大福 りす の 隠れ家

小説を書いたり 気になったことなど を書いています。
お暇な時にお寄りください。

連休の更新お知らせ

2011年04月30日 02時43分24秒 | 日記
いつも 『僕と僕の母様』 を読んで頂きまして 有難う御座います。

極力更新していくよう 努めてまいりますが

大型連休に入りまして いつものように更新することが 出来にくくなると思いますので ここにお知らせを致します。





先日、東日本大震災で亡くなった方々の 四十九日法要が行われましたが

四十九日という日数。



いつも申し上げるのですが 私は特別な知識も 何もありませんので あくまでも四方山話として お聞き下さい。



本で読んだのですが 日本でこの法要というものは 大体が仏教で行われていて お坊様がされています。


ですから 仏教的考え方に なるのかもしれませんが


昔は火葬ではなく 土葬が行われていました。 

人間の魂が 肉体と紐のようなもので 繋がれていて 四十九日位経つと 肉体が形を変えていくので その紐が 肉体から切れて 魂が天に昇っていくと 書かれていました。

この紐のようなものは ゴムのように いくらでも伸びるので 四十九日間は 家族の元に行ったり 気になるところに行ったりと 出来るそうです。

現在は火葬を行っているので 事情も少し変わってきている とも書かれていました。


この本を書いていた方は たしか お坊様ではなかったと 記憶しています。 ですから 仏教で本当にそう言われているかどうかは 分かりません。

これを書く前に 四十九日のことを PCで調べたのですが 他にも色んな説が書かれていました。


又、今の時代は 四十九日にとらわれず スピリチュアル、精神世界 という名で また違うことが 沢山言われています。




夕べ つけっぱなしのテレビに 震災の地で 喪服を着られた方が 泣きながら微笑んでいらっしゃいました。

気になりそのまま テレビを見ていると 喜んでいらっしゃるようにも見えたので もしかして どこかの避難所で 探していらっしゃる方に逢えたのか と思っていましたら

行方不明だった 娘さんのご遺体が見つかったとの事でした。

「よかった よかった」 とご両親が 仰っていらっしゃいました。




人は出来れば 亡くなった方の肉体に逢い そして 供養させて頂いて 亡くなった方のご冥福をお祈りする ・・・ こうすることが 何よりも心休まることなのでしょう。

そしてその心が 亡くなった方の魂にも届き 穏やかにこの世を後にされる。 


今回の四十九日法要にあたり 誰よりもの為になったのは 亡くなった方々以上に 残された遺族の方々だったと思います。





まだまだ 行方不明の方が沢山いらっしゃいます。

どこかの小さな所に 避難されて連絡が取れないのかもしれません。

そして お亡くなりになられている方は 一日も早く発見され 御家族の元で逢えます様 お祈りいたします。




今回の大震災での 自衛隊のご活動 ご苦労様で御座います。 大変なご活動、メディアを通して見させて頂いております。

どうか 無理のし過ぎの無いよう 皆様方のお体も 大切になさって下さい。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

僕と僕の母様 第74回

2011年04月29日 14時00分39秒 | 小説
『僕と僕の母様』  目次

第 1 回第 2 回第 3 回第 4回第 5 回第 6 回第 7回第 8 回第 9 回第10回
第11回第12回第13回第14回第15回第16回第17回第18回第19回第20回
第21回第22回第23回第24回第25回第26回第27回第28回第29回第30回
第31回第32回第33回第34回第35回第36回第37回第38回第39回第40回
第41回第42回第43回第44回第45回第46回第47回第48回第49回第50回
第51回第52回第53回第54回第55回第56回第57回第58回第59回第60回
第61回第62回第63回第64回第65回第66回第67回第68回第69回第70回

以降は カテゴリ 又は 最近記事より お入り下さるようお願い致します。

************************************************************************



僕と僕の母様 第74回

 

みんなの笑い声や 口々に話している会話の隙間から 一際大きな声で

「先生も若いじゃん、こんな若い子の曲知ってんだ」 コンクールに出ていない 男子同級生の一人が言った。

「何失礼なことを言ってんだ。 先生はお前達の親世代より ずっと若いんだからな」

「へー、じゃあ何歳なの?」 また同じヤツが言った。

「何年か前に 成人式を迎えたところだ」

「その何年か前が ミソじゃん」 まただ、少ししつこ過ぎないか。 そこに部長が割って入った。

「先生、この曲でいいんじゃないですか? みんなどう?」

「うん、三年生を送るんだから 単純にクラシックなんかにするより よっぽど良いと思う」

「そうだよね、みんなの知ってる曲の方が 分かりやすいもんね」 女子先輩達がそう言いながら まるで楽器を持っているかのように 手を動かし始めた。 もうやる気十分だ。 でも先輩 先輩たちは演奏しないんですよ。

