『みち』 目次
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『みち』 ~道~ 第180回
(誰?!) 身体を動かそうとすると動かない。 金縛りだ。
(くっ! 動かない・・・) 恐怖が襲って来そうになったとき
(そうだわ! 気をしっかりと持つのよ。 毅然とした態度よ!・・・えっと・・・何て言うんだったっけ・・・思い出せない・・・) その気配はずっと琴音の横に立ったままだ。
琴音が毅然としているからであろう。
それ以上の動きもなければ琴音自身にも襲ってこられるという恐怖感も無い。 そしてその時に思い出した。
(そうよ、前の金縛りの時絶対足を動かしたわよ。 ひざ掛けがズレ落ちていなかったのは肉体の足が動いていなかったからよ。 肉体の足や手じゃないもう一つの手を動かせるはずよ) 琴音は正道から聞いた念で自分の手を作ろうとしたのだ。
琴音が考えている間に隙を見たかのように気配が琴音の真横に近寄ってきた。
(来ないで! あっちへ行って!) 咄嗟に出た言葉、『来るな、立ち去れ』 程の言い切った言葉ではないが気配が一瞬止まった。
(手・・・そうよ私の思いで手を作るわ) 琴音は自分の肉体の腕を感じその腕を動かす想像をした。
(手には刀よ) その腕に刀を持たせた。
(あ、ダメ。 刀なんて持ったらこの気配さんが怪我をしちゃうわ) いや・・・それはどうだろう・・・。
(短い・・・木刀の短刀版よ) 隙を見つけた気配が今にも琴音に覆いかぶさろうとしてきた。
(来ないでよ!) まるで手刀のような短い木刀を自分の手に持たせ、その木刀の手刀で覆いかぶさろうとしていた気配を押すと、ボワンと撥ね返す感触があった。
(なに? この感触) 一度木刀の手刀を引いたが
(あ、引いちゃ駄目) もう一度木刀の手刀で押した。
また同じように撥ね返すような感触があったが、それでもずっと押し続けると気配が段々と琴音に押され琴音の頭側へずれていった。
(これ以上は押せない、もう手が届かなくなっちゃう) そう思ったときフッと撥ね返す感触が消えそれと共に気配が消えた。
そしてそれと同時に琴音の肉体の身体が動いた。
「何処かへ行った・・・?」 いつもある金縛りの身体の重さがない。 恐怖も無ければ疲れも無い。
「いったい誰よ・・・来ないでよ」 身体を起こしテーブルにうつ伏せると
「あ・・・身体が疲れてないわ」 気付いたかい?
「重くも無い」 そうだろ。
「毅然としたことが良かったのかしら・・・」 そうだよ。 恐怖一色になると相手の思う壺となって身体を乗っ取られるかもしれないよ。
2週間が経ち 正道の元へ車を走らせた。
今回は実家に寄らず直接工事現場へ向かう。 道路から現場を見ると
「あら? 2週間も経つとこんなに進むのね」 前回来た時よりかなり工事が進んでいた。
車をプレハブハウスの横に止めた。 約束の時間より随分早目に着いた為、正道はまだ来ていないようだ。
琴音が早目に来たのは仔犬と触れ合おうと思っていたからなのだが いざ、その時となると勝手にプレハブへ入って良いものかと戸惑った。
だからと言って車のエンジンを切って外に出て正道を待っているのも暑い。
「どうしよう・・・勝手に入っていいかしら・・・やっぱり実家で時間を潰そうかしら」 戸惑っているとコンコンと窓を叩く音がした。 琴音が窓を見るとそこには工事の人間らしき人物の顔があった。
すぐに窓を開けると
「この前来てた人ですよね?」 琴音のことを覚えていたようだ。
「はい」
「暑いですからプレハブの中で待っているといいですよ」
「はい、有難うございます」 助け舟であった。
「工事の方が言って下さったんだもの遠慮なく入っていいわよね」 すぐにエンジンを切りプレハブのドアを開けた。
ドアを開けると相変わらず可愛い目で琴音を見る仔犬がいた。
「仔犬ちゃん久しぶり。 少し見ない間に大きくなった?」 すぐにケージから仔犬を抱き上げた。
「あら? 重くなったんじゃない?」 仔犬は嬉しそうに琴音の手をペロペロと舐め始めた。
「くすぐったいわ」 それもまた嬉しい。
まるで赤子でもあやすかのように仔犬を抱いたまま部屋の中を歩いていると、ポンと何かが靴に当たった。 琴音が足元を見ると可愛らしいクマの形をしたおもちゃがあった。
「あら? これって仔犬ちゃんのおもちゃなの?」 仔犬を足元に下ろしておもちゃを見せると嬉しそうに飛びついてきた。
「うふふ、仔犬ちゃんのなのね」 おもちゃを仔犬の前に置くと仔犬は琴音を見ているだけでおもちゃで遊ぼうとしない。
「遊ばないの?」 琴音がおもちゃを持つとまたおもちゃに飛びついてくる。
「あ、そっか。 一緒に遊びたいのね」 琴音がおもちゃを持って左右に振ると嬉しそうにおもちゃに飛びつこうとしている。
「こんな遊びが嬉しいのね。 まるで猫ちゃんみたいね」 そう行った時「アン!」 と仔犬が琴音のほうをみて言った。
「あ、ゴメン、ゴメン。 ゴメンね。 立派なワンちゃんよ」 するとまるでその琴音の言葉に納得したかのようにまたおもちゃに飛びつき始めた。
「仔犬ちゃんは私の言葉を分かってくれているの? 私も早く仔犬ちゃんの考えていることが分かるようになりたいわ」 暫くそうして遊んでいるとドアがガラガラと開いた。
