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日の元 大和の民が 一つの大きな和になりますように
僕と僕の母様 第52回
次の日
「陵也! 起きなさい」
ああ、どこか遠くで 母様の声がする。
夏休みなのに 何でこんなに早く起こされなきゃ いけないんだ。 そう思いながら また記憶が遠のいていく。
「陵也!」 何度目かに やっと現実に戻ってきた。 ああそうだ、起きなきゃいけないんだ。
「は・・・い」 半分寝た声で 返事をした。 そしてまた ウトウトしていたら
「起きなさいって!」 母様の鬼の顔が 僕の目の前にある。 そのとたん頭を叩かれた。
「何がトチって みんなに迷惑をかけたら 気になるよ、遅刻した方が もっと悪いでしょう。 早く起きなさい」 また叩かれた。
やっとの思いで体を起こして ベッドを降りた。 いつもの事だが朝は辛い。 身体が重い。
いつものように 朝のトーストを食べてから ボーっとしたまま家を出る。
リビングを出る時に 「行ってきます」 と母様の顔を見て言う。
「はーい、頑張ってね 楽しんでくるのよ」 そう言いながら 玄関まで出てきた母様が 靴を履き終えた僕に向かって 突然チアガールのように 踊り出す。
「ガンバレ、ガンバレ、リョーオーヤー、ガンバレ、ガンバレ、リョーオーヤー」 両手にポンポンを 持っているつもりだろう。
このチアガールダンスは 僕が何かあるときに 母様が必ず数秒ほど玄関で踊る 不細工踊りだ。 前回は高校の受験の日だった。 そして最後に一言
「あー・・・腰イタ・・・」 これが 終わりの合図のようなものだ。
「行ってきます」 ボーットした頭も少し回復して そう言って僕は笑いながら テレながら出ていく。
いつものように自転車をこいで 電車に乗って学校に向かう。
自転車をこいでいるときは そうでもなかったが 電車に乗って少し落ち着くと まだそれほど大きいものではない 緊張が始まってきた。
学校に近づくにつれ それはだんだんと大きくなってきた。
学校の正門の前に立って 少しの間校舎をじっと見て そして大きく深呼吸をした。
「陵也くん」 後ろから 同級生フルートの声が聞こえた。
振り向くと 少し離れた所から走ってくる。
今の緊張丸出しの深呼吸 見られちゃったかな、そうだと少し恥ずかしい。
「お早う」 そう言った同級生フルートの方にも 緊張の色がある様に見える。
「お早う」 そう言ったきり お互い何も話せない。
正門をくぐり 部室のある校舎に向かって歩いていく。
二人とも無言だ。 でもイヤな空間ではない。
校舎に入り 階段を昇り 廊下を歩いていると 「今日が来ちゃったね」 同級生フルートが そう切り出した。
「うん」 僕も同級生フルートも 話をしていても ただ前を向いている。
「頑張ろうね」
「うん」
「やるっきゃない。・・・ ねっ!」 声のトーンが少し上がって そう言った。
「うん」 前を見ながら 少し顔が緩んだ。
「間違ったって良いんだよ、音楽で楽しめれば良いんだよ。 学校の名前を言われたからって 金賞を取らなきゃいけない 学校じゃないんだから ねっ、そう思わない?」 どっかで聞いた話だ。
「うん、そうだよね やるしかないんだよね」 お互い顔を見た。
だんだんと 緊張という雲がかかっていた僕の心が 晴れてきたような気がした。
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