その言葉を聞いて 先生もピノキオの鼻だ。

「そうだろう、いいだろう この曲も良いし この時期にこの曲を持ってきた先生を みんな尊敬できるだろう」 ピノキオの鼻が伸びた。

「はぁー? 先生調子に乗りすぎ」 またヤツが言う。

僕はコイツのことを 良く知らないが コンクールの時にも 一番はしゃいでいて目立っていた。 あまり好きなタイプではないみたいだ。

「じゃあ、これで決まりだな。 それじゃあ次に配るのは メロ譜じゃなくて お前達の譜面を配るからな」 えっ、もうブラバン用の譜面も 用意してあるって言うの?  みんなにこの曲イヤだって 反対されたら どうするつもりだったんだろう。

「先生やること早いじゃん。 僕達がこの曲イヤだって言ったら どうするつもりだったの?」 ヤツがまた言った。 確かに僕もその疑問を持ったが あいつが言うと「ほっとけ」 って思ってしまう。

「お前さっきから しつこいんだよ」 あれ? 別の同級生男子が そう言いだした。 しつこいと思っていたのは 僕だけではなさそうだ。

「しつこいってなんだよ」

「さっきから何かと しつこいんだよ。 今はそんな話より 音楽の話の方が先だろう」 険悪になってきた。

「おいおい、もういいだろう。 話を進めるぞ」 先生が二人の会話に入って 話の続きをし始めた。

僕は先生の話より こっちの二人の方が気になる。

どっちもブスッとしていて 先生の話を聞いていそうにない。

僕は少しの間 この二人の観察をしていた。 お互いに何も話さないでいるから 観察も何もないけど この二人の雰囲気は ずっと悪いままだ。

他の同級生達は どう思っているのだろう。 何をどう聞いていいのか 分からないけど 今はみんな先生の話に 夢中みたいだし 眼は譜面を追っている。 

こんないらないことを 考えているのは僕だけだろうか。 そんなことを思っていると どこからか僕の名前を 呼ぶ声がする。

「いけるか?」 先生だ。 僕を見ている。

うわ、何のことだろう。 とっさに「はい」 と言った。 でもその後に 何の事だか分からないままでは困ると思い

「えっ、何ですか」 と聞いてみた。





最後まで読んで頂きまして有難う御座います。

参加しております。クリックのご協力をお願い致します。

にほんブログ村 小説ブログ 現代小説へにほんブログ村

有難う御座います。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

僕と僕の母様 第73回

2011年04月28日 13時28分39秒 | 小説
『僕と僕の母様』  目次

第 1 回第 2 回第 3 回第 4回第 5 回第 6 回第 7回第 8 回第 9 回第10回
第11回第12回第13回第14回第15回第16回第17回第18回第19回第20回
第21回第22回第23回第24回第25回第26回第27回第28回第29回第30回
第31回第32回第33回第34回第35回第36回第37回第38回第39回第40回
第41回第42回第43回第44回第45回第46回第47回第48回第49回第50回
第51回第52回第53回第54回第55回第56回第57回第58回第59回第60回
第61回第62回第63回第64回第65回第66回第67回第68回第69回第70回

以降は カテゴリ 又は 最近記事より お入り下さるようお願い致します。

************************************************************************



僕と僕の母様 第73回



ある日、部活が始まった時間に 顧問の男の先生と 女の先生がやってきて 今度部活発表のようなものがあるらしく 我がブラスバンド部も 参加するような事を言っている。

その部活発表に 三年生は参加せず、いわば 三年生を送る会のようなものらしい。

送る会にしては 秋という季節は 早すぎるのではないかと思うが どうも色々受験なんかを考えると この時期がギリギリセーフで なおかつ芸術の秋でもあるのであろう 文化系クラブが 発表の対象となるようなのだ。

夏のコンクール予選よりかは 幾分気は楽だし 大会というものでもないから コンクールに出ていない 同級生達五人と一年生も出るようだ。

コンクールの時に 曲決めで少し時間をとってしまったので 今度はみんなで話し合うということは 最初からしないで その場ですぐ先生に相談した。

いい具合に 先生もやりたい曲があるということで 曲決めは速攻その時に決まった。

スマップの「世界に一つだけの花」 だ。 

先生は持ってきていた プリントを僕達に配り始めた。 

元々先生も 僕達に有無を言わさず この曲でやるつもりだったらしく メロディーの譜面を配ったのだ。

早い話、先生がここに来る前に 既に用意していたのだ。 

最初っから僕達に 曲を決めさす気は無かったようだ。 そして

「みんなこの曲は よく知ってると思うが 一応念のために 先生に弾いてもらうから 良く聞いておくように」 そう言って 女の先生の方を見て「お願いします」 と言った。

