大福 りす の 隠れ家

小説を書いたり 気になったことなど を書いています。
お暇な時にお寄りください。

彼女達 第4回

2011年11月27日 15時35分20秒 | 小説
第1作 『僕と僕の母様』 全155回 目次ページ


                                             





彼女達 第4回



部室の前まで来ると テニス部の後輩たちが これから始まる練習に出ようとしていて 「今日は」 と声を掛けながら グラウンドへ走って行った。

「入って」 靴を脱ぎながら 志乃に向かって真紗絵がそう言った時に これから2階の部室に上がろうかとする 秋美がいた。 志乃と目があったが 特に話をすることはなかった。

初めて他の部室に入った志乃は 物珍しげに辺りを眺めていた。

「何キョロキョロしてんの?」

「うん、うちの部室と全然違うなって」

「だって 出来たばかりだもん。 綺麗でしょ」

「うん」

「前のところは酷かったんだよ、日も当たらないし最悪だったわよ」

「うちも日は当たらないよ」

「何言っても志乃の所とは 何もかもが違うよ」

「なんで? 断然こっちのほうがいいよ」

「歴史が何もかもを 違うようにさせてるのよ。 古くても志乃の所は他と違うの はい、ここに座って」 そう言って 真紗絵は志乃を座らせるために 座布団を敷いた。

まだ立った状態から 簡単に座る事の出来ない志乃であった。 何とか座ろうとしている状態を見た真紗絵が

「あ、ごめん」 そう言って 手を差し出した。

「ごめんね、支えがないと座れなくて・・・ありがとう」 真紗絵の手を借りて やっと座ることが出来た志乃であった。

「こっちこそゴメン。 全然気が付かなくて 大丈夫?」

「うん。 座ってしまえば なんともないよ」

「相当痛いんだ」

「そんなことないよ。 ただ、変わっちゃった自分の身体が まだ分かってないだけ。 それに時間が過ぎれば 以前と同じようになると思うよ」

「そうなの? ほんとに大丈夫なの?」 志乃のこの身体は 手術が必要なのだ。 医者からそう言われている。

だがそのことを誰にも言っていない。 ずっと自分ひとりでやってきた、自分のことは自分で決めてきた そういう精神があった。 だから勿論、両親にも言っていない。

「大丈夫だよ。 それより 何か楽しい話はないの?」

「あるわよ あるわよ 聞きたい?」

「聞きたいー!」 やはりクラブ員同士だ そんなに話したことはなくても 何かと共通の話題を持っている。 話は尽きることなく続いた。

ふと気がつくと もう練習を終わらせて 隣の部室には ソフトボール部が 帰ってきている声がした。

「うわ、もういい時間になってる」 真紗絵が腕時計を見た。

「あ、本当だ。 時間があっという間に 終わっちゃった」 すると真紗絵が ソフトボール部側の壁を ドンドンと叩いて

「ねぇ! うちのクラブもう終わってた?」 大きな声を出して聞いている。 すると向こうからも大きな声で

「あ、真紗絵先輩ですか? はい、コートを片付けてました」 ソフトボール部の後輩であろう声がした。

「もう少ししたら みんな帰ってくるみたいだし ガサガサするからもう出ようか」

「うん」 そして二人で駅に向かったのだが 真紗絵は地元の人間だ。 駅の向こう側に家がある。 電車に乗るのは志乃だけだ。

駅に着き二人は分かれて帰った。

こんなことを毎日繰り返していた二人だったが その間にも 何度か秋美と顔を合わせることがあった。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

彼女達 第3回

2011年11月24日 00時56分52秒 | 小説
第1作 『僕と僕の母様』 全155回 目次ページ


                                             





彼女達 第3回



3人は2年3年と同じクラスであったが 特に仲が良かったわけではなかった。

ただ、真紗絵と志乃は スポーツ部員同士ということで 時々話してはいたが そのくらいのものだった。


3年の夏休みが終わり 2学期が始まったが 志乃はクラブに通わなくなり 放課後、時間を持て余すようになった頃 夏休み明けに クラブを引退している真紗絵が 教室に残っていた 志乃を見つけた。 真紗絵が

「何してるの? 部活に行かないの?」

「うん・・・。 本当なら 後輩の指導に あたればいいんだけど」

「何?」

「行くのが嫌なの・・・」

「そっか、無理しなくて いいんじゃない? 顧問の先生に 何か言われた?」

「何にも。 普通なら 後輩の指導に来い って言われるんだろうけど 何にも言われないから・・・」

「じゃ、気にしなくても いいんじゃない? それより腰どう? 大丈夫なの?」

「うん。 歩くには無理しない限り大丈夫。 まだ走ったり 身体を捻ったりは出来ないけど あ、重い物もまだ持てないな」

「そっか じゃ、カバン持ってあげる。 テニス部の部室に来ない?」

「え?」

「教室でもいいけど 部室のほうが落ち着かない?」

「テニス部員でもないのに 入っていいの?」

「そんなの気にしない。 気にしてるのって 志乃のクラブだけだよ。 ま、志乃のクラブは歴史があって 我が校の勲章だから 敷居が高くて 誰も入れないけどね」

「うん、部員以外 誰も入ってきたことないよ。 え? 他のクラブって みんな他の部室に 自由に出入りしてるの?」

「そうだよ。 だから気にしなくていいの。 隣のソフト部なんかとは 壁一枚だから 壁越しに会話もしたりしてるよ。 声が筒抜けなの」

「そうなんだ」

「志乃の所は 部室孤立してるもんね」

「うん」

「今日、何の用もないんでしょ?」

「うん、無い。 それに早く帰っても 何していいか分からないし 明るいうちに 帰るっていうのにも慣れなくて」

「ずっと練習だったもんね。 行こう 行って話ししよう。 カバン持ってあげるね」

そうしてテニス部の部室へ向かった二人だったが 2階建てのプレハブ部室棟には バトン部の部室も勿論あった。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

