大福 りす の 隠れ家

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僕と僕の母様 第113回

2011年06月24日 16時07分55秒 | 小説
『僕と僕の母様』  目次

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僕と僕の母様 第113回



三日目も 同じような練習内容だった。

民宿の中の様子も そんなに変わり映えしなく いつも通り みんなが騒いでいるだけだ。

その翌朝、最終練習の日だ。 今日は午前中の研修で終わりだ。

「みんな集まって、今日は仕上げの日になるんだけど たった二日、三日の練習では なかなか思い通りに 滑れないと思う。 でもみんなの頑張りがあったから 初日に比べて 見違えるほどの上達ぶりだ。 今日は半日で終わってしまうけど 目一杯滑っていこう」 そうインストラクターさんが言ったら

「頑張ります」 なんてみんな勢いづいて 返事をしている。

昨日は目一杯みんな頑張っていたのだが この日は半分楽しみながら やっていたという感じだった。

例えば リフトに乗って 滑って降りてくるときなんか 僕がインストラクターさんに次いで 滑って降りて行き インストラクターさんの横に止まり その次の奴が 滑り降りてくるのを 待っていたときがあったが こっちに向かって 滑ってくるまでは 良かったのだが 僕達を通りすぎて そのままへっぴりボーゲンで滑っていく。

「おーい、何処行くんだー」 インストラクターさんが 大声で叫ぶと「止まれませーん」 とそのまま 下の方まで行ってしまった。

あーあ、といった感じで 二人で次の奴が 滑り降りてくるのを見ようと 上を見た途端 僕達の目の前を これまた次の奴が 勢い良く滑って行った。

「おーい、何処行くんだー」 同じ事を インストラクターさんが叫ぶと これまた同じように「止まれませーん」 と叫びながら 今度は坂の横に 落ちていかないように 積み上げられた雪の山に 突撃して行った。

後の二人も 同じようなもので そんな感じで 坂の途中に止まっていたのは 僕とインストラクターさんの 二人だけになったのだが その時にインストラクターさんが「みんなノリノリだな」 そんなことを言った。

「そうなんですか?」 え? 止まれないだけじゃないの?

「昨日までの スピードへの恐怖心とかっていうものが すっかりなくなって 思い通りに滑れないと言っても やる気があってこその暴走だからね。 怪我には気を付けなくちゃいけないけど 滑りたいと言う気持ちが 恐怖心を上回ったっていうのが嬉しいな」

僕は何と返事をして良いのか分からず「はぁ」 と訳の分からないことを 言っていた。

「さあ、早くみんなを 拾いに行こうか」 そう言って 二人でみんなを拾いに行った。

一人ずつ拾いながら 最後に下の方まで滑って行った奴の元に行くと

「先生、先生、ノンストップで 下まで降りられたよ」 と自慢気に言っている。

「転けずに降りられたことは すごいけど ストップできるように しなくちゃね」 そう言うインストラクターさんに反して コイツはとんでもないことを 言い出した。

「先生、滑ってるときは怖かったけど 滑り終わった今 すごく嬉しいんです。 次もリフトを降りてから止まらずに ずっと滑って降りて行きたいです」

無理だろう。





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