「じゃあ、みんな先生今から弾くけど 恥ずかしいから あんまり真剣に聞かないでね」 そう言って女の先生が ピアノの前に座った。

「先生、みんなに聞かせる為に お願いしたんだから そんなこと言ってないで 真剣にお願いしますよ」 笑いながら男の先生が言った。

「だって、じっと見られると 緊張するじゃないですか」 男の先生に向かって 恥ずかしそうに言った。 

あなたそれでも音楽の先生? 確かに大学では ピアノではなくて フルートをやっていたらしいけど・・・しっかりしようよ。

「みんな 先生がじっと見られると 緊張するらしいから 先生の方は見ないで 譜面だけを見ているように」 僕達の方を見てそう言って

「それでよろしいですか?」 と今度は 女の先生に問いかけた。 顔は笑いをこらえている。

「はい、それじゃあ頑張ります」 この女の先生は 笑い事ではなくて本気だ。

「それじゃあ、いきます」 そう言って弾き始めた。 うん、さすがに音楽の先生だ 上手い。 ただ弾いているだけじゃない。 僕の持っている譜面は あくまでもメロディー譜で 何の記号もないが 先生の見ている譜面は ピアノ譜だろうから きちんと書かれている 音楽記号も守って弾いているのだろう。 メリハリをつけて弾いている。 

今更になって思っても 仕方ないかも知れないが もし僕もピアノを続けていたら この程度の曲も 初見で弾けたのかなぁ と考えてしまった。

「後悔先に立たず」 母様によく言われる言葉の一つだ。

そんなことを思っている間に 曲が終わった。 みんな大拍手だ。

女の先生はと言うと「恥ずかし」 と言って 椅子に座ったまま 両手で顔を押さえている。

そして男の先生の方を向いて「もういいですか?」 と聞いたと思ったら 先生の「はい」 と言う返事を聞くやいなや 音楽室を飛んで出て行った。

みんな大笑いだ。 取り合えずみんな「いいんじゃない」 なんて言いながら口々に話している。





最後まで読んで頂きまして有難う御座います。

参加しております。クリックのご協力をお願い致します。

にほんブログ村 小説ブログ 現代小説へにほんブログ村

有難う御座います。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

僕と僕の母様 第72回

2011年04月27日 13時33分07秒 | 小説
『僕と僕の母様』  目次

第 1 回第 2 回第 3 回第 4回第 5 回第 6 回第 7回第 8 回第 9 回第10回
第11回第12回第13回第14回第15回第16回第17回第18回第19回第20回
第21回第22回第23回第24回第25回第26回第27回第28回第29回第30回
第31回第32回第33回第34回第35回第36回第37回第38回第39回第40回
第41回第42回第43回第44回第45回第46回第47回第48回第49回第50回
第51回第52回第53回第54回第55回第56回第57回第58回第59回第60回
第61回第62回第63回第64回第65回第66回第67回第68回第69回第70回

以降は カテゴリ 又は 最近記事より お入り下さるようお願い致します。

************************************************************************



僕と僕の母様 第72回



家に帰るとすぐに 母様に 申込書は出したのかと 聞かれて 「出した」 と答えたが 夕飯を食べ始めた時 僕の前に座った母様に

「今日先生に 申込書を渡した時 参考書は持ってるのか って聞かれて 持ってないって言ったのね そしたら もう少ししたら 他のコースクラスが まとめて参考書を買うから その時に一緒に申し込める って言ってたんだけど 申し込んでいい?」 自分で買うより 学校で申し込む方が 何となく安心だ。