彼女達 第2回

2011年11月19日 04時39分14秒 | 小説
font color="green">第1作 『僕と僕の母様』 全155回 目次ページ


                                             





彼女達 第2回



何年も過ごしていると 段々と相手に心が許せてきた。
「この人は とても私を大切にしてくれている。 何かあると前に立って守ってくれる。 この人なら 家庭を守ってくれる。 私の産んだ子を愛してくれる。 体裁ばかりの父とは違う」

年齢的に出産を考えると もうそろそろ限界だ。 

「可愛がってくれている義理の両親の為にもこの人の為にも 絶対に男の子を産まなければ・・・」

そんなプレッシャーに押されながらも 無事長男を産んだ。

「男の子一人だけじゃ駄目。 もしこの子に何かあったら義父母に合わせる顔がない」 女の子を希望はしていたものの 跡取りという責務から もう一人男の子を産まなければという思いがあった。 

二人目の出産 男の子であった。 男児二人を授かった。 

勿論、子供が出来たからと妻を邪険にする夫ではなかった。 

それどころか歳を重ねた分 今まで以上に大切にしてくれている。 今は幸せな生活だ。


真紗絵は短大を卒業し すぐにバイト先で知り合っていた男性と20歳で結婚、いわゆるハネムーンベビーですぐに女の子が生まれた。 

その2年後に女の子、二人姉妹だ。 

真紗絵と同じ年頃の友達は皆、楽しそうに遊んでいる。

「どうして私は遊べないのよ。 ずっと子育てなのよ。 みんな華やかな服を着てるのに どうして私は子供に汚された服を着てるのよ」 早くに子供を産んだがゆえに 遊んでいる友達を横目に ストレスではち切れそうになっていた。 

だがその中でも 自分への慰めの言葉があった。

「誰よりも早く子育てが終わるのよ。 そうすれば誰より早く第2の人生が始まるのよ」 ただ、そろそろ子育ても終わりかというときに 離婚をしてしまった。

今は自分の生活を支えるために働かなくてはならない。


志乃は高校を卒業したあとも ずっと同じ所で働き 彼はいるが独身を貫き通している。 
何故独身なのか、相手が結婚の出来る状態にないからだ。 

いわゆる不倫なのだ。



こんな三者三様の生活をしている 彼女達。

秋美・真紗絵・志乃 高校時代の同級生。



当時の彼女たちは

秋美はバトン部のマネージャーをしていた。

真紗絵はテニス部だ。

志乃においては引き抜きでこの高校へ入り 世界大会も夢見た時があった。 本人が夢見たのではない 周りが夢見ていたのだ。 

しかしこれからという 高校3年の春 身体中のあらゆる故障を かばうように練習をしてきた結果 腰を悪くし 何とかシーズンの予選を 突破してきてはいたが 夏休み、本選の大会前日に 一人では全く歩けなくなってしまった。 

この時に選手生命を終わらせてしまったのだ。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

彼女達 第1回

2011年11月12日 02時04分36秒 | 小説
第1作 『僕と僕の母様』 全155回 目次ページ


                                             





彼女達 第1回



全く違う環境で生活しながらも 昔ちょっとしたきっかけで ほんの数ヶ月しか供に過ごさなかったのに 何年たっても心が許しあえるということがあるのだろうか。
ずっと友達でいられるという事があるのだろうか。



秋美は専門学校を卒業し、帯屋へ勤めだした。 

そして そこに出入りする 5歳年上の男性と 付き合うようになったのだが ある日の会社の帰り、男性に家の近くまで送ってもらっていたのを 運悪く父親に見られてしまった。 

父親は即座に勤めを辞めさせ 秋美を家から一歩も出させなくさせた。


それから一年たったころ 兄嫁が上手く秋美の父親を説得してくれ 近所のパン屋で アルバイトを始める事が出来た。 

秋美にしてみれば 一年ぶりの社会生活だ。

アルバイトをしていると 何人かの男性から言い寄られるが もう二度と家に閉じ込められたくない という思いから 誰とも付き合うことはなかった。


秋美が25歳の時、父親の決めた男性と 見合いをさせられ そのまま結婚の運びとなってしまった。

結婚をし、田舎に嫁いだが どうしても父親の選んだ相手を 好きにはなれない。 

毎日を氷のような顔で過ごしている。 相手が何を言おうとも 必要最低限の返事だ。 

そんな相手の子供を そう簡単に産みたくはない。 それに父親に対しての意地がある。 

何も自由にさせてもらえなかったせめてもの反抗。 それは孫の顔を見せないことだった。 誰にも内緒でピルを飲んでいた。 


しかし嫁ぎ先の両親は とても可愛がってくれている。 

それに相手がとても優しいという事は充分 分かっていた。 秋美がこんな態度をとっていても ずっと心を開くのを待っている。 

そして 最初から分かってはいたことだが 秋美の立場からすれば いずれ跡取りの男の子を 産まなくてはならない。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2011年11月05日 22時40分05秒 | エッセイ

第1作 『僕と僕の母様』 目次ページ


                                             





                
 






夜空を見上げて

月明かり

瞬く無数の星


貴方の星はどんな瞬きをしているのかしら

どんな輝きをしているかしら


大空の中に 貴方の星がある

その輝きを 大切に大切に守ってほしい 




全ての 生命の源の星



地球




貴方が此処に居るのは 星があるから

貴方の大切な人が此処に居るのは 星があるから



失ったものなど何も無いの

探し物は貴方の中にあるの

この星にあるの



だって あなたはこの星なのだから

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする