を 殴りに行ったか?』

『行くわけないだろう。 それより そっちはどうなのさ』

『昨日、追認合格したから 明日一人で 卒業式だってさ』

『よかったじゃん、卒業できて』 このメールのやりとりを 母様が見ていて

「明日、病院に行く前に 行ってあげれば?」 そう言ってきた。

「そのつもりだったけど、切符代がもったいないから 止めとく」 とっくに定期が切れていて 今日も母様に 切符を買って貰っていたのだ。

「一人で可哀相に」 それなら切符代を くださいよ。

「そう言えば ブラスバンドが 演奏してたわね、上手じゃない」

「ああ、大分上手くなってたみたいだね」

「それだけ?」 何なの?

「それだけだよ」 他に何か?

「ふーん」 何が聞きたいんだ?



その日の夜夕飯が終わって 母様がおもむろに 袋を僕に手渡した。

「卒業おめでとう。 あ、でもこれは卒業のおめでとうじゃなくて お母さんの 大学進学の夢を 叶えてくれたから そのお礼。 でも半分ね。 今は半分の夢を 叶えてくれたんだから。 残りの半分は 四年で卒業してくれたら お母さんの 長い間待った夢を 陵也が叶えてくれた って言う事で その時に改めて ありがとうだわ。 だから今日は 半分ありがとうのお礼」 第一希望を 落としたことが 今でも心に 引っかかっているから 返事に困ってしまう。

とにかく 袋から中のものを 取り出した。 何なんだろう 固い箱に 入っているようだ。 包装紙を開けてみると 中にはお揃いの万年筆とシャーペンが 入っていた。 それも二本とも結構重い。

「大学生なんだし 万年筆ぐらい 持ってないとね」 思いもしなかった。  僕は無言だ。

「陵也も以前 万年筆が欲しいって 言ってたじゃない。 気に入らない?」 無言の僕に反応して 母様が聞いてきた。

「うん、欲しかった」 まるで棒読みで 呆然状態に近い顔で そう答えた。

「何? じゃあ、デザインが 気に入らないわけ? 細すぎた? 太いのはなー・・・お母さんが あんまり好きじゃないから 細いのにしたんだけど」 黒に近い紺色のようだが 殆ど黒。 そこに 分かるか分からないかくらいの 同じような色で 模様とも言えない 模様が入っている。

「これくらいがよかった」 まだボーっとして 目の前に持ち上げて見ている。

「じゃ、何なの? 色がイヤなわけ?」 少し時間をおいて やっと我に返った。

「違うよ。 あんまりにも 予想をしてなかった展開だから ビックリしてただけ。 ありがとう」 お礼を言うのすら 忘れていた。

「気に入った?」 心配そうに僕を見ている。

「うん」 そう言って 何か書いてみようと 初めて持つ自分の万年筆の先を 新聞の上に置いてみた。

「あ、ダメよ そのままじゃ書けないわよ。 インクを入れなきゃ。 袋の中に 小さな包装紙が まだあるでしょ」 インク? 袋の中を見てみると 確かにまだ何かあった。

「これ?」 それを取り出して 母様に渡すと 包装紙を開けて 中からインクとやらを出して

「いい? こうやって ここを開けて このインクを差し込むの。 それからやっと書けるわけだけど すぐにインクが 出てこないから イライラして 無理に書こうとすると 先が痛むからね」 万年筆とやらは 少し時間がかかるようだ。

「はい、もう書けるわよ。 あんまり長い間使わなかったら インクが固まって また書けなくなるけど 水なんかで先を濡らすと 書けるからね」 その説明を受けながら 新聞の端に クルクルと円を 描くように 螺旋を書いていった。

「気に入った ありがとう」 もう一度そう言った。



今日一晩寝て起きると 明日から入院だ。 そして手術。

正太には 手術のことを 言ってあるが 順平には言っていない。 それに正太にも 来ないでいいからと 伝えてある。
 
手術跡のギブスをしたまま 四月からは大学生としての 僕が始まる。

いったいどういう風に 僕がなっていくのか 想像もつかない。

取りあえず 母様が引いた 幾つかの路線の内の一つを 自分で選んだんだから その線路の上を 歩いていくのだろう。

母様は「高校生じゃないんだから 自由にやりなさい。 毎日家に帰ってくる必要も ないわよ」 と言うが この先この母様を 僕はどう理解していくのだろうか。

とにかく


頑張れ僕!




       完







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