「じゃあ、それはそれで 申し込んでおいて それまでの勉強は 教科書でやっとく?」

「教科書って?」 そんな物持っていない。

「教科書って 教科書でしょ。 授業で使ってるでしょ」

「危険物の授業なんて無いよ」 ご飯を口に入れて モゴモゴさせながら答えた。

「えっ? 工業科でしょ、何で危険物の 授業がないのよ」

「工業科でも電子だから そんなの習わないよ。 多分機械とか 自動車のコースが 習うんじゃない?」

「えー、授業がないなんて どうすんのよ。 何も分かるわけ無いじゃない」

「だから 僕には関係ない って言ったじゃない」 今日はお茄子のお味噌汁だ。 僕の好物の一つである。

「今頃言っても遅いわよ」 最初に言ったよ。

「ちゃんと言ったのに」 お味噌汁に免じて許そう。

「その学校からの参考書とかは 何時手元にくるわけ?」 話をすり替えた。

「分かんない。 そこまで聞いてない」 そう返事をすると 早速夕飯の後 本屋に参考書と 問題集を見に行かされた。 

家の近くの本屋を 車でいくつか廻ったけれど どこもまともにはなかった。

「仕方ないわね。 特殊な本だから その辺の本屋さんにはないのね。 週末 電車で大きな本屋さんに行きましょ。 予定はないでしょ?」

予定があっても 無視されるだろうな 殆ど強制である。

そしてその週末 僕と母様は電車に乗って 母様の言う 大きな本屋さんに行った。

始めて来たが 本当に大きい うかつに歩いていると 完全に迷子になってしまう。

広い本屋の中を歩いたが どこに何があるか分からない。 店員さんに聞き やっと危険物のコーナーを見つけた。

家の近くの本屋と違い 沢山ありすぎてどれを見ても 僕自身何の知識もないから 何を買っていいのか 分からない。

「どれを買っていいのか 分からない」 それにみんな値段が高い。

「陵也が読みやすいと 思ったもので いいんじゃない?」 こんなに多くちゃ 何がなんだか 分からない。 悩んだ末

「うん。 じゃあ、参考書がダブるのは もったいないから 参考書は学校の物で それまでは この問題集にしとこうかな」 小さなポケットサイズくらいの物で 値段もそんなに高くない。

「問題集を解く前に 参考書で勉強しなくちゃ 分からないでしょ?」 色んな本を手に取りながら 母様が言った。

「これ見て 問題ばっかりじゃなくて 色々参考書みたいにも 書いてあるでしょ」 その小さなポケットサイズの本を パラパラとめくり 母様に見せた。

「あら、本当ね。 じゃあそれにしておく? でもあんまりにも 小さくない? もう一つ買えば?」

「いいよ これだけで。 学校の参考書があるんだから」

「う・・・ん、これもおまけに買おう」 どれでもいいから という感じで 手に取った本を見せた。

「なんでよ これでいいって」 その本は分厚すぎる。 いくらすると思ってんだ。

「何か小さすぎると 不安じゃない」 こんな時に大きさで勝負して どうするんだよ。

「これ一つで充分。 ほらレジに行こう」 そう言って母様を 引っ張って行った。

その日帰って 早速問題集を見てみたが やっぱり危険物は危険だ。





最後まで読んで頂きまして有難う御座います。

参加しております。クリックのご協力をお願い致します。

にほんブログ村 小説ブログ 現代小説へにほんブログ村

有難う御座います。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

僕と僕の母様 第71回

2011年04月26日 14時06分26秒 | 小説
『僕と僕の母様』  目次

第 1 回第 2 回第 3 回第 4回第 5 回第 6 回第 7回第 8 回第 9 回第10回
第11回第12回第13回第14回第15回第16回第17回第18回第19回第20回
第21回第22回第23回第24回第25回第26回第27回第28回第29回第30回
第31回第32回第33回第34回第35回第36回第37回第38回第39回第40回
第41回第42回第43回第44回第45回第46回第47回第48回第49回第50回
第51回第52回第53回第54回第55回第56回第57回第58回第59回第60回
第61回第62回第63回第64回第65回第66回第67回第68回第69回第70回

