大福 りす の 隠れ家

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僕と僕の母様 第32回

2011年03月03日 14時11分36秒 | 小説
僕と僕の母様 第32回



「きゃー、ありがとう。」 そう言って おでこのところで両手を合わせ そして続けて

「・・・うーんっと・・・確か一年電子コースの・・・あ、ブラバンに入ってきた陵也君だ。 違う? 確かそうだよね、みんな陵也君って呼んでるよね」 ほとんど高校生のノリで話し出してきた。

それにしてもすごい。 何で僕を知っているのだろうか。

僕は音楽を選択していなかったから 先生の授業を受けた事がない。 それに僕と先生がまともに顔を合わせたのは あの部室で先生が携帯をかけに来た時と 部室を開けに来た時だけだ。

それなのに学年やコースもそうだけど 名前と顔を一致させて覚えてるなんて いくらやる事が子供でも やっぱり先生だけあって頭はいいんだ。 と感心した。

「陵也 何してんの 早く行かなきゃチャイム鳴るぞ」 クラスの奴がそう言って 僕の後ろを通って行った。

「えー! もうそんな時間? 授業に遅れちゃう! 私、校舎移動なのにぃ~、じゃあ、またね」 廊下を走っていきました。 先生廊下を走ってはいけません。

先生の「またね」 が魔力を放ったのかどうか分からないが その時をきっかけに 先生と廊下なんかであった時には よく喋るようになった。



部活自体は何時までと特に決まっていないので みんなそのときに用事があれば 適当に帰って行く。

僕は日頃特に何の予定もないし みんなのお喋りに付き合っていて あまり練習が出来なかった日は 少しでも吹けるようになりたいという気持ちもあって たいてい最後まで残っているが ある日最後まで残っていたのが 僕だけになった日があった。

もう夕陽も落ちて暗くなっていた道を 街頭の明かりをたよりに 駅に向かって歩いていると 後ろから「待ってー 陵也くーん」 と言う聞いたことのある 高い声が聞こえた。 もしかしてと振り向くと あの音楽の先生だ。

「一緒に帰ろー」 と叫んでこっちに向かって走ってくる。

僕の横に来てもう一度「一緒に帰ろ」 と言って白い息を弾ませながらニコッと笑った。

そして弾丸のように喋り出した。 

「聞いてー 昨日大学時代から ずっと友達してた子とディナーに行ったのね・・・」 とか 先生の話は主に先生自身の友達の事だった。

普通、教師ともなると授業はどうだとか ブラバンやっていけそうか とかって話すようなものだが そんな話題にはまったくならなかった。

本当にこの人は これからずっと先生をやっていけるのだろうか。



この日の事はしっかり母様に話した。

ついでにその先生の色んなドジな話や 生徒から完全に子供扱いされて 心底幼稚な先生なんだということも 付け加えて話した。

母様の返事は「陵也がそういう話し方をするということは 陵也にとってその先生は良いと感じたんだ」 となんか違う方向の話になった。

僕としては 先生のドジ話で盛り上がろうとしてたのに 僕から見ての先生の話になってしまった。

でも当たってる。 母様の言った『良い』 という言葉の意味を僕は理解している。

僕にとって親しみやすいとか 興味を惹くとかっていう意味だ。

「うん」 と答えると

「いいじゃない、音楽の先生なんだから 色々と教えてもらえばいいのよ」 と言ってきた。 

母様の言う 教えてもらうっていうのが 何を指すのか良く分からないが まあ、何かで聞きたい事があれば 確かに聞きやすい相手だから「そうだね」 と返事をした。



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