琴音がドアの方を見ると正道が入ってきた。
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(誰?!) 身体を動かそうとすると動かない。 金縛りだ。
(くっ! 動かない・・・) 恐怖が襲って来そうになったとき
(そうだわ! 気をしっかりと持つのよ。 毅然とした態度よ!・・・えっと・・・何て言うんだったっけ・・・思い出せない・・・) その気配はずっと琴音の横に立ったままだ。
琴音が毅然としているからであろう。
それ以上の動きもなければ琴音自身にも襲ってこられるという恐怖感も無い。 そしてその時に思い出した。
(そうよ、前の金縛りの時絶対足を動かしたわよ。 ひざ掛けがズレ落ちていなかったのは肉体の足が動いていなかったからよ。 肉体の足や手じゃないもう一つの手を動かせるはずよ) 琴音は正道から聞いた念で自分の手を作ろうとしたのだ。
琴音が考えている間に隙を見たかのように気配が琴音の真横に近寄ってきた。
(来ないで! あっちへ行って!) 咄嗟に出た言葉、『来るな、立ち去れ』 程の言い切った言葉ではないが気配が一瞬止まった。
(手・・・そうよ私の思いで手を作るわ) 琴音は自分の肉体の腕を感じその腕を動かす想像をした。
(手には刀よ) その腕に刀を持たせた。
(あ、ダメ。 刀なんて持ったらこの気配さんが怪我をしちゃうわ) いや・・・それはどうだろう・・・。
(短い・・・木刀の短刀版よ) 隙を見つけた気配が今にも琴音に覆いかぶさろうとしてきた。
(来ないでよ!) まるで手刀のような短い木刀を自分の手に持たせ、その木刀の手刀で覆いかぶさろうとしていた気配を押すと、ボワンと撥ね返す感触があった。
(なに? この感触) 一度木刀の手刀を引いたが
(あ、引いちゃ駄目) もう一度木刀の手刀で押した。
また同じように撥ね返すような感触があったが、それでもずっと押し続けると気配が段々と琴音に押され琴音の頭側へずれていった。
(これ以上は押せない、もう手が届かなくなっちゃう) そう思ったときフッと撥ね返す感触が消えそれと共に気配が消えた。
そしてそれと同時に琴音の肉体の身体が動いた。
「何処かへ行った・・・?」 いつもある金縛りの身体の重さがない。 恐怖も無ければ疲れも無い。
「いったい誰よ・・・来ないでよ」 身体を起こしテーブルにうつ伏せると
「あ・・・身体が疲れてないわ」 気付いたかい?
「重くも無い」 そうだろ。
「毅然としたことが良かったのかしら・・・」 そうだよ。 恐怖一色になると相手の思う壺となって身体を乗っ取られるかもしれないよ。
2週間が経ち 正道の元へ車を走らせた。
今回は実家に寄らず直接工事現場へ向かう。 道路から現場を見ると
「あら? 2週間も経つとこんなに進むのね」 前回来た時よりかなり工事が進んでいた。
車をプレハブハウスの横に止めた。 約束の時間より随分早目に着いた為、正道はまだ来ていないようだ。
琴音が早目に来たのは仔犬と触れ合おうと思っていたからなのだが いざ、その時となると勝手にプレハブへ入って良いものかと戸惑った。
だからと言って車のエンジンを切って外に出て正道を待っているのも暑い。
「どうしよう・・・勝手に入っていいかしら・・・やっぱり実家で時間を潰そうかしら」 戸惑っているとコンコンと窓を叩く音がした。 琴音が窓を見るとそこには工事の人間らしき人物の顔があった。
すぐに窓を開けると
「この前来てた人ですよね?」 琴音のことを覚えていたようだ。
「はい」
「暑いですからプレハブの中で待っているといいですよ」
「はい、有難うございます」 助け舟であった。
「工事の方が言って下さったんだもの遠慮なく入っていいわよね」 すぐにエンジンを切りプレハブのドアを開けた。
ドアを開けると相変わらず可愛い目で琴音を見る仔犬がいた。
「仔犬ちゃん久しぶり。 少し見ない間に大きくなった?」 すぐにケージから仔犬を抱き上げた。
「あら? 重くなったんじゃない?」 仔犬は嬉しそうに琴音の手をペロペロと舐め始めた。
「くすぐったいわ」 それもまた嬉しい。
まるで赤子でもあやすかのように仔犬を抱いたまま部屋の中を歩いていると、ポンと何かが靴に当たった。 琴音が足元を見ると可愛らしいクマの形をしたおもちゃがあった。
「あら? これって仔犬ちゃんのおもちゃなの?」 仔犬を足元に下ろしておもちゃを見せると嬉しそうに飛びついてきた。
「うふふ、仔犬ちゃんのなのね」 おもちゃを仔犬の前に置くと仔犬は琴音を見ているだけでおもちゃで遊ぼうとしない。
「遊ばないの?」 琴音がおもちゃを持つとまたおもちゃに飛びついてくる。
「あ、そっか。 一緒に遊びたいのね」 琴音がおもちゃを持って左右に振ると嬉しそうにおもちゃに飛びつこうとしている。
「こんな遊びが嬉しいのね。 まるで猫ちゃんみたいね」 そう行った時「アン!」 と仔犬が琴音のほうをみて言った。
「あ、ゴメン、ゴメン。 ゴメンね。 立派なワンちゃんよ」 するとまるでその琴音の言葉に納得したかのようにまたおもちゃに飛びつき始めた。
「仔犬ちゃんは私の言葉を分かってくれているの? 私も早く仔犬ちゃんの考えていることが分かるようになりたいわ」 暫くそうして遊んでいるとドアがガラガラと開いた。
琴音がドアの方を見ると正道が入ってきた。