以降は カテゴリ 又は 最近記事より お入り下さるようお願い致します。

************************************************************************



僕と僕の母様 第71回



ある朝、僕と順平が駅を降り 学校に向かって 登校していると 例のバタフリーが 「先輩お早うございます」 と声をかけながら 走って学校に向かって行った。

あっけにとられた 僕と順平は微動だに出来ず その後姿を追っていた。

暫らくして我を取り戻し そして同時に お互い顔を見合わせ

「今誰に言ったの?」 順平が聞いてきた。

「え・・・」 一瞬考えた。 そして出した答えが

「順平には 何か聞こえたんだ。 僕には 何も聞こえなかったし 何も見えなかった。」 何も無かったことにしたい。

僕の言いたいことが 通じたようで

「・・・あ、そうだよね、そうだよね 何も無かったよね」 苦笑いをして そう返事をしてきたが

その日をきっかけに バタフリーと 廊下ですれ違うと「今日は」 等と声をかけるようになってきた。

勿論僕達は 知らない振りを していたのだが 一人で居る時は ついうっかり 「ああ」 と返事をしてしまうこともあった。

そして それが頻繁になってきたのだ。

「ちょっと怖くない?」 順平が言い出した。 認めざるを得ない。

「やっぱり?」 僕も怖さを感じていたので 順平がどう出るのか 様子を伺っていたのだ。

「どっちかが あの子の餌食になるの?」 餌食とは・・・と思うが あの積極性には怖さを感じる。

「どっち?」 聞いてみた。 順平に心当たりがあるのなら 何か言うだろう。

「分かんない」 心当たりはなさそうだ。

「どっちにしても 学校にいる間は離れないでいよう」 順平の提案だ。

「賛成」 一人は怖い。
 


ある日家に帰って 何気なく今まで学校で貰っていた プリントをまとめて リビングの机の上に置いて 点けっぱなしにされていた テレビを見ていた。

洗濯物を畳み終わった母様が 二階から降りてきた。 洗面所にタオルをしまってから リビングに入ってきた。

「お帰り」 「ただいま」 

ちょうど帰ってきて 自転車を止めた時に上を見上げると 母様がベランダで洗濯物を 入れていたので その時にも 「ただいま」 「お帰り」の会話があったのだが もう一度ここでも その会話がリピートされた。

僕を見てすぐに 母様がテーブルのプリントに 目を移した。

「何 このプリント」 

「今まで貰ってたプリント。 もう関係ないから 捨てるだけ」

プリント全部を手にし ソファーに座りながら パラパラとプリントを見だした。 するとその内の一枚を見て

「何? 危険物の試験があるの?」 

「ああ、そうみたい。 危険物以外にも 色々と今まで何度かあったよ」

「えっ、そんな話 今までに一度も聞いてないわよ」

「だって僕には 関係ないもの」

「関係ないって どういう事よ、受けるんでしょ?」

「何で?」

「工業科に行ってて 危険物を受けるのは 当たり前でしょう。 何のための工業科なのよ」

「何言ってるの 知らないの? 危険物って 危険だから危険物って言うんだよ。 そんなもの受けたら 危険じゃないか」 笑って言ったけれども 半分は真剣だ。

「バカじゃない。 ・・・ちょっと、もういくらも 日が無いじゃない。 何で今頃出すのよ」

「だから危険だって・・・」

「いつまで言ってんのよ。 明日申し込んどくのよ。 ちゃんと先生に 提出しなさいよ。」 そう言って 申込書に記入をしだした。

母様が降りてくる前に 捨てておけばよかった。



次の日、順平について来て貰って 職員室に行った。 順平は外で待ってると言ったので 僕一人で入って行き 仕方なく先生に 申込書を出した。

「おお、お前も受けるのか? 何を受けるんだ?」 申込書に漏れがないか見ながら 聞いてきた。

「危険物です」 申込書を見て分かるだろう。

「だから何を受けるんだ って聞いてるんだよ」 教師として やる気があるのか? 何を言いたいんだ。

「何って、何ですか?」 意味が分からない。
 
「何類を受けるんだ って聞いてるんだよ」 初めっからそう言えば いいじゃないか。

「何の意味か分かりません」 何類って 何だよ。

「お前受けるんだろう 俺はお前が分からん。 それじゃあみんなと一緒でいいか?」

「はい」 分からないままに 返事をしておいた。

だけど この時に先生に言われて 気付いたのだが 僕は問題集や参考書を 持っていない。

その日帰って この事を母様に言った。




最後まで読んで頂きまして有難う御座います。

参加しております。クリックのご協力をお願い致します。

にほんブログ村 小説ブログ 現代小説へにほんブログ村

有難う御座います。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

僕と僕の母様 第70回

2011年04月25日 13時44分03秒 | 小説
『僕と僕の母様』  目次

第 1 回第 2 回第 3 回第 4回第 5 回第 6 回第 7回第 8 回第 9 回第10回
第11回第12回第13回第14回第15回第16回第17回第18回第19回第20回
第21回第22回第23回第24回第25回第26回第27回第28回第29回第30回
第31回第32回第33回第34回第35回第36回第37回第38回第39回第40回
第41回第42回第43回第44回第45回第46回第47回第48回第49回第50回
第51回第52回第53回第54回第55回第56回第57回第58回第59回第60回
第61回第62回第63回第64回第65回第66回第67回第68回第69回


************************************


僕と僕の母様 第70回



大体の連中が 自分の母親のことを「お母さん」 とは呼ばない イヤ、大体どころか そう言うのは僕位のものだ。

他の連中は 良くても「母ちゃん」 「お袋」 で他の奴達は大体「ババア」 酷い奴なんかは ババアに「クソ」 を付けたり「お前」 とか「おばさん」、「オイ」 と言うだけの奴もいる。 

だから 僕がクラスの奴らと話すときに「お母さんが・・・」 等というとすごく目立つのだ。

さすがに最初は 僕もちょっと考えた。 どうしよう 家ではお母さんと 言っているけど みんなの前では 言いにくいなと思い 一番無難な「母親」 と言おうと考えて 何度かそう言ってみたが 何か言いにくい。 慣れがないのかな。

そういう事があったから もういいやと思って「お母さん」 で貫いたのだが クラスの連中が 僕の母様の話をするときに

「なあ、陵也 今度の金曜 みんなで俺ン家 泊まりにこない?」

「えー、どうしよう」

「いいじゃん、いいじゃん、お母さんにお願いして 許可もらって来いよ」 とか

パソコンの授業で 楽譜が必要になった時があって 先生が

「楽譜を持ってない者は 家で音楽サイトに入って ダウンロードをしてくるように」 と言ってそれから

「家に何冊か楽譜を持っている者は 忘れた者用に 余分に持ってきてくれ」 と付け足した。

僕の家には クラシックとポップスの楽譜が わりと沢山あるので まあ、持ってない振りをしててもいいんだけど 誰か忘れてくる奴がいるだろうと思い ポップスの楽譜集や クラシックのピースを その日何冊か持って行った。

そしてパソコンの授業になった時に やっぱり忘れてきたヤツが何人かいた。 先生が

「誰か余分持ってないか?」 と聞いてきたので僕が

「ちょっとだけなら持ってきた」 と楽譜を鞄から出して 先生に見せた。 その時に

「えー! 陵也何でこんなに持ってんの」 そう言って授業中にも関わらず 何人かが僕の机に寄ってきた。

「うん、お母さんが 気に入った曲が入った譜面を見つけると すぐに買ってくるんだ」 そう言うと

「へー 陵也のお母さんってすごいんだー」 なんて言ったりして 冷やかして言っているというわけではなく クラスの連中も この何年言っていないであろう 『お母さん』 という代名詞 イヤ、言葉を使うのだ。

本当は心のどこかで 懐かしく思えたり もう一度言ってみたいと思える 大切な言葉の一つ なんじゃないのかな。

そして あのドラマを批判しながらも 最後まで見たという事は 自分自身の心のどこかにある 色んな事を ドラマが叶えてくれた っていうところが あったんじゃないかな。

ま、中には「ママ」 って言いたいヤツも いるかもしれないけど。

どちらにしても 親に素直になれないのが 僕達憎たらしい盛りの 高校生なのだ・・・。






最後まで読んで頂きまして有難う御座います。

参加しております。クリックのご協力をお願い致します。

にほんブログ村 小説ブログ 現代小説へにほんブログ村

有難う御座います。





  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

僕と僕の母様 第69回

2011年04月24日 03時55分07秒 | 小説





                       日の元 大和の民が 一つの大きな和になりますように










僕と僕の母様 第69回



母様は長目がお好きだから あまりしょっちゅう 髪を切るわけではない。

だから 学校でも風紀の先生に 髪の毛を切るように指導されたり クラスの連中や、部活のメンバーにも「髪の毛切れば」 とよく言われる。

最初は濁して 返事をしていたのだけれど そのうち「ま、いいか」 と思うようになり

「お母さんが切ってくれてるから 手の空いた時にしか 切ってもらえないんだ」 と言うようになった。

部活のメンバーは「ふーん、お母さん忙しいんだ」 で終わっていたが クラスの連中には

「それって マザコンじゃん」 等と言われた。

「えー そうかなあ そうじゃないよ」 と言ってみたものの 確かに他の人が聞けば マザコンに思えるかもしれない。 

だけどそうじゃない 母様曰く 節約なんだ。
 
それから事あるごとに「それもマザコン」 と言われた。 例えば

「昨日の夜9時頃何してた?」 なんてみんなで話していて 僕も聞かれると

「えーっと・・・あ、お母さんの肩もんでた」 等と言う。 すると

「それマザコン」 とか

「ああ、お母さんが 忙しそうだったから 洗濯物を入れてたな お手伝い、お手伝い」 そう言って手で洗濯物を 畳む仕草をして見せると

「イエローカード、それもマザコン」 という具合である。

ちょうど そんな話をし始めた頃から テレビでマザコンのドラマが始まっていて その話題でみんな盛り上がっていた時だ。

「昨日、見た?」 誰かと誰かが話し始めた。

「見た見た 気持ち悪い」

「俺も見た。 あまりの気持ち悪さに 来週から見ない」 だんだんそのドラマの 批判会の人数が増えていく。 

僕自身もそのドラマを 母様が見ているので 何となくいつも見ていたけど 確かに「それはちょっと」 と思える所もあったけど 別にクラスの連中が言うほど 最初から最後まで 何もかもがマザコンとは思えない。

でも何だかんだ言って みんな最終回まで見ていたようだ。

そんな話をしていて面白い事に 変な現象に気付いた。






最後まで読んで頂きまして有難う御座います。

参加しております。クリックのご協力をお願い致します。

にほんブログ村 小説ブログ 現代小説へにほんブログ村

有難う御座います。




  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

僕と僕の母様 第68回

2011年04月22日 13時30分08秒 | 小説





                       日の元 大和の民が 一つの大きな和になりますように










僕と僕の母様 第68回



僕が散髪屋に行ったのは 記憶のある限り 生まれてから今日まで 片手で足りるだろう。

七五三の時の五才の時、小学校の入学式、卒業式、高校受験の面接試験の時と これ位だったと思う。

ずっと伸ばしっぱなし というわけではない。 実は母様が切っているのだ。

母様曰く

「こうやって お母さんが子供の髪の毛を切る。 これが大切な 親子のスキンシップの一つの方法よ。 まあ、節約にもなるしね。」 と言ってワザと  

「おーっほっほ」 とまるでドラえもんに出てくる スネ夫君のお母さんのように 高笑いをする。

その高笑いの意味は 前者が本来の意味ではなく 後者が本当の意味であるということを 指しているのだ。

母様は美容師の経験が あるわけでもなし 手先が起用というわけでもない。 どちらかというと 不器用の部類だ。

「陵也、大分髪の毛伸びてきたね 切ろうか」 という言葉から始まる 母様の一つの お楽しみ会のようなものだ。

僕はパンツ一つになって リビングの隅に 広げられた新聞の上に座る。 そして そのままじっとしていて 母様が切るのだ。

その切っている最中に 必ずあるのが「あ」 という母様の口から ついうっかり出てしまう声。

「どうしたの?」 と聞くと 大体「何でもない」 と答える。

その状況には もう慣れているから

「また?」 と聞いてみる。

「何でもない」 まだ言う。 シラを切っても 分かるって言うの。

「どうでもいいけど 最低電車に乗って 学校に行ける状態にはしてね」

「大丈夫、こっちも切れば ちゃんとなる」 真剣である。

「右切って、あ 左切って、あ またまた右切って、あ・・・無くならせないでねー」 慣れている僕は 半分笑って言う。

「うるさいわねぇ こうやってここを切って、・・・あ・・・」

「おハゲはイヤよー」 わざと大げさに おどけたように言う。

そうすると 返ってくる言葉は 毎回違うのだが

「何言ってるの 学校に行くんだから たまにはお友達に 笑いも提供しなくちゃ駄目でしょ」 とか

「髪の毛なんて 伸びてくるものなんだから」 とかって言いながら ニコニコしている。

「大丈夫 二週間くらいのガマン」 などと母様の言い訳は 色々であるが 腕も上がらなければ 全然反省もしていない。

何日間かは 僕の頭の方を見て 笑っている。

僕を犠牲にして 自分のお楽しみ会を 開けられる この無神経さは どこから来るのであろうか。 とんでもない 宇宙の果てから なんだろうなぁ。 

自問自答してみても 何をどう考えても 仕方の無いことだから 僕ももう諦めている。

だって この母様なんだから。

取り合えず 丸坊主でなければいいか。




最後まで読んで頂きまして有難う御座います。

参加しております。クリックのご協力をお願い致します。

にほんブログ村 小説ブログ 現代小説へにほんブログ村

有難う御座います。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

僕と僕の母様 第67回

2011年04月21日 14時42分04秒 | 小説





                       日の元 大和の民が 一つの大きな和になりますように










僕と僕の母様 第67回



高校の文化祭は 学年ごとにテーマが決まっていて そのテーマにのって 自分たちが体を使って 体育館のステージの上で 表現しなければいけない。

例えば ダンスというテーマであったら 何でもいい ヒップホップでも民族舞踊でも その踊りをずっと踊っててもいいし 一つのストーリーを作って まるでミュージカルのように 仕上げてもいいのだ。

しかしあくまでも ステージの上に上がるのは クラス全員と限られたことでは無い。

大道具小道具係り、カーテンの上げ下げや音響であったり、照明であったり色々と担当がある。

勿論僕は一度もステージには 上がっていない。 毎回、俗に言うスタッフだ。

僕は一年目、二年目とライトの係りをして 三年目は音響係りをした。 と言っても 大したものではない 音響はカセットテープを タイミングに合わせて 鳴らすだけだ。

その上、三年間とも直接道具には 触っていない。 二人組みでするものだから いつももう一人にやってもらっていて 良く言えば僕はそいつの見張り番、兼、話し相手。

その相手はいつも順平だった。 ヤツは喋りだすと そっちに夢中になってしまうので タイミングを逃してしまいそうになるのだ。

そんな時に 僕が頭を一つポカンと叩いて「ライトの色変更」、「次カセットBに入れ替える」 とか笑いながら言って 何もしないでいる。

順平も何もしないでいる僕を責める事も無く ずっと喋りながら作業をしている。

こんなところは本当に 可愛いヤツだ。

他のクラスや色んな学年の パフォーマンスも見ていると ムチャクチャしてたり面白かったりと 楽しめる事があったのは確かだ。

かったるく思っていた 中学のときよりかは 少しはマシだったかもしれない。

でもステージに上がって バカ騒ぎをしたり、まじめに劇に取り組むというような事は 出来なかった。

こういう所も 母様の言う皆と盛り上がれない というところなのだろうか。   



学校行事も一段落した頃 放課後僕が部室の前の廊下を歩いていると ブラバン同級生と バタフリーが話しをしていた。

やっぱりバタフリーは コイツを狙っていたのか。

何を話しているのかは聞こえないが バタフリーが携帯を 鞄から取り出したのが見えた。

どうもアドレスを 聞いているようだ。

ブラバン同級生は いらない っていうような手振りをしている。

きっとアドレスを教えない とでも言っているのであろう。

僕はそのまま部室に入って行ったので その先どうなったかは分からないが あの様子だと きっと振られたんだろう。

カワイソウに アタックしても、しても 撃沈のようだ。

その時丁度 順平からメールが入ってきた。 

その返事をするついでに 可哀相と思いながらも 僕はすかさず今の様子を メールで送った。

きっと携帯の向こうで 順平は大笑いするだろうな。




最後まで読んで頂きまして有難う御座います。

参加しております。クリックのご協力をお願い致します。

にほんブログ村 小説ブログ 現代小説へにほんブログ村

有難う御座います。



  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

僕と僕の母様 第66回

2011年04月20日 19時45分05秒 | 小説





                       日の元 大和の民が 一つの大きな和になりますように










僕と僕の母様 第66回



「誰かって誰だろう?」 思い当たらない。 僕は今食べ終わったばかりの お弁当を片付けながら 順平に聞いてみた。

順平の今日のお昼は コンビに弁当だ。 お箸でお弁当をつつくように トントンと音を鳴らせながら

「見てて分かんないの?」 順平が呆れたように聞いてきた。 

「うーん・・・そう言えば・・・今年入ってきた奴に 何回も挨拶してたかなあ」 腕を組んで 僕がそう答えると

「じゃあ、そいつが狙われてんじゃない?」 冷ややかに 返してきた。

「そう言われれば そうかも知れない。 でもほんの何ヶ月か前に うちのクラスの奴に 振られたばっかりだろう、そんなに早く 次の誰かに行くのかなぁ・・・」 そんなこと有り得るのかなぁ ぼくには有り得ないんだけど。 

「時間なんて関係ないよ。 って言うより もし本当に ブラバンの誰かを 狙っているとしたら 次から次へと蝶々みたいだなぁ」 さっきの冷ややかさを少し残して 最後のおかずを口に入てそう言った。

「蝶々?」 何の事だ?

「蝶々の歌って <花から花へ~>なんて歌詞無かったっけ?」

「蝶々の歌?」 思い出せない。

「<花から花へ> って所が <男から男へ> って感じでさ」 完全に面白がってる。

「あの子が蝶々?」 蝶々に例えるって事は 順平はこの子の事を いい感じに思っているんだろうか?

「そうは言ってないよ あくまでも 歌詞の上でって事」 呆れ顔で言われた。

「あの子の事気に入ったの? 今度からあの子の 報告をする時には 蝶々チャンと言おうか?」

「今、気に入ったって言った? 蹴り入れて欲しいの? 誰が気に入ったなんて 言ったんだよ」 割と本気に怒っている。

「分かった分かった、怒るなよ。 気に入ったって言う所は 前言撤回するよ でも報告はするよ。 呼び名はそうだなぁ・・・ああそうだ、バタフリーなんてどう?」 ポケモンのモンスターで 蝶々のモンスターがいるのだが その名前がバタフリーなのだ。 

ポケモン世代の僕達は すぐに通じた。

「えらく懐かしいことを言うな」 何せ幼稚園くらいの時の話だ。

「そうしよう、それにしよう。 あの子は今日から バタフリーチャンだ」 僕が喜んでそう言うと 順平が冷ややかに 

「チャンはいらない」 そう言った。 本当に好みではないようだ。

それからはあの子の事を バタフリーと呼び 何か変化があると 順平に話し二人の話題ネタにしていた。






最後まで読んで頂きまして有難う御座います。

本日はアップの時間が遅くなって申し訳ありませんでした。



参加しております。クリックのご協力をお願い致します。

にほんブログ村 小説ブログ 現代小説へにほんブログ村

有難う御座います。



  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする